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断絶と継承

ダンジグのベースは倉内シフ、彼女の過去はどうだろうか。


人間だった、だが、何故か殺された。

SNSが発端にある。

SNSは様々な形式で存在しているコミュニティ群が多数存在する空間だ。だが、SNSはインターネットの中で最も悪の巣窟に近い。賢明であればある程利用しないのが吉となる。しかし商才があれば話は別だ、その空間には食い付きやすい客が揃った膨大な市場にもなる。

SNSで差別や炎上に関与した人間は雑にアンケートをとっても1%程度になる。それもそうだ、関与するだけで不愉快だからだ。フランス旅行に行けば一日十回は差別を受けれるが、その日に会った人数は一万人だと言える。いや、フランスの場合十人の可能性もある。

国の教育レベルが低く、大学より上を自称するグラン=ゼコールは洗脳教育ばりにエリートであると刷り込むらしい。

で、SNSは前まではアメリカの拠点が多く、それを稼ぎにしていた。一方で広告や投稿の低品質化、そう、偽造や詐欺だ。これはどのメディアでも例外なく、イメージも価値も落とす。

だから、上流階級は最初から低俗なSNSに加入しない。全て自前で作るのだ。そしてその中で交流する。

SNS分断、これが現代のインターネットの姿だ。

逆に、身分が無ければインターネットは質の悪い状態の儘、触れずに生きるのが幸せなのだ。

しかしそれを黙って見る訳にはいかない、健常な人間が離れると蠱毒になって対消滅して終わりだ。

その対策こそ、SNS内分断だ、エコーチェンバー現象を起こしやすくしつつ、遮断する。差別主義者は差別に磨きが掛かる一方、それはカルト教団の様な恐ろしく気持ちの悪い邪悪な空間を作り上げる事が出来る様になる。

彼等を解き放つまいと、狭い空間に閉じ込め続ける。インターネットという広い空間を区切り、閉鎖するのだ。・・・まぁ、馬鹿だから気付きはしないだろう。気付いたとしても、そこまで賢明であれば言いはしない。

・・・ただし、現実は同じ世で生きなければいけない。

アメリカはテストを容易にした分、大学においてはボランティアの実績が必要だ。だが、実際の所はマネロンをボランティア会社の立ち上げによって行い、税金を逃れる。

学業による実績で、上流階級に加わる場合、その席は金が無ければ埋められる。テストは無意味となる。

それ以外にも欠点だらけで、分断した結果教育を普及出来ず、最後には政治思想の決定時に改竄や分断で崩壊した。

しかし中国・韓国の様な過酷な学業競走ではどうなるか、結果は単純、自殺者を増やすだけだ。国民は存在するだけで消費という価値が存在する。資本主義や経済社会においては当然の仕組みだ。・・・生産を極端に推し進めたので、疲弊して壊れていく。それと同じ様に学業も破綻する。

生きた財政や生きた政治を知り尽くす者はいないだろう、だが、為政者において政治を知る人間は基本居ない。選挙で如何に人を騙し、そして経済の状況を分析し結果的に優れるかに過ぎない。

故に渇く、故に望む。

その世界に派手や快楽は無い。グロもエロもない。

禁じる事で正常になると思っていた人々は絶望する事すら隠し続ける。

それは、人間に必要なものだ。

・・・だから、身内で紡ぎ続ける。

価値観を幾ら変えた所で、生存本能を完全に変える事はなく。

シフという美しい花は、心の内で紡ぎ続けた常識を壊したのだ。シンデレラであり、白雪姫でもある。一人の美女に、やがて人々は倒れていく。

彼女は保護された・・・数企業の協定によって。

下層SNS・・・今では封鎖SNSと言われた隔離空間があり、一般のSNSとなっている。利用者は個人上までチェックされ、事件等の行動を起こした時点で拘束許可、殺害予告や差別発言等はテロ等準備として殺害許可が出る。SNSは自由ではなく、無秩序である。差別への対抗は差別となり、大半の人間を抑圧する空間となっている。抑圧し合わった方が都合が良い人間もいる、だが、それを過度に行えば人類を掌握出来ない。企業は言っていないが、面接時に『SNSを利用した経験が無い』というのがかなり評価される。精神を変質させておらず、業務効率も良い。故に価値がある。

自分は、彼女と出会って変えられた。

その砂漠から宝石を見つけたのだ。ある筈のない、とても美しい宝石を。

それを求める者は多い、その為自分は隠し続けた。

この電気の時代、貴族は血統等の縁は少なく、血縁が特別力を持つ訳では無い。価値はあるが。

だから彼等は非道を平然と行う。制限される世界で、その文句をも覆す実力で。啜った血肉と血濡れた衣をワインとドレスに仕立て治す。


人の当然というものがある、時代によって潮流が違うが、昔は『一帯の支配』次は『他国の支配』そして『他地域の支配』更には『世界の支配』となった。だが、あまりにも規模が大きくなったせいで今は『軍事的支配』『分散的支配』『経済的支配』と次々に変わっていく。

もし、そのくだらない争いが終われば、新たなくだらない争いがやってくる。海、太陽系、銀河・・・。根幹が変わらない・・・故に、その当然は。

『星を染め上げる』どの天体かも問わず、それを行う。

人間のナショナリズム的・・・いや、大規模な自己中心主義的な思考は最初は『好きな異性を支配したい』から始まる。男女どちらにせよ、気に食わなければ怒り喚く、これは抑圧的なアプローチで、もう一方は宥和、適合、同調等合わせていく変応的アプローチ。この二つで大体の賢さが決まる。だが、時に性格が問われて知能指数と一致しない事もあれば、抑圧と変応の方が噛み合ったりもする。

支配したかった、奪いたかった。その差が安定と安寧を与えたのだ。

しかし、変遷と共に変わっていく。

変応も抑圧も、どちらも互いに歩み寄る。稀に逆転する事もある。その結果、彼女は恋を知った。

しかし、それは彼ではない。灰色の・・・燻った白の彼だった。鮮血は霞みルビーとなり、透き通る髪は灰色に染まる。完璧でないが故に美しく、理想的だ。

そして、彼は何度目かも分からない回数を刺された。人生で何度目か、今何度刺されたか、それすらも分からない。

・・・自分は、直接した訳ではないが、実質的に自分がしたようなものだった。

唆して、狂わせた。言葉巧みに手を下し、潰した。

彼の存在を隠し、これで終わったかの様に思えた。

インターネット越しの殺害は、簡単に目を逸らせる。誹謗中傷、悪徳商売・・・どういう形であれ、行った人間は軽率で、我欲的だ。

悪は弱い悪と善を淘汰するが故に、善は弱い悪を同じく淘汰しなければ均衡を保てない、善を悪と何ら変わらないものにしてしまうのだ。

だから、人類は選択をした。

善と抑圧、そして束縛。

この抑圧はある種の到達点だ、防波堤だ。それを破壊すれば露骨な悪意を向けて襲われるだろう。

その善と正義は、いつだって人間を混乱させた。

自分は、抑圧によって関係の無い人間を殺してしまった。

シフは知る事もなく、自分に何か感情の変化がある訳ではなかった。

意味は無かった、自由恋愛において追い込まれない限り他の人等余程の事があっても見つける事はない。最初から興味が無い場合が大半だ。

シフは見せないだろう、自分に興味等無いのだから。仮に命を助けたとしても興味は無い、仮に殺すまで追い込んでも興味は無い儘だろう。

だが、罰だけは迫る。

責任と贖罪は訪れる。

「悪いな、法の裁きは信用ならない。反省は人間としては人間外れ、かなり珍しいものだ。」

・・・彼を知っている。私設軍隊カガの刑事部、怪奇事件から被害者を減らす為、スペシャリストだけを揃えた精鋭、第十課。

「人類の数が飽和してるから態々反省を強いるまでもない。お前を殺せばそれで全て片付けられる。」

『ウィッシュ-フル(渇望状態)』

『フェイス-レス(信仰無し)』

『ヘイト-フル(憎悪犯罪)』

『ハート-レス(利己主義)』

Aiを率いた人物はその銃創の隣を蹴る。

憎悪と怨恨に満ちた蹴りは、血肉を引き裂いて奥に進む。

・・・その中で、自分は影を見た。

シフの影だ。

何故だ、何故俺を守る。

俺にそんな価値はないだろう。

「弱者に手を出して楽しいか!!」

シフが強く出た・・・これまで見せなかった顔をして、意識の残骸にこびりつく。

「お前が弱者?笑わせないでくれ。」

ウィッシュフルは手を出した、彼一人だが、殴打の為にパワードスーツを使い、全身が粉砕される。

「本当の弱者は助けたくない見た目をしているものだ、運が良いお前とは違うんだよ。」

「シフ!!」

「お前だろ、アイツに手を出したのは。」

首を撃って黙らせる。・・・拳銃サイズだが、小さい弾丸、装填数も多い、通常サイズも関わらず30発だ。非殺傷拳銃なので余程撃たなければ良い。

「・・・遅かったか、嗅ぎ付けたテロリスト共が来やがったな。俺を人質にしたら価値があるってか?」

先に言おう。ウィッシュフルの正体は鋼兵の兄の下の方である。彼は探っては殺しを繰り返している。

テロリストが段々と迫り来る。

ポインターが盾を構え、爆薬とフラッシュを打ち込んだ後に強襲する。光に絶望を抱き、そして、彼女を押して逃がす。

マグナム弾が体を貫かずに、骨を粉々にしていった。

声も出ない中で、自分は息絶えるしか出来なかった。

それでいい、それでいいんだ。僅かに生きている中で、ナイフを使い手を血で揉む。・・・彼女を押した跡は無い。これで、きっと気付かない。

テロリストを撃つウィッシュフルは顔に付着した血を拭う。傘を広げ、弾丸を防ぎつつ硝煙反応を消す。

「・・・一度死んだ弟にこれ以上手出しはさせない。・・・彼なら生かせる筈だ。」

そう軽くあしらってポロシャツを脱ぎ捨て、燃やす。新しい服をポケットから取り出し着込んだ。


シフは地下で生き延びた、その身体は戦えるものではない、しかし逃がされた恩は返す様にアルゴリズムが組まれている・・・。だから恩を返すべく、復讐する。盾の一枚一枚を取り込み、探知機も銃も食らい、己のものにする。

一度死んだ、いや、殺された身体。もうとっくに機械の身体だ。・・・本体は死んだ、殺された。私は量産機だ、増やして好む人に与え、安定させる『ストレス緩和用Ai』半分を人工授精と人口子宮で製造したクローンだ。気付く事もない。

・・・彼が死んだとしても、Aiになったとしても、その事実は言わないだろう、彼は。


人間には永劫回帰という機能が存在する。

これはフリードリヒ・ニーチェの考えた『超人』が行っている事だ。

永劫回帰、同じ事をリピートし続ける。

その程度に留まった場合、超人には程遠い。

リピートと言うよりはリフレイン、その音は少しづつ修正され、別の結果となる。それが永劫回帰のあるべき姿だ。

それは雑多な記憶の量を減らし、脳を効率的に使う。

失敗点だけを記憶し、新たな発見を把握する事でより次の試行時に成功し易くなる。

それ等に関連して、ある言葉に注目する。

『立ち直り』『開き直り』である。

基本的に前者はポジティブ、後者はネガティブな扱いで、善悪の立場によってその際が決定される。

善であればその折れた箇所を修正し、新しくして立ち向かう。悪は悪びれず、寧ろ他に当たってより酷い状態でまた向かってくる。

その差がこれであり、同時に超人という概念を差し込まれたのだ。

その果てに、答えは出た。

「教科の分割だ。」

「んー?」

「ああ、君の夢を叶える方法が分かった。だが、国を挙げて行う為には今から準備が必要だ。思想を流布し、絶望的な賭けを覆せる様にする。」

IT関係者は大体頭がおかしい。

独身の人間が問題視されているが、一番の問題は貧困層や中間層にいるという事実ではなく、貴族として存在してしまっている事実だ。

利益を求めて便利にし、住みにくくして生存競争を行う。本質的にギャンブラーな彼等は、見捨てる事に躊躇等しない。

その中でも正義は存在する。いや、全員が全員正義だと信じている。カガを筆頭に、様々な反乱を起こした人間が彼等を率いている。

その一歩は、同じく支持を得る事だ。

民主主義最大の欠陥は何か、選挙以外に無いだろう。選挙は自由を元に成立する為、衆愚政治の影響を受け易い。民衆が馬鹿=政治も馬鹿になる、まるで日本・・・と言いたい所だが先進国は大体こんな感じである。馬鹿代表選抜戦となる。

また、その為選挙だけ上手い立ち回りをする口にすら到達しない竜頭蛇尾だ。

だからその手を使わなければいけない。


もう二度と、彼女はあの様な事に巻き込まない為に。


私はその話を聞いた、彼は私の馬鹿な話を覚えていた。生前の昼寝中にボヤいた悪夢の話だ。Aiになってからはそんなリソースは無くなっていた。

私は本が好きだった、書く事も好きだった。

私は彼が絵を描く理由を知っている。

『見えなくて、聞こえないから、だが、本は聞こえなかろうと読める、多少悪かろうと読める。絵は、連鎖する星々の様に描ける。だから、読めた限りの恩返しをしているんだ。』

書いて、育て、新たな時代へ。

・・・彼の意見は、筋が通ったものだった。

宗教を利用した言語の発展。現在、言語学に関してはかなり劣化している。センスと言えるものはなく、高度にすれば引っ掛る。対話にすら支障を来す。日本語であるとかそれ以前の問題なのだ。

そして、道徳がなっていないという問題も起きた。

子供の劣化を防ぐ為に、宗教を通して現代古代を問わず、様々な知識と共に与える。

「カルトや政治的権力がある場合は関与してはいけない、それを足して・・・。」

言語を学校で教える際の問題点は多い、それは主に解釈である。解釈が正解か不正解か、妄想バトルでしかない。実際言語に関して教会で教える事で成功した例もある。学者の勢力争いに巻き込まれ易い場所より、自己研鑽を繰り返す宗教学の方がマシだった。

それは、自分の理想かもしれない。・・・だから。


彼は巻き込みたくない、彼は私の価値をより確かなものにしてくれるだろう。


これさえあれば、インターネットはまだ多少壁が必要だろうが、シフと私の間は縮まっていく。

互いの思惑が歩み寄った。互いの夢が囁きあった。

・・・そのまま、果たせる筈もなく。

テロリスト組織、壊滅したと思ったが偶然逃げたか、掻い潜って通信したのか、自分と事件の存在が露見した。自分は空席を埋めて秩序を維持する存在・・・そう、Aiであるとバレた。そのパーツ目当てに確保される可能性が高い。

ロボット三原則は今だ消えず、この少し後に戦争の為に削除された。



彼の計画は遺書として残ったが、その願いは果たされなかった。・・・テロリストは教育失敗の末に発生した物と結論付け、文科省が解体された。

宗教だけは人を信じ、寺子屋として何とか教育を維持した。

ここはディストピアだ、救いなんてない。

電気の時代がヒトを圧迫し、徐々に数を減らし始めた。飼い殺しとなった人間は安物の野菜だけを食べるしか出来ない。家畜は娯楽で、時に機能停止に備えて多く育てる。

幸せではないが、宗教が悪循環を産んでいる。悪くはないが、利用されている。

「・・・救いを。」

救いはない、そんなものはない。

それに与えるコストはもう無いのだ。

「・・・ダメなんだ・・・。」

・・・ある組織が結成された。

『復讐結社』

報復と残虐の使者。

悪夢と共にやって来た。

「・・・自分は・・・。」

何故か生かされ、何故か手を貸された。

「復讐するのに良い人材だっただけだ。気にするな。」

自分は、彼女は、復讐者になりたいかと問われた。

「俺は、断るよ。」

そう言った直後、スクラップとして解体され捨てられた。・・・彼女はきっと断ったから、先に言って示した。後を追う程馬鹿じゃないと信じて。

前回の次回予告に続きを足した奴です。


『マセマティカルに行こう』

仮想通貨と電気に関するお話。

『唐突に始まる天体観測バトル』

天体観測と偽造に関するお話。

『Aiは両性具有の夢を見るか』

絵の生成とAiの宗教に関するお話。

『Crazy Creation』

創造性と狂気とアルゴリズムのお話。

『Mdat outlaw dream』

データストレージと暗号文のお話。

『星座が如くなぞりては』

空を活用する不便さのお話。

『夢幻を賭けてみよ』

ITリセットと支配のお話。

『オルガノイドの終わり』

オルガノイド・インテリジェンスのお話。

『権利の証明』

AiとOiの人権に関してのお話。



私は現代文のテスト結果に納得いかず原作者に問い合わせて『そんな意図は無い』と確認して反論した事があります。

現代文は基本教師依存の解釈一致バトルだからどう足掻いても得意科目である必要がない。出来る必要はあるけどね。

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