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ソラノヒト  作者: 雪兎
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第四羽 契約

「えっと……」


「アナタ、名前は?」


「僕は……言わなきゃダメ?」


「は? 名前を言わなきゃ誰だかわからないじゃない」


「あんま、自分の名前を言いたくないんだけどなぁ……」


「いいから早く言って」


「むぅ……猫羽紅ねこまこうだよ」


「なんだか……可愛らしい名前ね。自分は空閑那由多くがなゆた


 彼女、空閑那由多は僕が一番言われたくないことを一言目で言ってくれた。

 いくら初対面だからって……殴っていいだろうか。


猿渡さるわたりさんからアナタの話は少し聞いたわ。不良少年だって。人は見かけによらないわね」


 一人で納得するように頷く彼女。

 そんな姿もなんとなく絵になって、僕は昨日に引き続き見惚れてしまった。

 じっと見つめている僕を不思議に思ったのか赤と青の目で僕のほうを見つめ返してきた。


「何? 顔に何かついてる?」


「い、いや。クガナユタって読むんだね。何て呼べばいいかな?」


「何でもいいわよ。空閑さんでも那由多さんでも、何ならアナタがあだ名をつけても」


「んむぅ……」


 自分が年下なのに候補に上がる呼び方はさん付けなのが気になるが……


「じゃあ……ナユでいいかな」


「どうぞご自由に」


「てか、君は僕より年下だよね?」


「それが? 自分は年齢とかを気にしない主義なの」


 一応最低限は気にしてほしいなぁ。

 そんなことを考えていることなど気にせずにナユは勝手に話を進める。


「で、何で昨日はソラを飛ぶのを邪魔したの?」


「は?」


 邪魔したもなにも君が勝手に飛んで勝手に落ちただけじゃないかと思ったが口にはしなかった。

 しかしナユには読心術があるのか、心を読んだかのようにムスっとした顔をした。

 僕が顔に出しやすいだけかもしれないが。


「コウが変な声を出さなかったらあのまま飛べたのよ」


「そんなこと言ったってナユが重力に負けただけだろ」


「そんなことない。昨日は調子がよかったから飛べたはずよ」


「てか初対面なのにそんなこと言わなくてもいいだろ」


「フンだっ」


 ナユの見た目には一目惚れしたが、性格は悪いようだ。

 左右の色違いの目が力強い意思を持っていて射抜かれそうだ。


「……アナタ、珍しいわね」


「は? 何が?」


「大体初対面の人は自分の目の事を聞いてくるのにアナタは聞いてこないから」


「いや~そういうのはあんまり気にしない性格だから。ただ綺麗な目だな~って思ったくらいかな」


「なっ……べっ別に褒めても何も出ないわよっ」


 あ、これっていわゆるツンデレって言うヤツなのか?

 今度、幼馴染の翼に聞いてみよう。

 まぁそれは置いておいて。


「で、そんな初対面なナユが僕に何の用だい?」


「そうね……昨日、邪魔をした責任を取ってもらおうかしら」


「はぁ?」


 思いもよらぬ答えに、思いもよらぬ声が出てしまった。


「責任取るも何も君が勝手に飛んで勝手に落ちたんだろ」


「だ~か~ら~アナタの邪魔がなければ飛べたのよ。だからこれから自分の言うことを聞いてもらうわ」


「勝手なっ」


「いいわよ。もし聞かなかったら猿渡さんにあったことなかったことを言ってとっちめてもらうんだから」


「う……」


 この性格だ。

 もしも、とてつもないことを瑠香さんに言われたら僕の命はないぞ。

 しかしこんなヤツのわがままを聞くととんでもないことになりそうだが……


「どうする?」


「わ、わかったよ。僕は何をすればいい」


 僕は瑠香さんに殺されることを恐れて仕方なく従うことにした。

 幼馴染たちにこんな姿を見られたら「お前は忠犬だな」と言われそうだ。

 昔、怪しげな占い屋に「前世は犬です」なんぞ根拠のないことを言われた。

 どちらかって言うと猫に似ていると思うけど。


「初めから素直にそういえばいいのよ。じゃあまずは何か面白い話をしてよ」


「は?」


「ここ、毎日退屈なのよ。だから面白い話」


 いきなりそんな無茶なことを言ってきますか。

 僕も同じ入院生活をしているってことを知らないんですかい。

 まぁ入院生活といっても本日で一週間ですが。


「じゃあ面白いかわからないけど……」


 とりあえず僕の近状などを話してみた。

 ナユは特に文句などは言わないでずっと僕の話を聞いてくれた。

 自分のことをこんな風に人に話すのは久々な気がする。

 翼とはよく話しているけど悩み相談がメインだ。

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