第二章:競合との衝突 6
旅館の新しいサービスの準備が整い始めた中、静は一つのアイデアをさらに深く掘り下げようとしていた。
「手の温もりで心の疲れも癒すことができるなら、それが私たちにしかできない特別なことになるかもしれないわ。」
静はそう心の中で決意し、新しいマッサージサービスをスタートさせる準備を始めた。
静は、旅館の一角にマッサージ用のスペースを設けることに決めた。そこは小さな部屋で、温かい雰囲気の照明と静かな音楽が流れるリラックスした空間に整えられていた。畳の上には柔らかな布団が敷かれ、隅にはアロマキャンドルがほのかな香りを漂わせている。
「これなら、きっとお客様も安心してリラックスできるわ。」
静は部屋の準備を整え、試しに自分自身がその布団に横になってみた。心地よい音楽と温かい照明に包まれ、自分自身もリラックスしてしまうほどの空間だった。
スタッフたちの体験が好評だったことを受け、静はついにお客様へのマッサージサービスを開始することにした。最初のお客様は、旅の疲れを癒すために月影館を訪れた中年の男性だった。彼は商人で、長旅の後に月影館に泊まることを楽しみにしていたという。
「旅の疲れが少しでも和らぐように、私が心を込めてマッサージいたしますね。」
静はそう言いながら男性をリラックスさせるよう優しく話しかけた。彼は最初は少し緊張していたが、静の手が体に触れると、その緊張はすぐにほぐれていった。
「これは……ただのマッサージではないですね。心が軽くなるようです。」
彼は驚いた表情を浮かべながら、静のマッサージの効果を感じていた。長旅の疲れが癒されるだけでなく、心に溜まっていたストレスまでもが解消されていくようだった。
「ありがとうございます。これでまた元気に旅を続けることができます。」
男性は感謝の言葉を述べ、静に深く頭を下げた。静もまた、彼の疲れが少しでも癒されたことに満足感を覚えた。
静のマッサージサービスは次第に評判を呼び、旅館に泊まるお客様の間で「静のマッサージは特別だ」という噂が広がり始めた。旅館の豪華さには欠けるかもしれないが、ここに来れば本当に心から癒される――そんな評価が少しずつ定着し始めたのだ。
静はその評判を耳にし、次第に自信を持ち始めた。「私たちは、私たちにしかできないことをやっていく。それが、この月影館の強みなんだわ。」
リリィやグリゴル、エリオットも、静の新しいマッサージサービスに対するお客様の反応を聞き、自分たちの役割にも新たな誇りを感じていた。
「やっぱり静さんの手には、特別な力があるんだね。」
リリィが嬉しそうに静に言うと、静は微笑んで「そうね。でも、この旅館を作り上げているのはみんなの力よ」と返した。




