第十五羽 夕暮
時間もだいぶ経ち、夕焼けが綺麗に見える時間帯になった。
「……夕焼けが綺麗だなぁ」
「そうだね。那由多が夕焼けを見たいからって言ってここの部屋を取ったんだよ」
「だって入院生活はつまらないからせめて景色くらいよくないと」
ナユは夕焼けを見ると目を細めた。
瑠香さんもナユにつられて夕焼けのほうを見た。
「久々にこの時間までいたねぇ」
「職務怠慢じゃないんですか?」
そう聞くとデコピンをされた。
「アタシの仕事は那由多の面倒を見ることだからいいんだよ。ちゃんと他の仕事も終わらせているし」
そうですか。
まぁ患者さんも瑠香さんに看てもらうより他の看護師さんに看てもらったほうが安心かな。
いや、懲りないエロジジイ達には瑠香さんのほうがいいかもな。
この人にセクハラしたら殺されるだろうが……
「それにアタシはこっちのほうが、気が休まるんだよ。向こうにはケツ触ってくるジジイ達がいるし、流石にそいつらには手は出せないしな」
あ、やっぱり困ってたんだ。
こんなに美人だと苦労が絶えないんだろうなぁ。
僕には一生縁がないだろう悩みだけど、ナユも大人になったらそんなことで苦労するんだろうな。
美人と言うのは得ばかりでないんだと改めて思った。
「それよりアンタはもう時間になるから帰んな」
「えぇ~もう少しこの夕……」
「少しくらい、いいんじゃないんですか?」
僕がわがままを言う前に先にナユがわがままを言った。
「そうは言ってもねぇ……師長に怒られるのはアタシなんだけどなぁ……ま、たまにはいいか」
本当にいいのだろうか。
まぁナユといられるならいいか。
「あと三十分だけだよ?」
「ありがとうございますっ」
僕は瑠香さんに頭を下げ、今日の刹那のことは忘れておこう。
それからきっかり三十分居座ってから病室に戻った。