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第一章:旅館修復の始まり 7

館内の修繕で最初に取り掛かるのは、老朽化した廊下だ。長年の風雨によって木製の床板は腐り、一歩踏み出すたびにギシギシと音が鳴る。安全確保のため、床板を全面的に張り替える必要があった。


「ここまで傷んでいるとはな。床が抜ける前で良かったぜ。」

グリゴルがため息交じりに古い板を剥がし始めた。


「せっかくだから、新しい木材は見た目も大事にしたいわね。」

静は新しい木材を指で触れながら、色味や質感を慎重に吟味した。


「この木なら、足触りも滑らかだし、温かみがあるわ。」

静の言葉に、エリオットがメモを取りながら同意する。


「古き良き雰囲気を残しつつ、耐久性のある素材を使う……いい選択ですね。」


張り替え作業はグリゴルが力仕事を担当し、リリィが手伝いながら古い木くずを掃き集めた。


「リリィ、そっちの板はまだ使えるか確認して!」

静が指示を飛ばすと、リリィが元気よく返事をした。


「了解!全部キレイにするからね!」

彼女が一生懸命掃除する姿に、皆は自然と笑顔を浮かべた。


廊下全体が新しい板で整えられたとき、その美しさは圧巻だった。木目が美しく揃い、温かみのある空間が広がる。


次は、客室の修復だ。畳が変色し、古い家具はほこりをかぶっていたが、部屋全体にはまだ和の趣が漂っていた。


「この部屋、風情があっていいな。」

グリゴルが周囲を見回しながら言う。


「古さを残しつつ、居心地の良さを追求しましょう。」

静は新しい畳を選び、縁取りの模様も伝統を尊重したデザインを選んだ。


エリオットが壁の塗り替えプランを確認しながら、「お客様がくつろげる空間にしましょう」と提案する。


リリィは新しい布団を抱え、ふかふかの感触を楽しんでいた。「わーい、これ、気持ちいい!」


「おい、リリィ!遊ぶんじゃない!」

グリゴルが慌てて止めに入り、皆は笑い声を上げた。


天井の一部は雨漏りの跡が残っており、壁の漆喰も剥がれていた。静は地元の職人に依頼し、丁寧な修復を進めた。


「この模様、昔の職人技が光っているわね。」

静は漆喰の残りを指でなぞり、名残の美しさを感じ取った。


職人たちはその模様を再現するために、手間を惜しまず丁寧に塗り直していった。修復が完了すると、部屋全体に優雅な雰囲気が戻った。


「この天井も、また誇れるものになるわ。」

静は満足そうに言った。


修復の最後には、新しい家具の導入が待っていた。静は伝統的な雰囲気を保ちながら、使いやすい家具を選ぶことにこだわった。


「ここには低いテーブルを置いて、ゆっくりお茶を飲んでもらいたいわ。」

静の言葉に、エリオットが頷きながら家具の配置を手伝った。


リリィは新しい布団に埋もれながら、「ふかふかだね!」と楽しそうに笑った。


「お前、ベッドじゃなくて布団が気に入ったのか?」

グリゴルが不思議そうに尋ねると、リリィは元気に「うん!」と答えた。


作業が順調に進んでいた矢先、突然の停電が発生した。館内は真っ暗になり、全員が戸惑った。


「何が起きた?」

グリゴルが声を上げる。


「どうやら、配線が古くて過負荷がかかったようです。」

エリオットが懐中電灯を使いながら調査する。


「配線まで交換が必要だったなんて……でも、ここで諦めるわけにはいかないわ。」

静は落ち着いて状況を整理し、急いで電気業者に連絡を取った。


停電が解決し、作業が再開されると、静たちはお互いに感謝の気持ちを伝え合った。


「ありがとう、みんなのおかげでここまで来れたわ。」

静は皆を見渡し、感謝の言葉を口にした。


「大丈夫さ、俺たちならこの旅館を蘇らせられる。」

グリゴルが笑顔で言い、リリィも「うん、絶対に!」と元気よく叫んだ。


すべての修復作業が完了し、館内が新しい命を吹き込まれたように輝いていた。静はその光景を見つめながら、次なる挑戦への意欲を燃やした。


「これからが本当の始まりね。」

静は心の中で誓いを立てた。

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