38話 やったねもうすぐ40話だ
戦闘ログの解析が終わるまで、しばらく時間がかかった。
四獣王は格納され、
研究室には低い機械音だけが響いている。
中央に、四体のAIが集まって浮いていた。
青龍、白虎、朱雀、玄武。
「……で?」
昇が腕を組む。
「今日の戦い、どうだったんだよ」
「結果は、勝利です」
青龍が即答する。
「戦闘効率は上昇しています」
白虎が続ける。
「各適合者の判断精度も、改善傾向にあります」
「連携も、成立しています」
「……じゃあ、問題ねぇだろ?」
焔が言う。
その言葉を、朱雀が否定した。
「いいえ」
「この戦い方では」
「次の段階に進めません」
空気が、少し重くなる。
⸻
「理由は?」
剣が短く聞いた。
四体のAIは、ほんの一瞬だけ沈黙した。
そして、青龍が結論を告げる。
「四獣王には」
「決定的に、足りないものがあります」
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「出力ではありません」
朱雀。
「防御でもありません」
玄武。
「操縦技術でもありません」
白虎。
三つ続けて否定され、
昇が眉をひそめる。
「……じゃあ、なんだよ」
「役割を越えて、補い合う仕組みです」
青龍の声は、淡々としていた。
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「現在の四獣王は」
白虎が説明を続ける。
「連携はしています」
「ですが、機体は完全に独立しています」
「一機が欠ければ」
「全体の戦力は、大きく低下します」
守が、はっとする。
「……守る役割は、僕だけ」
「火力は、焔さんだけ」
「その通りです」
玄武が答える。
「それが、現在の限界です」
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昇は、しばらく黙っていた。
「……じゃあさ」
「どうすりゃいい?」
その問いに、
四獣AIはすぐには答えなかった。
数秒の沈黙。
そして、青龍が口を開く。
「解決策の仮説は存在します」
全員が、顔を上げる。
「ですが」
白虎が続ける。
「現時点では、実行条件が満たされていません」
「条件?」
剣が問う。
「人間側の判断・感情・行動が」
「完全に同期する必要があります」
朱雀が言った。
守が、息を呑む。
「……そんな事、出来るんですか?」
「再現性は、極めて低いです」
玄武が淡々と答える。
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「ただし」
青龍が続けた。
「条件が揃った瞬間に備え」
「我々は、準備を開始します」
「準備?」
昇が聞き返す。
「機能統合のシミュレーション」
「制御衝突の回避計算」
「失敗時の即時解除処理」
淡々とした説明。
だが、その内容は重かった。
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研究室に、静かな沈黙が落ちる。
「……要するに」
昇が苦笑する。
「今のままじゃ無理だけど」
「ワンチャン、何か起きたら対応できるって事か」
「その認識で問題ありません」
青龍が答える。
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「なら」
昇は、四体のAIを見た。
「次の戦いで」
「その“条件”とやら、揃えてやるよ」
焔が、口元を歪めて笑う。
「面白ぇじゃん」
守は、静かに頷いた。
「……出来ると、信じます」
剣は、短く言う。
「準備を続けろ」
「了解しました」
四体のAIが、同時に答える。
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答えは、まだ形にならない。
だが――
その瞬間に備える準備は、始まった。




