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第15話 条件のすり合わせ

 数日後、俺はセイカを異世界に残して、日本へ戻ってきた。

 タイジくんとの話がある程度まとまるまでは、できるだけ安全策をとっておきたいからな。


 家に帰り、スマホを取り出すと、ギルドからメッセージが届いていた。

 内容は指名依頼のおしらせで、依頼主はタイジくんとのことだ。

 そういや連絡先を交換していなかったので、こういう形でのコンタクトとなったのかな。

 依頼内容は例の山の調査だけど、それは会うための口実だろう。


「いらっしゃいませ、アラタさん」


 タイジくんからいろいろ聞いてしまったせいか、ギルドに対する不信感は募る一方だ。

 受付さんはいつものアルカイックスマイルを浮かべているんだけど、裏で何考えてんだか……と邪推してしまうのはさすがに失礼か。


「どうも」


 そんなわけで、こちらもつい塩対応になってしまう。


 とりあえず依頼の受諾前に詳しく話を聞きたい、という理由で連絡先の開示を許可。

 数分後、タイジくんからメッセージが届いた。


 その気になれば俺の連絡先なんかいくらでも調べられそうだけど、このあたりきっちりしてるのはさすが元政治家ってところか。

 ギルドに対する不信感のせいで相対的にタイジくんへの信用度は上がっているが、油断は禁物だ。


 どちらも信用ならない。

 

 それくらいの心持ちで臨まないとな。


 30分ほどでギルドに現れたタイジくんと合流し、あのキャンピングカーへ。

 今日は探索をしていなかったのか、ラフなジャージ姿だ。

 それでも絵になるってんだから、イケオジってのはいいよな。


「それで、企業戦士の件、受けてくれるのか?」

「条件次第で」


 というわけで、俺はセイカやトマスさんたちと詰めた条件を提示していく。

 口を出すな、詮索するな、をベースに、こちらが有利になるような条件を詰め込んだ。

 俺たちが日本でも異世界でも気兼ねなく好き放題活動するためにはどうすればいいかを、数日かけて話し合い、決めたものだ。

 なので、そのすべての条件を呑んでもらえるとは思っていないが、可能な限り押し通したい。

 最低限ここだけはゆずれない、というラインも決めている。

 なので、ここから交渉開始、と思ったのだが……。


「いいだろう。すべての条件を呑もう」


 えっ、いいの!?

 ……とあやうく声を出しそうになるのを、なんとかこらえた。


「問題ない」


 とはいえエスパータイジには俺の考えなどお見通しのようで、彼は少し呆れたように微笑んでそう言った。


「このあいだも言ったが、古峯新太という優秀な冒険者との縁を得られることは、私たちにとってこの上ない利益だ。そもそも君には好きに動いてもらうつもりだったわけだしな」

「そうですか。俺としては、ありがたいですね」

「では、いま聞いた話をもとに契約書の草案を作るので……そうだな、明日もう一度会おう」


 そんなわけで、タイジくんとの話し合いは思っていたよりあっさりと終わった。


 この日は特に移動をしなかったようで、キャンピングカーを下りた先はギルドの駐車場だった。


「主、これからどうする?」

「そうだな、ダンジョンを軽く流しとくか」


 走り去っていくキャンピングカーを見送った俺は、あらためにギルドへ入った。


「アラタさん、指名依頼の件はどうなりましたか?」

「あー、とりあえず条件を詰める感じで、明日また依頼主と会うことになりました」

「かしこまりました」


 どうぜブラフの依頼だ。

 契約が決まれば依頼は取り消され、山林の調査については企業戦士として受けることになるだろう。


 その日は山のダンジョン中層へいき、〈サンダーブレット〉だけを使ってモンスターを討伐した。

 ダンジョンに潜れば少しは気分転換になるかと思ったが、ちまちました討伐は余計にストレスが溜まるだけだった。


 とりあえずこの日狩ったモンスターは、ギルドに納品しておいた。


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