二人の戦い(まだ増える)
白虎のタイガーウェアが、低い駆動音を響かせながら昇の隣に並んだ。
白と黒の装甲。
鋭く伸びた爪型ブレード。
ドラゴンウェアとはまったく違う機体なのに、不思議と安心感があった。
「はぁ……助かった……」
昇は操縦席で大きく息を吐く。
正直、一人だったらさっきの戦闘はかなり危なかった。
「マジでありがとう。白虎が来てくれなかったら、普通に詰んでた」
『気にするな。最初から二機で迎撃する想定だった』
通信越しの声は落ち着いている。
冷静で、無駄がない。
昇とは正反対のタイプだ。
「いやいや、想定とか知らんし! 俺はさっきまで月にいたんだぞ!? 説明不足にもほどがあるだろ!」
『……それは、さすがに気の毒だな』
即答だった。
同情のこもった、静かな声。
思わず昇は一瞬だけ言葉に詰まる。
「だろ!? 順番ってもんがあるだろ!」
『いきなり月に飛ばされて、説明もなしではな』
「そうそう! 普通そう思うよな!」
一気にテンションが戻る。
「四獣王だの、機械兵だの、月だの! 順番ってもんがあるだろ!」
『君は特に説明されていないみたいだな』
「“特に”って何だよ! 俺だけ仲間外れかよ!」
通信の向こうで、小さく息を吐く音がした。
『……正直、俺も振り回されている側だ』
「え?」
『だが、君ほどではない』
「そこ張り合わなくていいから!」
思わずツッコミを入れると、剣はわずかに間を置いて続けた。
『俺たちは事前に、ある程度は聞かされていた』
「は?」
昇は固まった。
「ちょっと待て。俺以外は知ってたのか?」
『ああ』
「なんで俺だけ知らないんだよ!」
『……たぶん、君の父親の性格だ』
「……ああ」
一瞬で納得した自分が悔しい。
「うん、それは間違いない。あいつならやる」
重要なことほど言わない。
勝手に決める。
後で問題になる。
今まで何度振り回されたことか。
『だが、君の腕は本物だ』
白虎のパイロットは真っ直ぐに言った。
『即席でここまで戦える人間はそういない』
「いやいや、ほぼ本能だけど!?」
『それでもだ』
淡々とした声だが、そこに嘘はなかった。
『これから共に戦うことになる。改めて名乗る』
一拍置いて、彼は言った。
『剣だ』
短く、力のある名前だった。
「剣……」
昇はその名を口の中で転がす。
不思議と、しっくりくる。
「俺は青空昇! よろしくな、剣!」
『ああ。よろしく、昇』
二機の巨体が、並んで施設上空を見据える。
戦いはまだ続く。
だが今、確かに“相棒”ができた。
青龍と白虎。
二人の戦いは、ここから本格的に始まる。




