旅の途中 4
しばらくして私は松坂さんに尋ねてみた。
「あの、今日は大丈夫なんですか?外出なんかしちゃって。息子さんの夕食とか」
「ああ、大丈夫、大丈夫。今日は小林さんと食事に行くからって連絡したら、俺も友達と御飯食べるからって。息子も大きくなると、全く手が、かからないのよ」
(旦那さんは大丈夫なんですか?)と聞こうとしたが、何となく躊躇われたのでやめた。
私にとっては意外なことだったが、松坂さんはスピード狂らしい。高速道路のほかの自動車をどんどんと追い越していく。運転には慣れているようで、助手席に座っていても怖くはなかった。
「松坂さんはイルカが好きなんですか?」
車中での話題に困った私は、イルカのぬいぐるみをみて聞いてみた。
「ああ、それ?息子がまだ小学生のときに、水族館に行って買ったのよ。可愛いでしょ。私、イルカ大好きなのよ」と松坂さんは答えた。
「私もですよ!イルカってなんか人間に癒しを与えてくれますよね」と私は少し興奮して答えた。なぜならば、私もイルカが大好きだったからだ。もし、ミニイルカというものが存在するのならば、水槽で飼って調教してみたい。
それから車中でたわいのない会話をしていると、気がつくとディズニーシーの建物と明かりが見えてきた。松坂さんは慣れた手つきで駐車場に入り車を停めた。松坂さんは良くディズニーシーに来ているのだろうか?
我々はナイトチケットで入場した。昼間は暑かっただろうが、夕方も過ぎると、海から心地よい風がながれてきている。
ディズニーシーは平日の夕方だというのにお客さんで賑わっていた。家族連れ、恋人同士、若い女性の二人連れ。それぞれが優しい顔をして、ディズニーシーの街を歩いている。隣に並んでいる松坂さんも優しい顔をしていた。私も自然と優しい顔になっていくような気がした。ディズニーシーには人を幸せにする魔法がかけられているらしい。