第八話「冷々たる別離」①
次に目を覚ました時、神楽夜はあまりのまぶしさにすぐさま顔を背けた。真っ白い天井に真っ白い壁、それらを昼白色の明かりが照らすものだから、寝起きには強すぎる。
神楽夜は上体を起こし、くらんだ目を薄っすら開けて首を動かした。
「ここ、どこ」
部屋は非常に殺風景であった。寝かされていたキングサイズのベッド以外、室内にはこれといって物がない。部屋の広さはそのベッドすらかすむほどの大きさがあり、ダンス教室でも開くのかという具合だ。濃いオーク柄のフローリングに、さきほどからまぶしい白い壁と天井、そして視界の左手には大きな連装窓が壁いっぱいに並んでいる。その窓の外にはベランダがあり、
(あ――)
と、神楽夜はそこに佇む人影を見つけ、ベッドを降りた。
その音に気づいたらしき人影は夜風に当たるのをやめ、欄干に預けていた上体を起こすと踵を返し、一箇所だけ開いていた窓からすっと部屋に戻ってくる。
そして、
「起きたか」
と落ち着いた声色で神楽夜に問うた。
うしろ手に閉める窓から風が滑り込み、彼女の短い金の髪を揺らす。神楽夜は見据えてくるエメラルドのような碧い瞳に吸い込まれかけて、
「レジーナ・シスル……」
と、無意識にその名を口にした。
そこで神楽夜の脳裏をよぎるのは、意識が途切れる寸前のあの光景である。左腕にめらめらと燃えていたのは、見間違いなどではない。あれはまさしくアービターの証であった。
しかしどう切り出したものか。図らずも面会が叶った形であるが、神楽夜には次の言葉が浮かばない。彼女が突然襲ってきた真意もまだ質していないのだ。まさかひとりで会うことになると思っていなかっただけに、彼女の頭は真っ白になった。
一方のレジーナはといえば、ぽかんと立ち尽くす神楽夜を見て、
(こんなやつが?)
と辛辣な思いを抱いていた。
その理由は、神楽夜を昏倒させたあとにさかのぼる。




