18話 今までの理不尽にキレる大事な回
16歳まで青空の苗字で生きてきた昇は父の理不尽さを理解してるつもりだった
だけど苗字をノリで変えたのは流石に予想してなくてブチギレてます
会議室の空気は、妙に軽かった。
それが、昇には一番腹立たしかった。
正面の大型モニターには、白衣姿の父が映っている。
いつも通りの無精ひげ、いつも通りの気の抜けた表情。
『とりあえず、全員無事でよかった』
「とりあえず、じゃねぇ」
昇は椅子に座ったまま、低い声で言った。
「話すことが山ほどあるだろ」
『……何からだ?』
その返事で、昇の中の何かが一段階下がった。
「じゃあ順番に行くぞ」
指を一本立てる。
「まず――ドラゴンウェアの武器」
『ああ、あれか』
「“あれか”じゃねぇ」
昇はモニターを睨む。
「剣がある。銃がある。制限がある。
なんで戦いながら知る羽目になるんだよ」
『その方が実戦的だろ』
「教えろよ事前に!!」
机を叩く音が響く。
「次!」
指を二本立てる。
「従兄弟がいること!」
『……ああ』
「全員だよな?」
『まあ、そうなるな』
「“そうなるな”じゃねぇ!!」
焔が小さく息を呑み、
守は背筋を伸ばしたまま固まっている。
剣は、何も言わずに見ていた。
「次!」
昇は三本目の指を立てた。
「俺の苗字!」
『……ああ、それか』
その瞬間。
昇のこめかみに、青筋が浮いた。
「それか、じゃねぇ」
声が、はっきりと低くなる。
「なんでノリで変えた」
『青龍だし、空っぽい方がいいと思って』
「人生の根幹をノリで決めるな!!」
昇は立ち上がった。
「俺、ずっと“青空”として生きてきたんだぞ!
それを、実は神代でした〜、で済むか!!」
『……結果的に問題は――』
「最後!!」
昇は父の言葉を遮った。
四本目の指を、強く突き出す。
「それら全部を、説明しなかったことだ!!」
会議室が静まり返る。
「武器のことも!
戦いのことも!
家族のことも!
苗字のことも!!」
一歩前に出る。
「知ってたんだろ!
俺が戦うって!
俺が適合するって!」
『……ああ』
「じゃあなんで言わなかった」
父は、少しだけ面倒そうに息を吐いた。
『忙しかったし……
説明するの、正直めんどくさかった』
――その瞬間。
昇の中で、何かが切れた。
「……は?」
声が、震えない。
それが逆に怖かった。
「めんどくさい?」
一歩、モニターに近づく。
「俺が命張る話が?」
『そこまで深刻に――』
「深刻だよ!!」
昇は叫んだ。
「俺の人生だぞ!!
覚悟も準備も選択も!!
全部すっ飛ばして前線に放り込んで!!」
拳を握りしめる。
「それを“めんどくさい”で済ますな!!」
焔が、はっきり言った。
「……それは、流石にひどい」
守も、小さく頷く。
「……怒って当然です」
剣が、低く締める。
「完全に、父親側の落ち度だ」
長い沈黙。
モニターの向こうで、父が目を伏せた。
『……すまなかった』
今度は、はっきりと。
『言い訳のしようもない』
昇は、荒く息を吐いた。
「……当たり前だ」
『昇』
父の声が、少しだけ弱くなる。
『お前を軽く扱ったつもりはなかった』
「だったら、ちゃんと向き合え」
昇は言った。
「次に何かあったら、説明しろ。
全部だ」
『……ああ』
短く、確かに。
昇は椅子に座り直した。
「よし」
深く息を吸って、吐く。
「説教終わり」
焔が苦笑する。
「いや、長かったけどね」
守が小さく言う。
「……でも、必要でした」
剣は昇を見て、静かに言った。
「よく言ったな」
昇は肩をすくめた。
「言わなきゃ、ずっとムカついたままだったからな」
モニターの向こうで、父が小さく笑った。
『……次は、ちゃんと説明する』
「当たり前だ」
昇は即答した。
「もう二度と、ノリで決めるなよ」




