25話 寝る前に後1話だけ
お休みなさい
警報が完全に止まり、施設にいつもの静けさが戻ってきた。
タートルウェアは格納区画に収まり、装甲のロックが外れる。
守はコックピットを降り、深く息を吐いた。
身体は重い。
だが、足元は不思議と安定していた。
「……お疲れ」
声をかけたのは昇だった。
通信越しだった顔を、今はすぐ目の前で見る。
「……ありがとうございました」
守は少しだけ視線を逸らしながら言った。
「正直、あの時は……かなり怖かったです」
「だろうな」
昇はあっさり返す。
「俺、現場にいなかったし」
少し間が空く。
「でも、ちゃんと止めてた」
守は小さく頷いた。
「怖くなくなったわけじゃありません」
正直な言葉だった。
「でも……一歩は、踏み出せました」
「それで十分だろ」
昇は軽く笑う。
「最初から完璧なやつなんて、いないし」
⸻
「助かったぞ」
今度は焔が声をかけた。
「守なら出来るって信じてたけどな」
「……ありがとうございます」
守は少し照れたように答える。
そのやり取りを、剣は少し離れた場所から見ていた。
そして、守が気づいた頃には、すでに目の前に立っていた。
短い沈黙。
剣は守をまっすぐ見て、言う。
「下を向く必要はない」
それだけだった。
だが、守の胸に、静かに響いた。
「……はい」
守は、今度ははっきりと答えた。
⸻
四人が同じ場所に立つ。
誰も派手なことは言わない。
だが、空気は確実に変わっていた。
「次は……」
昇が口を開く。
「全員で、戦いたいな」
焔は肩をすくめる。
「準備は必要だな」
剣は端末を確認しながら言った。
「敵の動きが変わっている」
「こちらを、見ている」
その言葉に、守は前を見る。
少し前まで感じていた恐怖は、まだ残っている。
だが、それだけではない。
(……次も、立てる)
確信とまではいかない。
それでも、逃げる理由はもうなかった。
剣が最後に言う。
「準備を整える」
四人は、それぞれ頷いた。
次は、個別対応では済まない。
だが――
今なら、きっと。




