11話 勝ったと思ったら、もう動かないんだが
さっきまで地獄みたいだった施設周辺が、急に静かになった。
爆音も、金属音も、すべてが嘘みたいに消えている。
四獣王施設の前で、青龍はその場に立ち尽くしていた。
青空昇は、操縦席でしばらく呆然としていた。
「……あれ?」
周囲を見回す。
迫ってきていた機械兵の姿は、どこにもない。
「……勝った?」
数秒後。
「勝ったぁぁぁぁ!!」
昇は操縦席でガッツポーズを決めた。
「見たか親父! ドラゴンビーム最強だろ!!」
すぐに通信を開く。
「なあなあ、今の見た!? 施設丸ごと救ったぞ!」
『……』
返事がない。
「おーい?」
嫌な予感がして、操縦桿を軽く動かす。
――動かない。
「……あれ?」
もう一度、強く操作する。
それでも青龍は微動だにしなかった。
「……ちょっと待て」
モニターに赤い警告が次々と表示される。
《警告:エネルギー残量 8%》
《各部出力 低下》
《推進系 停止》
「……は?」
昇は瞬きをした。
「なにこれ」
もう一度通信を開く。
『昇、聞こえるか?』
「親父! なんか動かないんだけど!」
数秒の沈黙の後、父の声が返ってきた。
『当然だ』
「は?」
『高出力粒子砲は、青龍の全エネルギーを前提に設計されている』
「……は?」
嫌な予感しかしない。
『今のお前の機体は、ほぼ電池切れだ』
「ちょっと待てぇぇぇ!!」
昇は叫んだ。
「それ最初に言うやつだろ!!」
『言おうとした』
「言ってねぇ!!」
『お前が遮った』
「遮ってねぇ!!」
昇は頭を抱えた。
「じゃあ今の俺、どうなってんだよ!」
『簡単に言えば』
父は淡々と言う。
『巨大な鉄の置物だ』
「最悪じゃねぇか!!」
敵地のど真ん中で、完全停止。
状況は絶望的だった。
その時、レーダーが再び反応を示す。
《敵影 接近中》
施設の外縁部に、新たな機械兵部隊が映し出された。
「……は?」
昇の顔から血の気が引く。
「ちょ、ちょっと待て」
動かない青龍。
迫ってくる敵。
エネルギー残量 8%。
「俺、今めちゃくちゃピンチじゃね?」
四獣王施設の前で、青龍は完全に無防備な置物と化していた。




