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殺しの作法

気分次第でダンジグの話し方変えるのが楽しい。

カジマ派の勢力が増えた・・・というのもあの出来事があったとして、金銭の調達がメインとすれば少しラグがある筈だと。

しかし医者を隠した以上、バレた可能性もある。迂闊に公開すると病院襲撃に被害者がやったと意見が分散してしまう。

「気は取り直したな、君。」

イケメンモードインストールが同時に完了した。恥ずかしがる概念が無い時点でもうなんか恥ずかしい。

カジマ・シティの奥地、火事現場(予定)がある中央統括チームビル。ここでは設計や債権、計画書等様々な物が封入されている。

「その価値なんと・・・百億だぜ。」

「・・・。」

「おい、どうしたんだ、君。」

「・・・。」

多分本気で惚れてる・・・とか・・・だったらいいな・・・そうじゃないと嫌なんだけど・・・。

何を考えているか分からない、Ai的な思考と人間的思考の中間点にいる。正義と利己が混ざった、完璧ではないが、統計的な理想。こうすれば完璧というのを理論上で組んだ存在。歪な完璧。・・・それが自分の理想次第となるかは、自分にかかっている。

「行くよ、あの建物の電力をショートさせて爆発させる。変電設備は人員が少なくて壊しやすい。」

「・・・。」

「照れんなよ、シャイちゃん。いい加減話しておくれ。」

徒歩で行くのだが、少し時間が掛かる。

「不味かったか、さっきのが。」

「・・・。」

「『愛してるよ・・・鋼平。絶対に。』」

「・・・!?」

やはりこのワードがトリガーか。表情は変わらないのに身震いを起こしている。

「・・・悪かったな、今の僕は君の方が大事なんだ。」

怒っている訳ではなさそうだが、引っ掛かりを起こしてしまったかもしれない。

「・・・そろそろ行くからさ、話してくれ・・・。」

そう、彼に視線を向けるとつい口が緩んでしまった。彼は頑張って話そうとしていた、だが、口の端が絡む様に物を言えず、苦労していたのだ。それがどうも可愛くて可愛くて・・・仕方が無かった。

「・・・もう少し待つか、緊張が解けてないみたいだし。」

とはいえ、少し苦労する問題だ。彼は怒るとその反動でこうなる。それが正しいとすれば交戦中に脱落なんて事もある・・・怒りの許容値、慎重さや自制心が必要になる。音からの分析では怒り自体にもメリットはある、以前に比べてハイペースになるという点だ。思ったより自分に近い、そう思ってしまう。

「ドローンのセッティング終了、音索敵とルートマッピングは終わった、火災報知器が数個あるが止めて、カメラのスモークキャンセリングをアクティブ。」

これに関しては自分の仕事だ。念の為爆破物チェックを行い、硝煙反応グラフィーを確認。問題無し。

「・・・良し、立て直せた。」

「吃驚するじゃないか!」

「・・・対拷問セーフティのせいで表情と会話が出来なくなる様麻痺するのさ。」

「・・・なんだ、つまんねぇの。」

これが事実かどうかは確認せず、一つ一つ進める。草原や緑地をついでに燃やし、火の手を迫る様に演出。外に釘付けになった瞬間にドローンを燃やす。

「・・・準備は完了だ。後はあのビルに向かう敵を撃ち抜くだけ、楠木正成になった気分だな。」

「誰?」

「こういうのは外側を攻撃した方が良いって案作ってくれた人だよ。」

「・・・フゥ、それはそれとして、敵の状況は?」

「統率出来ている奴が少ないのか、頭数自体は少なそうだな、多分奴一人と戦う想定で良いだろう。」

レールガンピストルのサプレッサーを外し、銃弾をマガジン分まで込め、そして試しに構え、脇を閉めて頭を見る。

「悪いが、今回だけは殺す気で行く。」

取り出したトカレフのセーフティを口で掛け、マガジンを込める。

「悪くねぇな、熱い・・・崇高な誓いだぜ。」

高周波ブレードはそれでも滅多刺しにしてしまう、だから使わない。だが、ベルトにこっそり入れる。

「・・・どっちと会うかは不明だが、推定場所の中でも高いのを二箇所選んだ、一番危険度が高い方が良いだろ?」

「ああ、待つ甲斐があるってものさ。」

ビルの近くに別の建物が二人、逃げて来た人間を追撃するにあたって最適な場所、燃えない場所がある。しかし酸素濃度は低いので警戒すべきである。Aiも熱で鈍るので安全とは言えない。采配として文句無し、適任である。

「・・・行くぞ。」

「応。」

二人各々の方角へ進む。振り返りはしない。

しかし、鋼平は少し赤い頬を叩き、嫌になって振り向かなかった。

「可愛い奴め。」

燃え盛る炎の草原、熱気に満ち、人々が逃げる中で一人逆行する。

ステルスを人の数が減ると共に解き、段々足音を響かせる。

「俺を殺す為にここまでの計画を練るか、念入りに演技しやがって。」

「ああ、そうだな。こっちも経営破綻ギリギリでやってんだ、次の奴が必要なのと、あと一年もしない内にどうしてこうなったかお前は思い知るだろうしな。」

「他人向けの遺言だな!人生に語る事無しってか?」

「面倒な患者がいたもんでね、すぐにボルトを壊すバカがなぁ!!」

初弾は不意打ち、トカレフを胸部に狙った。

「・・・良い選択だ、随分殺意に満ちてやがる。」

電磁アーマーか、音響・ガス探知式だろう。しかし現状電力供給が無い以上、自分は一定間隔で掠める距離に撃ち、広い範囲に反応させる事で対処する事になる。向こうはメスのダーツ、黒曜石の破片・・・それは高周波ブレードの材料でもある。中南米にはマクアウィトルという武器があるし、その石片はあまりにも威力が高い。それをダーツとして飛ばす。射出機は原始的な仕組みの為熱耐性・音量等で優位になる上、電磁アーマーも通用しない。腕部のもので何とか防げるが、通信機器を壊す可能性がある。それは避けたい。

ダーツ射出機はボタン一つで行えるもので、ゴムによって発射する・・・装填はメスを引っ掛けて一度に引く。一度に最大四発、リロードは手馴れている。近寄り易いが近接戦闘の場合、メスだけでなく電気メス、そして電磁アーマーも相手になる。

右手にトカレフ、そろそろ二発目だ。軽量故に避けるのも容易、身体の向きで反応する表面積を抑えている。

「お前が殺してった犠牲者の贈り物だよ、受け取れ。」

「ああそうか、じゃあこっちも贈り物だ。」

素早く、鋼平よりも先に動いた。

「お前の取り替えたパーツだよ、信じるか信じないかはお前次第だ。」

「態々遠くから運ぶなんて、余っ程暇なんだなぁ。」

グレネードのピンを外し、即座に投げ、範囲度外視で初弾から信管を撃ち抜く。即座に爆発し、破片が大量に散る。

「互いに生身の人間だ、だが、一個忘れるなよ。」

電磁アーマー対策、それ即ち直接殴る事だ。

「中身が違ぇんだよ、腹黒ドス黒将来黒、この上ねぇ闇だ。」

グレネードが破片を降らせる中も突っ切り、傷だらけの中を引き裂く。そして奥底に進む。腕が散り、肩が正常に動かないとしても。

「ハイセンス、ハイブリッドそしてビーハイアーあの美少女から貰った名乗りだ。精々覚えとけ。」

鎧通し、甲冑とは違うので上手く決まらないが、衝撃自体は見込める。・・・だが、ここからが本番だろう。この男に限ってそんな甘い事はしない。・・・体内に何を埋め込んだか。

突如通知が押し寄せる。

『不味い、ビルの中から狙撃された。何人か死んだし、味方じゃないのは確実だ。』

「どの勢力だ。」

『多い、それは確か。』

投資先、それを奪いに来た。確かに燃えているビルから狙ってくる輩が居るとは思わないだろう。

こっちに来ない、つまり海外沙汰にはしないと。だが、映像漏洩対策もしてある。

「プロバイダーダウナー・アクティブ。」

動画サイトへアクセスする手段を断ち、狙いを変える。例のデートに何か不都合があった集団の仕業・・・そう、カジマと、カジマに押し入った集団のどちらかにするのだ。カジマは当然だが、金融関係でない上、発電所を狙うコストが見合わず、準備も短期間で押し入る・・・そんな組織は技術・情報の盗難がメインになるが、それだったら企業にこれを言って人質の様に金額を要求し、支払わせる。・・・そうだろう。

何故、彼はそこまで容易にセキュリティを壊せるのか。下手をすれば、彼に機械をぶつける事自体危険な可能性がある。

そう考えている頃には・・・。

「・・・終わりだ、単純な仕掛けならこちらからいかせてもらおう。」

爆弾の中で最も作りやすい物は何か、それは、電池を並列繋ぎにし、それぞれ逆方向にする。・・・これに火薬を少々入れるなどの工夫をする事で強力に出来る。タイマーで回路のスイッチを入れれば時限爆弾にもなる。

それはクラッキング次第でも実現可能そういう素振りを見せてスイッチを押す。電流の焼き付く音と共に・・・一人にとっては、灯火を消す轟音として・・・その音を聞いた。それと同時に、顔面へ強烈な蹴りを叩き込む。それと同時に魔術師は倒れた。

「気絶したか、そんな自分を巻き込む真似出来るか・・・先ず製品として守る為に外側にしか飛ばんだろ普通。」

何時もと違う変な音が鳴るブザーを貼り付け、電流に反応する様にしただけ。・・・爆発と同時に思いっ切り蹴った。脳震盪で多分助からないが川に投げた。100%から99%までは落としたから多分大丈夫だ。

「・・・向こう側だな、問題は。」

謎な箇所が多いが、それは今後調べるとして・・・。

「セキュリティテープから割り出す限りは向こうを狙っている、そして勢力が判断しにくい。」

・・・そして、考えるなら。

それはダンジグを狙った作戦、最初のも、次のも。

・・・彼女に何らかの原因がある。

「・・・少し考えながら向かうか。」

本当にピンチなら自動で信号が送られる。彼女は割と余裕そうだ。・・・量産する様な個体ではない、言ってしまえばB-2やブラックバードの様な唯一無二な機体である。生半可な対策で挑まれたのだろう。

・・・自分の人生は、古い記憶が殆どない。『どういう人間か』『どういう行動をして来たか』を抽象的に示される。川に流れて行った医者曰く、元来の病との事だ。

「・・・虚無感あるなぁ。」

ダンジグがいるからいいや、とも同時に思う。人生の色褪せたキャンパスが色を吸った、そしてラフが徐々に絵となっている。

トカレフの弾倉を見直し、戻す。レールガンピストルはモニターをオンにすれば残弾カウンターから見れる。

「セキュリティカメラを介した索敵共有・・・可能だな。電磁パルスライフルの兵士は居ない・・・多分工場を漁っているんだろうな。」

電磁パルスライフル、某映画をモデルに作成した対Aiライフル・・・というか電子機器であれば問答無用で有効、当たらなくてもダメージはある。・・・かなりコストは重い、大砲ギリギリ下回る位。


向こうの彼女はどうだろうか、銃撃戦を繰り広げる中、ライフルを地面に突き立て、シールドの配置を変える。

・・・跳弾による反射だ。彼女にとっては造作もない。彼女のプラグインの一つ、『デッドリー・アーカイブ』これは死体を読み込む事でその人間の技術を抽出出来る・・・とはいえアルゴリズムは再現可能だがスペックが不足している場合再現しきれない。

「馬鹿ですねぇ、ホント。後先考えないあたり。」

戦争のデータを学習すると、大体がそう言える。敵を容易に責め立て、容易に侵略を行い、容易に過大な請求を行う。

『考えればどうなるか目に見えている』ものを平然と行う。どいつもこいつも国交は棚に上げて行う。他国への文句は大抵自分を棚に上げている様に、人間の文句は大体自分の立場を理解していない事が多い、頭数と性能の分布的にそうなってしまうのだ。

「・・・全員、戦いたくないでしょうに。」

青年二人を殺せ、幸せそうな青年を殺せ・・・どういう文面であれ、依頼文とは大きく違う、引き受けた後に自分のやりたくない事であると気付く。

遮蔽物越しの相手を弾丸の威力調整又は同じ箇所への連射で貫通させる。

押される事は全くない、電磁パルスライフルに警戒していたがグレネードも探知無し・・・まぁ自分の電子機器をスコープ含めて使わずに狙う技術が必要な以上、難しい事この上ない。

「・・・。」

気絶させても、殺しても、多分立ち上がる。あの男は医者だ、精神作用を封じ、暴力を絶やすつもりはないだろう。・・・彼等は下がれない、命を捨てたのだ。悪に身を投じた以上、それ以上の古くからいる悪を越えれなかった。

・・・もし、鋼平であるなら、彼等を殺すだろうか。

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