第12話 白虎はタイガーウェアと呼びます
作られた時はタイガーウェアと呼ばれてたけど恥ずかしくなって四獣の呼び方になった
昇の父さんは全然恥ずかしくないので普通にタイガーウェアって言う
青龍は、完全に沈黙していた。
操縦桿をどれだけ動かしても、反応はない。
モニターには無情な数字だけが残っている。
《エネルギー残量 8%》
「……はは」
青空昇は、乾いた笑いを漏らした。
「マジで詰んでんじゃん、俺」
正面には、再び迫ってくる機械兵の部隊。
動けない。
逃げられない。
撃てない。
四獣王どころか、ただの巨大な的だった。
「ちょ、待て待て待て!」
通信を開く。
「親父! 今ほんとにヤバいんだけど!」
『……』
返事はない。
「くそっ……!」
機械兵が一斉に武器を構える。
照準が、青龍に集中する。
「最悪のタイミングで沈黙すんなよ……!」
その瞬間だった。
――戦場の反対側。
白虎施設上空に、複数の転移反応が発生する。
管制室が騒然となった。
「白虎施設に敵影!?」
「機械兵部隊、急降下中!」
次の瞬間、施設周辺に爆発が走った。
迎撃部隊が間に合わない。
白虎格納庫に、警報が鳴り響く。
そして。
ゆっくりと、巨大なシャッターが開いた。
白い機体が姿を現す。
鋭く洗練された獣のようなフォルム。
四獣王が一角――白虎。
操縦席で、青年が静かに息を吐いた。
「……来たか」
次の瞬間。
白虎は地面を蹴った。
常識外れの加速。
一瞬で機械兵との距離を詰める。
白い閃光が走り、機械兵の胴体が引き裂かれた。
続けざまに二機、三機。
まるで狩りだ。
白虎は圧倒的な速度と精度で、機械兵部隊を蹂躙していく。
数分後。
白虎施設周辺の敵影は、完全に消滅していた。
操縦席の青年が、レーダーを確認する。
「……青龍の反応が弱い?」
別方向に、異常な静止反応。
通信を拾う。
『エネルギー切れで停止中……』
青年は小さく舌打ちした。
「やっぱりな」
白虎は進路を変える。
次の目的地は――青龍の座標。
⸻
再び、昇の視点。
機械兵が、ゆっくりと距離を詰めてくる。
青龍は動かない。
モニターの数字は残酷だった。
《エネルギー残量 7%》
「……ちくしょう」
歯を食いしばる。
「ここまで来て、終わりとか冗談だろ……!」
機械兵の武器が発光する。
発射直前。
――空が裂けた。
轟音とともに、白い影が戦場に降り立つ。
衝撃波が走る。
次の瞬間。
青龍の目前にいた機械兵が、白い閃光とともに胴体を引き裂かれた。
「……は?」
昇は目を見開いた。
青龍の前に立っていたのは、見たことのない白い四獣王。
その機体から、通信が入る。
『……大丈夫か、青龍』
落ち着いた、若い男の声。
昇は混乱したまま叫んだ。
「だ、大丈夫なわけねぇだろ!」
「誰だよあんた!」
一拍の沈黙。
そして、その声は静かに告げた。
『初めて話すな、昇』
「……は?」
『俺は白虎の適合者だ』
昇の頭が追いつかない。
「白虎……?」
さらに続く。
『……お前の、従兄弟だ』
「…………は?」
操縦席で、昇は完全に固まった。
「ちょっと待て」
「いとこ?」
「今その情報、必要なやつ!?」
白虎は機械兵の群れを見据えたまま、淡々と言う。
『話は後だ』
『今は、生き残るぞ』
白い機体が、静かに構えを取る。
青龍の前に立つその背中は、やけに頼もしく見えた。
だが昇の頭の中は、それどころではなかった。
「……親父」
「マジで、何隠してんだよ……」
こうして、四獣王は初めて並び立った。
だが昇だけが、何も知らされていなかった。




