GIWTWM
・・・いや、殺さない。
メッセージは受け取った。
殺すか殺さないかの選択は不殺、無茶な話だ。
だが、その場合問題がある。
電力不足だ、発電機が自動停止、蓄電池に切り替わっている。そいつを奪ってこれれば良いが・・・自分が行けば流れ弾で壊される。
電力をリクエストし、残りは託す。・・・十分、無傷で済ませたいなら十分だ。
「頼んだ、鋼平。」
それを受け取り、持久戦の動向を変える。
鋼平も動き始めた。そして奪ったアーマーを調べ終えた。
「・・・電磁アーマーの解析が終わったか。」
何故探ったかについてだが、少し気になる機能があった。
「・・・擬似心停止、これだ。」
対拷問用のアレと同じ、アーマーを誤作動させる事でこの状態に出来る。
「水冷式なのかこれ・・・。」
チューブが見える、隠密用ではないからうるさくても問題無いのだろう。
しかし、これをするにもするべきは電力の回収。そこでダンジグからの通知が入った。
電力供給の箇所は複数あるが、最短かつ最大の場所がすぐそこにある。
無線ノードを設置、ネットワーク拡大用アンテナを設置して完了。緊急システムを切り、電力供給を再開する。
「パスとIDを設定、後は接続完了するかどうかだ。」
と言っても、問題がない訳ではない、ワイヤレス等は電磁誘導による給電を行っている。(大体電磁誘導使わない方が珍しいが)
無線ノードはネットワークに接続し給電を許可する・・・つまり地底の電線から電力を引いてくる道具だ。
セキュリティ対策を行う、仮の道具だから今は使えているが、どこかしらで弾かれる・・・ワームを投入し、自律的に反発する様にする。
「・・・セキュリティ、そこまで組んでないのか。」
杜撰な体制だ、ランサムウェア対策はアメリカの会社で、同じ会社が契約している所はランサムウェア被害にあっている。
「マルウェアで入れ替え、解凍してインストーラーを開きーのファイルを入れ替えと。」
普段こういう作業はしないので一個一個読み上げて確認する。ちなみにこれはパソコンを壊した人の言う『何もしてない』の範囲である。赤ん坊に蜂蜜を食わせ、幼児に熱湯を掛け、老人に蒟蒻畑か塩分過剰な味噌汁を飲ませるが如き所業である。悪を悪とも思っていない邪悪なのだ。
これでコントロール権限が端末に移行した、回路の限度を強制的に外し、向こうの攻撃に合わせ上げ切る。
「・・・ダンジグ!」
『コマンドプロンプト接続完了!後は任せた!!』
電力維持の為の冷却、自動化するにも火災により温度が上手く維持出来ない。
・・・少し、温度を確認したが、一箇所異常な場所があった。
「ダンジグ、気配があるよな。」
『ああ、多分第三勢力だろうが・・・コッチ狙いだな、違いねぇ。』
温度が上がり続けている、3600℃オーバー、炎の表層温度とは到底思えない。それ即ち敵性反応。しかし通った後は急激に温度が落ちている。
「メルトスルーだ、ヤバい、核分裂炉が異変を起こしているのか?」
・・・それだったとしたら、移動が一方向なのは何故だ?
「・・・リークスペディアの軍部汚職に関して検索、奇妙な金の動きから割り出す。」
『ん、それ位なら問題無い。』
「予想は出来る、上手く描ける。」
・・・その敵は、恐らく・・・。
「『移動式核分裂炉。』」
「・・・戦車にされてない分マシだが、突撃されただけでもう跡形も残んねぇよ。」
『どうします?小回り効かないならもう一斉攻撃で合わせて逃げますけど。』
「・・・。」
さて、これが本命だろうか。こういう妨害を仕掛けたという事は・・・本命がいる。
「反対側だ、正反対から迫る脅威に備えろ。」
それであれば迅速に処理する。死の危険性があるが・・・彼に話せば許してくれると信じて。
給電速度を一気に上げ、電力関係オールクリア、装填を始める。
「・・・給電完了、確かに受け取った。」
『致死可能性攻撃及び、致死攻撃封印を解除。』
「『電磁性脳震盪』並列完了。」
『発動権限完全委任、全てお前の手でやれ。』
「標準、設定完了。・・・倫理規定、停止。」
見えぬ敵が相手だろうと、生体反応があれば即ち必中。・・・弱点としては金属に誘導されてしまう事だ。それの対策して上から行う・・・同じ身長の人が金属の有無で変わるかと言われると・・・微妙である。55:45位の割合である。身長が高い方に優先され、雷において最も有効なのは木等の高い物がある場所だ。だから避雷針も極論高ければ良い、仮設置位なら金属以外でも問題は無い。・・・だから、この荒野では人間に当たる。弱点は無くなった。
「・・・無駄に削り切って、しゃがんで蹲り・・・。」
人間なんて、そんなものか。
その半端な図体があって、図々しくて、ウザったらしい。吐き気がする。
劈く光は、頭上の機械から出てくる。ドローンは一発キリで終わった。黒焦げになって息絶える。
「倫理規定、復旧。似合わねぇぞ。」
「・・・はっ!・・・。」
「悪いな、遅れた。」
「・・・ちょっと自分にも当たるんで再起動してました・・・頭が・・・。」
「頭は元からおかしいぞ。」
「何をぉ!」
さて、今から来る強敵が本命だ。満身創痍、こっちは失血率5%で現在の心拍数は180・・・そして体重減少5kg、向こうは損傷率10%、どっちもそろそろ致命傷になる。
その名は・・・。
「戦闘用Ai:アデン。」
アラビア半島南、紅海とアラビア海の中心にその都市はある。イブン・バットゥータの航路にも当然、存在した。
勝利は電力量で決まる、スペックは自分の方が少し上。ライオットシールドで様子見する、しかし避けなければ撃ち抜かれる。武器が全く予想出来ない。
どれで戦うか、どれで撃ち抜くか。
「こんにちは、私は戦闘用Ai:アデンです!」
「こんちゃ!私前略ハイトオブファッションなダンジグです!」
「もしかして資源回収ユニットやっていらっしゃる?」
「命令によって、貴方達を殺しに来ました!」
「やっぱ資源回収ユニットだよアレ。」
「・・・スピーカーの際に起動した音楽ツールからソフトをインストールさせて侵入しました。」
「・・・カスタムファームウェアと同じ仕組みか。中古のゲーム機を流用してるって見れば良いのか?」
中古のゲーム機はマ〇クラ動くならミサイルの地形読み込みに使える、アカウントシステムでロックオンが出来たりする。ゲーム機は最低限に削ぎ落としたものの、軍事転用するのに優秀な機械だ。・・・アメリカで中古ゲームが残っていないのはそういう背景がある。その為中古ゲーム、特にコスパが良い任〇堂のデフォルトで入っている音楽アプリで脆弱性が存在し、それに侵入出来た。仮対策はしていたものの、起動したならこっちのものだ。
「量産機、軍か企業が絡んでます。」
「お前みたいにハイスペックじゃないしな。」
「照れますねぇ・・・ご主人ちゃんからハイスペック・・・。」
「(デフォルトの設定に何があったんだ・・・。)」
流石に工場出荷モードではないだろうが・・・この女、前の所有者が相当拗らせた性癖している。
「・・・対策として音声系から近隣にある視覚関係、聴覚関係等の五感ユニットは封じれましたがセキュリティカメラや人工衛星が封じれてません。」
「よし、分かった。」
トカレフを構え、手当たり次第でカメラに当てる。一発二発ではやはり壊せない。
「全て破壊した。モニターはオフラインだ。」
「お仕事早いですね!早漏?」
「違う。」
「すいません多分前の所有者の影響ですね。」
「酷い位罵倒されてるのか前の所有者。」
多分金だけあったタイプだ、それ以外は何も持ちえないタイプの。
「そろそろ行きますか。」
夕焼けの終わり、シールドを一つ借りて乱射に耐える。見えてはいないが近距離では電力で反応する・・・デンキウナギ以外にも電気を使う魚は存在する・・・それの様に電気をソナーにして察知するのだ。
「鋼平!電磁アーマーが強力だけどAiは元が硬い文対大砲級の出力はある!だから一瞬展開されてクールタイムがある!」
「機材調達の金額から大砲持ち込んだと想定していたか。結構慎重だな。」
「遠距離武器で一番標準が調整し易いですからね。」
弾道学、コンピュータ・・・これらは大砲の弾道を知る為に作られた。また、ライフルは連射する物も増えてきて理論上標準通りに当たる連射数として二点・三点バーストがある。世の中には四点バーストという円周率=4並の暴挙も存在する。
「・・・誤認させる為に五秒間連射します!お見逃しなく!!」
「応!!」
これでタイミングを覚え、聴覚復旧以降はこのタイミングをベースに行う。絶対にミスしてはならない初動だ。失敗から学べる事は多いが、それは成功に遠く及ばない。失敗を繰り返した故に、その成功を逃してはならない、コンマ単位の秒数で全て覚えろ、弾丸へ電流が篭もる、トカレフの銃声が鳴る。
武器を持ち替えて、標準を向けて・・・そして・・・。
「一発!中枢破壊!致命傷か!?」
「・・・ダメ!復旧する!装甲が厚いのとパーツを四肢に分散させてる!!」
最初に攻撃した分、聴覚が最初に直される・・・その為、話すのを控えなければいけない。視覚が戻ったら相当厳しい。
「反撃が来る!!」
その中で、彼女から聞いた言葉はコレだった。叫べば命取り、その上でこの選択をしたのだ。
無言で警戒して眼光の先を銃口に向ける。電磁アーマーは近距離用、しかし銃は対物となればそれなりにバレルを長くするか、弾を強くするしかない。その為銃口がアーマーの射程外になる可能性がある。視覚の回復前に、銃口をねじ伏せる。弾丸は装填した、標準補助機が狂い始めているが・・・まだ何とかなると信じて。
・・・命中した。レールガンピストルから漏れる電気の残滓が、その視界を支える。
「どうだ!見たかよ!残念だったな!わりーわりー!中折させちまってよぉ!!」
「ご主人ちゃん、まだ話せないんだから言い過ぎよぉ?」
性悪二人、その弾丸を断念させ、連射の中撃った為暴発した。その筈だ、その筈なのだ。・・・倒れていくのは自分達だった、崩れていくのは自分達だった。・・・最初から、勝負は決していた。
「・・・あ・・・。」
理不尽な位の光が、自分達を苦しめる。
戦闘用Ai:アデンは核兵器を使用した後の掃討戦を行う機械である。また、それの為にあるものに耐性がある。
・・・対人工放射能耐性。
彼等は・・・光に溺れた。
その血と放電が彼等の痛みを語る。
直された口が、悪意を放つ。
「呆気ないですよ、人類。」
その銃を構え、撃ち抜くと決めたその時・・・。
その腕は・・・メスで撃ち抜かれた。
メスを引き抜くと同時に柔肌を切り裂く。
「純粋な人間として、介入させてもらう。」
その黒曜石が赤く染まる時、彼は人を助けると心を決まる。
「復讐は終わったから結構だ、もう未練も何も無い。」
清々しく、濡れた儘の姿で触れてくる。強引で野蛮に押し、動かされる。
「・・・さぁ、戦闘用Ai、お前に大人の本気というものを見せてやろう。」
銃口やアーマーは機能不良、レールガンピストルで射出したのは恐らく只の弾丸ではない。
「余所見してたら演算能力が落ちるぞ!人間と比較して並列処理が難しいなら素直に一個の事へ集中しろ!!」
蹴って離れたと思えばチューブが新たなメスを飛ばす。
「小さければソナーにも引っ掛からない・・・が、故障中だから意味は無いか。」
工具の扱い等も上手い・・・金が無かった時は工具で手術道具を作っているのだろう、彼と比較出来る医者は創作の中にしか存在しない。
何より行動が早い、次々に手を打ってくる。
「Aiの反応速度は、センサーと回路、電気信号と微小管。これは人体の方が理論値は早い。人体の理論値は現在0.001秒、人体捨てたバカは最初っからスペック足らずの人間だ。」
電気の速度では足りない、電気ではどうしても反射という反応は実現出来ない、どうしても切り替えなければいけない・・・どこまでも遠い、0.01秒以下の空白が出来るのだ。
「電気メス・オールアクティブ。」
いつの間にか差し込まれたメスが爆発する。黒曜石が深く食い込む・・・不味い、非常に不味い・・・マシン自体にも耐性はあるが、装甲が貫通した時、大きく弱体化する。
真上に向けて蹴り上げられる、肩が脱力し、首が脱臼する。
引き裂かれた腕の中で、電力は回復した。メルトスルーが起きようと電力は維持されている。
これで存分に使える、濡れた相手には効果覿面である、少しは焦ったが無駄だったな、と。
「準備完了!冷や汗諸共焼いてやるよ!!」
漏電によって殺す・・・そうすれば問題ない、と。
・・・全て、五感ユニットの破壊から招いた失敗だった。
電気が通じない・・・水の筈だ。・・・水の筈なのだ。
「・・・水じゃない? 油だと・・・!?」
「カジマのPCは油冷式だ、絶縁体だから電気は通じないさ。」
「火事の中それで歩いたと!?」
「ああ、何か悪いか?」
草木を踏もうと、滴り落ちた油にしか火は灯らない。彼には火が届かない。
「火は跳ねる為の物がないと火の粉程度では燃えない、それがもう残ってないのさ、火は早く引くぞ、さぁ、黒焦げの中で戦おうぜ、お前が目的を果たすか、俺が復讐の後始末をするか。」
脳天にメスは打たれた、そして、強制的にシャットダウンされる。
だが、医者も体力が残っていない。放射能の猶予が無くなった。
「・・・ダメか、メルトダウンは耐えれないか・・・。」
復讐に加担させた彼等は問題無いだろう・・・。
「・・・だが、これでお終いだ。」
だが、本当にそれで良いのかと迷って、自分は更に血迷った。
「・・・。」
機械を川に捨て、届くように願って。
God,I wish that was me.
そこにいるのが自分なら良かったのに・・・の略。
まぁ所謂『おいそこ代われ』的な奴です
次の五話は『最低最悪の恋をしよう』
過去のお話。
その次は『マセマティカルに行こう』
仮想通貨と電気に関するお話。
その次は『唐突に始まる天体観測バトル』
天体観測と偽造に関するお話。
その次は『Aiは両性具有の夢を見るか』
絵の生成とAiの宗教に関するお話。
その次は『Crazy Creation』
創造性と狂気とアルゴリズムのお話。
その次は未定。