第三十一羽 毎度恒例の……
「うぅ……死にたい……」
できる限り足掻いてみたが、刹那とリコ姉のタッグに僕が勝てるわけがなかった。
てか、一対二ってずるくない?
いくら男対女でもさぁ……
「まぁいいじゃんさ~似合ってるんだから~」
「……男としては似合いたくない……」
「じゃあこれを機に女の子として……」
「無理だーっ」
「おいおい、そんなに暴れるとパンツが見えるぞ?」
「っ!?」
瑠香さんにそう指摘されて思わずスカートを手で押さえてしまった。
……反射って怖い……
「……てかできるならもう少し長いのにしてよ……」
「それは聞けない願いだなぁ~私が今聞いてあげられる願いは『獣耳追加』か『パッド入りブラ追加』くらいさ~」
刹那はそう言ってカバンの中から先日つけた獣耳とブラを取り出した。
いや、どっちもつけませんから。
「いんや~それにしても紅クンは昔っから女装が似合うよねぇ」
「……」
そう、幼い頃はリコ姉の着せ替え人形と化していたのだ。
それでようやく解放されたと思いきや、刹那がその道に目覚めて今度はそっちの着せ替え人形に……
家の中でするだけならまだよかったが、それを着て外に連れ出された日には死ぬかと思った。
本当に知り合いに見つからなくてよかったと思う。
「やっぱりこれを機に女の子になろうよ~ネコっちなら整形しなくても大丈夫だよっ」
「いや……僕は男としてこれからも生きていきます……」
それから四人は僕の過去についてどんどん話を進みだした。
幼少期の事は主にリコ姉が、小学校以降の事は主に刹那が話して瑠香さんとナユは笑いをこらえながら聴いていた。
……帰っていいなら帰りたい……
「いや~刹那ちんがコスプレに目覚めたときにはうれしくて泣きそうになったのを覚えてるよ~」
「……僕は別の理由で泣きたい……」
僕がぼそりとつぶやいたが、ことごとくスルーされた。
しばらくすると瑠香さんは笑いがこらえられなくなったのか、声を上げて笑いだし、ナユの奴も布団に顔をうずめて笑いをこらえていた。
「そんなに笑わなくてもいいじゃないですかぁ……」
「わ、悪い悪い。コウの過去があまりにも面白くてな」
「これのせいで苦労したんですから……コスプレさせられた状態で外に出て……知り合いや後輩に合わないか心配でしょうがなかったですよ。それに中学では同性にコクられるし……」
「ぶはっ。お、思い出させるなよっ。アハハッ」
「……帰っていいですか……」
「ネコっち、そのままの格好で帰るのぉ?」
「う……そ、そうだ。こないだの服はどこにやったっ」
「ん? あれは藍ちゃんにちゃんと返したよ~?ネコっちが忘れていった~って言ったらありがと~って言われちゃった」
……刹那め。
人の服を盗んでおいてお礼を言われるとはひどすぎる……
てか僕の母親はどうしてパジャマを忘れたと言われて信じる……
病院内のパジャマをどこでどうすれば忘れるのだろうか。
「まぁそんなに着替えたいなら妥協策を出してやろうではないか」
「ん? ブラをつけろって言われても拒否します」
「大丈夫大丈夫。そんなひどいことしないから」
「……今までそう言われて何度ひどい目にあったことか……」
「今日のは本当に妥協策だよぉ?」
「……一応聞いておこうか」
僕がそう言うと刹那は紙袋の中身をガサゴソと探り、先ほど見せた獣耳を取り出した。
「これをつけてニャーって言ってくれれば満足さ~」
「う……」
それは迷いどころだ。
これだけいるところでやるのは何だが、早くこの姿から解放されたい……
「紅クンのにゃんこ姿をみたいなぁ~」
「うぅ……」
「どうするかはネコっち次第だよ~」
そんなことを言いながら刹那は僕にネコ耳を渡してくる。
うぅ……これをどうするべきか……
さっきから腹を抱えている瑠香さん、口元を布団で隠してこちらを見ているナユ、ニヤニヤと笑っている刹那とリコ姉……
「や、やればいいんだろっ。……にゃ、にゃあ……」
「よしよし。今日はこれくらいで許してあげよう」
は、恥ずかしかった……
とりあえず刹那は約束通り、服を返してくれた。
「じゃあ私は満足したから今日はこの辺で。刹那ちん、また良いブツが入ったらよろしくねぇ~」
「あいさ~」
……良いブツとは何なのか、言及するのはやめておこう。
なんだか聞いてはいけない気がする。
とりあえず僕は近くのトイレで着替えるために部屋を後にした。
超久々の更新ですみません
なんだか書く暇がなくて……
これからかなりスローペースのマイペースで書いていくと思うので、読んでいただいている方々にはお待ちさせることになると思いますがご了承くださいm(_ _)m
どうでもいい話ですが、男みたいな女の子と、女みたいな男の子、どちらの方が同性に需要があるんでしょうね?w(マテ