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ソラノヒト  作者: 雪兎
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第二十二羽 罰ゲーム直前

 来てほしくない日は来るのが早いようで、一週間が過ぎ、日曜日の朝を迎えた。

 憂鬱なまま朝の検査を終えて病室に戻った。


「はぁぁ……」


 とりあえず、ナユの検査が終わるまでは暇だから本でも読んで時間を潰すかな。

 昨日母さんに持ってきてもらった本の中から適当に一冊取り出し、初めから読む。


 半分くらい読み終わったところで刹那せつなつばさが僕のところにやってきた。


「ちゃお~」


「やけにテンション高いな」


「そりゃねぇ?」


「ん、あぁ……」


 ちょっと待て。翼のその反応は何なんですか。

 目がすごい泳いでいるんですが……

 なんかすごい不安だ。

 今まで以上の服か?


「まぁ、覚悟してよ~?」


 覚悟は一週間前からしていますとも。

 未だに固まっていませんが。


空閑くがちゃんの検査はいつ終わるのかな?」


「終わったら瑠香るかさんがおしえてくれるって言ってたよ」


「じゃあそれまでここで待っていよ~」


「翼たち、昼は?」


「まだ食べてないから今のうちにどっかで食べてこようかな」


「久々ね~昔は三人でよく行ったのにね」


「僕は病院食だから行けないけど」


「今度三人で行こうよ」


「僕が退院したらね」


「じゃあ僕たちは行ってくるよ」


「いってらっしゃい」


 僕は二人を送り出してから本に集中した。

 女装の事は今更気にしても仕方ない。

 今日着ないといけないことには変わりはない。

 嫌だけど……


「よぉ~検査、終わったぞ。それにお姫様からご指名だ、ナイトクン」


「……ナイトって誰ですか。どうせナユからの指名って言ったって昼飯食わせろってことでしょ」


「ご名答。アンタのも向こうに運んでおくから」


「あ~い」


 僕は本を置いてベッドから起き上がり、ナユの部屋に向かうことにした。


 部屋につくとすぐに瑠香さんがお昼ご飯を持ってきた。

 僕は毎度のようにベッドに腰を下ろし、ナユに食べさせた。

 いつものようにナユは口を開けてスプーンに喰いつく。


「いつも思うけど、恥ずかしくない?」


「んむ~? んふふむふ~」


「飲み込んでから喋りなさい」


「んむ」


 ナユは口をもごもごと動かして飲み込んでからニヤリと笑ってきた。


「恥ずかしいわけないじゃない。ここには自分とコウしかいないし」


「……さよけ」


 じゃあ他の人がいたら自重してくれるのか?

 そう思いながらスプーンを差し出すと、ナユは再び喰いつく。


「んむんむ」


 幸せそうに食事をしているナユの顔を見るとこっちまで幸せになってくるなぁ。

 また口を開けてきたので再びスプーンを差し出す。

 そしてナユは喰いつく。


「んむん……むぐっ!?」


「やほ~……って大丈夫っ!?」


「んぐぐぐ……」


 ナユは突然入ってきた刹那たちに驚き、食べていたものを喉に詰まらせたようだ。

 刹那は慌ててナユに水を飲ませた。


「ぷはぁ……し、死ぬかと……思った……」


「驚いたよぉ~急に空閑ちゃんが喉を詰まらせるんだから」


 ナユの背中を刹那がさすってあげている。

 ナユは少し咳き込みながらもなんとか喉に詰まったものを飲み込めたようだった。


 それからナユの食事はすぐに終わり、僕も刹那とナユに見られながら食べにくい食事を済ませた。

 翼はお茶を入れてくれていて僕の方を見ていなかっただけ幸いだ。


「よ~っし。二人とも食べ終わったから早速罰ゲームといきますか~」


 そう言って刹那は背負っていた少し大きめのリュックサックを椅子の上に置き、中から複数の紙袋を取り出した。

 だからお前のリュックサックは四次元ポケットなのかっ。

 何でそんなに出てくるっ。


「空閑ちゃんのはこれね~」


 そう言って四つの内の一つをナユに渡す。

 ……なんで三つも残っているんですか。


「んでぇ、ネコっちには選択の余地を与えてしんぜよう」


「……選択の余地はあってもなくても同じ気が……」


「気にしな~い気にしな~い」


「……お気の毒に」


 何か翼の独り言が聞こえた気がしたんですが……


「ネコっちはこの三つを渡しておくから。この紙袋のは絶対に身につけて、あとの二つの内の一つはネコっちの好きなほうで。さ、男子達は外に出た出た。空閑ちゃんが着替えるんだから」


 僕と翼は刹那に背中を押されて廊下に出された。


「僕はどこで着替えろと……」


「……とりあえず近くのトイレじゃない?」


「……なぁ、翼はこの中身を知ってる?」


「……一応せっちゃんに見せてもらったけど……自分の目で確認するほうが早いよ……」


「……どっちか一方がマシなことを祈るよ……」


「いや、僕としては絶対って言ってたほうのが……」


 ……なんだか不安が大きくなってきた。

 悩んでも仕方がない。

 僕は三つの紙袋を抱えて近くの男子トイレの中に入った。

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