第6話 危機一髪!
どうぞ!
「待ちなさい!」
目の前で右手を振りかざす人影に声をかけるその人影はこちらを向いて右手を下ろした。間に合った……まだ、あの少年は死んでいない。
血を流しながら倒れている彼を見る、すぐに治療しないと危ないかもしれない。悠長に戦っている時間はなさそうだ。
ポケットを探る、使えそうな物は……一つあった!
ポケットをからソーイングセットを取り出し中の針を1つ人影に向かって投げる!
人影は全く動かない、こんな小さな針、投げたところでどうにもならないと思っているのだろう。その通りだ、ただし、それはこれがただの裁縫針だったらの話!
「喰らいなさい! 入魂針 『 縛縫』」
人影のわき腹の辺りに針が刺さる、人影はその痛みに小さくうめく。
だが、それで終わりではない、針に通しておいた糸が人影に巻きついていく、そして両手を体に縛りつけた。
「これでご自慢のナイフは使えないわよ。どうするつもり?」
「ちくしょう! 覚えてやがれ。」
挑発したつもりだったが、意外にも人影は両手を縛りつけられたまま、私に背を向けて逃げ出した。
「待ちなさい! 逃げ切れると思ってるの!」
叫んでも人影は止まらない、すぐに私も追いかけようとした……その時! 再び首飾りの勾玉が光り始める、ただしさっきほど眩しく光っているわけではない、鈍く弱々しい光をはなっている。
「今はこっちが最優先か……仕方ない。」
倒れている少年に駆け寄る、切られた傷は深く、出血もひどい。
とりあえず助けを呼ぼうと携帯を取り出す、まず救急車を呼ぶ事を考えたがこの傷をつけたのは例の道具だ……
「こういう時は菜月さんを呼んだ方が賢明ね。」
電話帳のカ行から彼女の名前を選択する、彼女は何が起こったかもうわかっていたかのように
「すぐにいく、止血して待っていろ。」
とだけ言って電話を切った。勾玉の光は、もう消えていた。
ようやくここからってところまで来たんじゃないかな……