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人形少女は魔王様依存症  作者: やまね みぎたこ


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勇者vs邪教の聖女

唐突に始まった勇者レクトと聖女アルスの戦いは戦いとは呼べない物だった。

レクトの相手を殺してしまわないようにと手心が加えられた神楽による攻撃はあっけないほど簡単に受け流され、さらに突如としてアルスの背後から現れた無数の黒い触手がレクトを打ちのめし、殴り飛ばす。

結果として負けることなど想定していなかった勇者が、無様に地面に転がされ、可憐な少女にしか見えないアルスが退屈そうな表情で髪をいじっているという状況になっていた。


「くっ…ぐはっ…」

「はぁ…神楽が使えてもその程度ですか?気持ち悪いだけでなくて力もない…あなた一体なんなんです?人の形をしていないのならまだ私も許せましたが、その姿でそこまで気持ちが悪いのは正しく生きる人に対しての侮辱です。速やかにその命を散らし終わらせなさい」


アルスの背後の触手が蠢き、立ち上がれないレクトに向かって一直線に向かっていく。


「させるかぁ!」


素早くアグスがレクトの前に身をさらし、巨大な斧で触手を薙ぎ払う。

しかし触手はその柔らかそうな見た目に反して、斬り傷一つつかず、そのぬらぬらとした表面が光を少し反射させ変わらず蠢いている。


「そこです!」

「あら?」


アグスが触手をけん制している間に背後に回っていたフリメラがその手に巨大な光の玉を出現させアルス目掛けて駆け抜けていく。

フリメラが手にしているのは彼女が得意としている光魔法…その中でも瞬間的な威力で見れば最大級の力を発揮する上級の魔法だ。

本来なら発動後は相手に投擲する魔法だがフリメラはそのまま直接アルスに叩きつけるという本来の用途とは違う使用を選択した。その理由は…。


「後ろにばかり気を取られるのはよくないぜぃ!」

「おやまぁ?」


アルスの意識が背後のフリメラに向いた瞬間、アグスが走り出し、斧を振りかぶっていた。

たった数年だが死線を潜り抜けてきた彼らは合図をしなくてもお互いのやること、やりたいことが手に取るようにわかる。ゆえにこの場面で確実にアルスを倒すために即座に行動にうつったのだ。

そしてその攻撃の結果は…。


フリメラからアグスにと視線を数度動かした後、アルスは優し気に微笑み、まるで二人を迎え入れるように両手を広げた。


「な!?」

「え!?」


二人は正直この攻撃が成功するとは思っていなかった。

仲間の中で一番強いレクトが手も足も出ずに打ちのめされたことからどちらか片方、もしくは両方共に対応されると確信していてあわよくば傷をつけれればいい、くらいに考えていたためアルスの予想外の行動にあっけに取られてしまう。

いつの間にか触手も姿を消しており、完全に無防備な姿を晒しているアルスに今さら止められない二人の攻撃が何の障害もなく吸い込まれていく。

巨大な斧がその身体の前面ををバッサリと切り裂き、光の玉が背面を焼いていく。


「あっは!…すてきぃ…」


胸元から腹に向かって切り裂かれ、大量の血をこぼし、背中は焼けただれ一部が消し飛び骨まで露になっていながらアルスは心からの笑顔を見せていた。


「な、なんだこいつ…」

「いったい何がしたいの…?」


アグスもフリメラも攻撃を仕掛けた側であるはずなのに、その行動がもたらした結果が心底不気味だった。

敵に致命的なダメージを与えられたのだから本来ならば喜ぶ場面であるはずなのに…あまりの不気味さに数歩後ずさる。


「あらぁ?どうかしましたか?」


ぼとぼとと大量の血が地面を朱く彩っていく。

よく見ると血の海の中には塊のようなものも浮いており、その傷の深さをうかがわせる。


「どうして…平気なの…」

「慣れてますから」


何でもないとばかりに言うアルスは本当に痛みを感じていないかのように平然としており、その顔は変わらず笑顔だ。


「あ!もしかしてこういうのはあんまり好みではないですか?それは配慮が足りませんでしたね」

「は…?」


ぱんと手を叩くと再び黒い触手が現れ、アルスの身体にまとわりついて行く。

ぐちゃぐちゃと何かをかき混ぜるような音と共に傷口から血が噴き出す…しかししばらくすると完全に傷は塞がり、切り裂かれた服の向こうからは真っ白な綺麗な肌が覗いていた。


「どうですか?この通り私はいつだって綺麗な身体に戻れます。だから好きに痛めつけていいんですよ?」


己の身体を見せつけるように腕を広げてゆっくりと回る。

何が言いたいのか、何が起こったのか、アグスとフリメラの頭では処理できずに何も言えなかった。


「そこのあなた様。私にはわかりますよ?あなたの中にある激しいまでの欲望…圧倒的なまでの暴力性!」


ゆっくりとアルスはアグスに近づいていく。

全てを与え許す、女神のような綺麗で美しい微笑みを浮かべながら。



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