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ソラノヒト  作者: 雪兎
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第二十七羽 従姉

 入院生活も二週間以上経ち、生活には慣れてきたけど、楽しみがナユに会うことだけになってきていた。

 ナユに会っていない時間は何故か向かいのオタクがうるさい。

 そんな長い名前を聞いても何がなんだかわからないし……

 まぁ言っていることは大体わかった。

 『長ったらしいキャラクターのコスプレをして欲しい』と言うことだ。

 誰がするかっ。


「だからして欲しいんだよぉ」


「……」


 こういうのは無視するのが一番いいのだ。

 静かになるまで無視しよう。


「これだけでいいからっ」


「……」


 無視無視……

 コスプレオタクは刹那せつなだけで十分だ。


「やほ~こうクン」


「……」


「むぅ~こんな美人なお姉さんが声をかけているのに無視するのねっ」


 なんだか聞いたことある声が……

 入り口の方を見てみると見知った顔があった。

 色素の薄い金色の長髪で、程よく整った顔でつり目気味の目と僕の目が合う。


「リコ姉っ。何でここに?」


らんさんから聞いてさ~午前中に講義が終わったから寄ったのよ」


 彼女は東狐とっこ衣莉子えりこ

 僕のいとこのお姉さんで、小さい頃から僕の世話をしてくれている人だ。


「てか、自分で美人って言うんだね」


「だって事実でしょ~?」


 いや、僕の周りには美形が多すぎて、リコ姉は中の上ぐらいの位置になっている。

 まぁ一般人から見たら美人の部類に入るのかな。

 僕のそこら辺の感覚は一般とずれているのであてにならない。


「ん~普通じゃない?」


「ひんどいなぁ~あんなに紅クンを可愛がってあげたのに」


「それに関しては感謝のみで」


「ぷぅ~」


 二十歳の人が頬を膨らまして上目遣いで見つめてきてもなんとも思わない。

 こういう反応の仕方って遺伝するのかな。

 リコ姉と、母さんの双子の姉、桃香とうかさんの反応と似ている気がする。

 母さんと桃香さんは顔も性格も行動もそっくりだ。さすが一卵性双生児。


「で、何か用でも?」


「紅クンが暇かな~って思って、暇つぶしに協力しようかと」


猫羽ねこま氏のお姉さんですかい?」


 僕とリコ姉が話しているとリコ姉の後ろから向かいのオタクが声をかけてきた。


「ん? どちら様?」


「わたくしめは猫羽氏のファ……」


「ただの同室の人だよ。そんなに息を荒くしていると治るものも治りませんよ」


 オタクがファンと言う前に僕が邪魔をした。

 さっさと自分のベッドに戻って欲しい。


「私は紅クンのいとこの東狐衣莉子。よろしくね」


 ニコリと営業スマイルをオタクに向けるリコ姉。

 てか僕、このオタクの名前知らないなぁ。

 知りたくもないけど。


「ちょっと私、紅クンと話しているから邪魔しないでね」


「わかりましたっ」


 勢いよく自分のベッドに戻っていくオタク。

 リコ姉の顔を見てみると、冷めた目でオタクの背中を見ていた。

 この人は本当に興味のないことにはとことん冷たいなぁ。

 しかし僕と目が合った瞬間に温かい目に戻った。


「邪魔者は消えたし~何話そっか?」


「リコ姉、もうちょっと他人にも愛想よくしたら?」


「めんどい。私は紅クンと話したいのよっ」


「さよけ」


「ねぇ紅くぅん」


 甘ったるい声を出さないでください。

 頬擦りも、しないで欲しい。

 何で僕の親族は必要以上のスキンシップをしてくるのだ。


「で、話すって何を?」


「ん~……風の噂で聞いた、紅クンの彼女候補について?」


「んなっ」


 何でリコ姉がナユのことを知っているのだ。

 母さんにナユの事を話していないし、リコ姉は刹那たちとはそれほど交流はないはずだ。


「ん~? 何で知っているか知りたい? それは親切な看護師さんがいたのさ」


「……その看護師さんの名前って……」


「確か猿……何とかさん」


 おそらく瑠香るかさんのことだろう。

 あの人は本当に僕の情報を他人に漏らすな。

 今度会ったら言いふらさないように言っておこうかな。


「で、誰なのよ~紅クンの彼女さんは~」


「リコ姉の知らない人だよ。それに彼女じゃないし」


「えぇ~そんなこと言われると見たくなるな~」


「そんな簡単に会えるわけな……」


「コウ、もうお昼よ」


 リコ姉の後ろから声をかけてきたのは、話題のナユだった。

 時計を確認すると針は十二時を示していた。

 なんてタイミングのいい世の中だろう。


「はいはい」


「ほぉ~キミが紅クンの~」


「ん? ……だれ?」


「私は紅クンの愛人の……」


「誰が愛人だっ! ただのいとこのリコ姉だよ」


 まったく……油断も隙もありゃしない。


「リコ姉?」


「東狐衣莉子。名前の後ろから取ってリコさ~アナタは?」


「自分は空閑くが那由多なゆたです。コウのせいで腕を……」


「骨折はナユのせいだからなっ」


 勝手に骨折の原因にするな。

 重力に人間が勝てるわけないのはわかるだろ。

 いくらソラが飛びたいからって道具なしで窓から飛び降りるなんて普通はしない。


「那由多ちゃんか~こんな可愛い妹が欲しかったな~」


「リコ姉は一人っ子だからね」


 そんなことを話していると、突然くぅ~とお腹が鳴る音がした。

 僕じゃないですよ。


「リコ姉?」


「いんや~お腹は空いているけど、早弁しているから鳴るほど空いてはないさ~」


「じゃあ……?」


 顔を赤くしながら俯いているナユだった。

 今の音はナユの音か。


「だ、だって……朝はそんなに食べないし……コウが遅いし……」


「僕を待ってないで自分で食べればいいのに。じゃあリコ姉、僕は用事があるから」


「へいへ~い……那由多ちゃんに手を出しちゃダメだよ?」


 なんでだーっ。

 僕ってそんなに軽々しく手を出すように見えるのだろうか。

 入院生活二週間で三回も別の人に言われた。

 もちろん異性に手を出したことなんて生まれてから十七年、一度もないのだが。

 にへらにへらと笑っているリコ姉を病室に残してナユの病室に向かう。

 病室を出る直前にオタクがリコ姉に近づいていくのが見えたが気にしない。

新キャラクター登場です~

東狐衣莉子……こんな苗字の人が実在するのかとお思いの人がいるかもしれませんが……実在しますw

てか『ソラノヒト』の登場人物の苗字は全て、実在している苗字ですよ~

どうしてネコっちは『猫羽』で『ねこま』と読むのだか……

苗字って面白いものがいっぱいありますよね~


ちびちびと更新していくので長い目でよろしくお願いします~

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