第十九羽 敗北&追加
……結果は言うまでもないだろう。
僕の惨敗だ。
刹那がニヤニヤと、ナユが笑いそうな顔で、翼は哀れむような目で僕を見てきた。
「んっふっふ~罰ゲームはネコっちにけってーい」
「うぅ……」
「ま、まぁなるようにしかならないよ、紅」
「そんな風に言われると余計につらい……」
「ふ……フフフッ」
「笑うなーっ」
僕が叫ぶと突然ドアが開いた。
「うるさいっ」
ドアを開けたのは瑠香さんだった。
そして容赦なくスリッパで叩かれた。
「あぅ……」
「そんなに落ち込んで何かあったのかい?」
「ネコっちは賭けに負けて罰ゲームなんですよ~」
罰ゲーム。
その単語を聞いた瑠香さんの目がキラリと光った……気がした。
「ほぅほぅ。面白そうだねぇ。アタシも混ぜてくれない?」
やっぱり光ったのは気のせいではなかったようだ。
この人の笑みが大変怖い。
「ん~いいですけど~……麻雀じゃ四人だからトランプにします?」
「だね。負けた場合は紅と一緒にその罰ゲームとやらをやるってことで」
「じゃあネコっちが負けた場合は二倍ね~」
勝手に決めないでくれ。
そう言いたかったが僕が口を挟む隙もなく二人が話を進めていく。
ゲームは単純にばば抜きになった。
これならまだ勝つ見込みがあるかもしれないと淡い期待を持って参加しよう。
「それより罰ゲームって何するんだい?」
「男子二人は女装してこの病院一周。女子はコスプレして病院一周ですよ。ネコっちの場合は一周して着替えてもう一周で」
「ハハッ。そりゃコウが落ち込むわけだねぇ……お、揃った」
瑠香さんが僕の手札からカードを引いてペアを捨てる。
気がつくと瑠香さんの手札はだいぶ減っていた。
この人が罰ゲームを受ける事はないだろうな。
ちなみに今の手札の枚数は僕が五枚、瑠香さんが二枚、他三人が四枚、ジョーカーは僕の手元に。
……僕ってこういうゲームは全般的に弱いんだな。
心理戦とか苦手だし。
「このままだとネコっちがまた罰ゲームかな~」
「流石に女装で二周はキツイねぇ」
瑠香さんと刹那が二人揃ってニヤニヤと僕を見つめてきた。
この二人、なんだか息が合っている気が……誰か助けてください……
気付くと瑠香さんと刹那が残り一枚になっていた。
「んっふっふ~私はあがり~」
「アタシもあがりだよ」
残ったのは僕と翼とナユの三人になった。
しかし一回も瑠香さんの手元に僕のジョーカーがいかなかったのは奇跡だろうか。
「誰かな誰かな~女装するのは誰かな~」
あがった刹那が僕のほうを見ながらそんなことを言ってくる。
「あ……ごめん、紅」
僕のカードを引いた翼が揃ったようであがってしまった。
これで僕とナユの一騎打ち。
手札は僕が三枚、ナユが二枚。
とりあえず僕がナユのカードを引くと揃った。
てかこの状況じゃ絶対揃うか。
「ん~……」
僕の残った二枚を睨みながら考え込むナユ。
頼む……ジョーカーを引いてくれ。
「……はぁ……仕方ないわね」
ボソリとナユがそう言った気がした。
そしてナユが手を伸ばし、ジョーカーを引いていった。
「やたっ」
「おぉ。ようやくネコっち、ジョーカーから脱せたねぇ」
今度は僕が引く番だ。
ここを外したら終わりなんだろうな。
慎重に選ばないと……
じっと見つめているとナユの目が右のカードを見た。
そっちなのかな。
もうわからないからナユを信じるしかない。
僕は意を決して右のカードを引いた。
「揃ったーっ」
「はいはい。よかったわね」
ナユを信じてよかった。
ありがとうナユ。
「ん~空閑ちゃんか~」
「まぁ、いいじゃないですか」
「じゃあ次の日曜日に私が持ってくるから楽しみにしててよ~」
何で刹那はそんなものを持っているんだろう。
「ネコっちにはあれで……空閑ちゃんは……にゅふふ……」
……幼馴染の笑みがとてつもなく怖いのですが……気のせいだろうか。
「んじゃそろそろ那由多の検査の時間になるからアンタたちは帰りな」
「は~い。また遊ぼうね~」
「うん。また今度」
僕たちはナユの部屋をあとにしていったん僕の病室に行くことにした。




