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人形少女は魔王様依存症  作者: やまね みぎたこ


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涙と正体

明日は更新します。

よろしくお願いします。

 レイは私のドレスを握りしめて声をあげて泣いていた。


後悔なんて何度でもやり直して塗り替えればいい…それは生きているからこそ言えることで、死んでしまえば泣いたって終わりだ。


それが分かっているからこそ…こんなに悲しいのだ。


「こんなのばっかりだよ!私の人生…生まれ変わっても何も変わらなかった!ただ大好きな人と普通に暮らしたいだけなのに…後悔ばかりが積もっていって…気が付いたらどうにもならないところまで落ちちゃってる…どうして私ばかり…なんで…ねえなんでよ!!」

「…」


誰に向けられたわけでもないであろう慟哭をほんの少しでも受け止めたくて、レイを抱きしめる腕に少しだけ力を込める。


話を聞く限り、私とレイがこっちの世界に来た時期は途方もないほどに離れている。

もしも私がこの頼りのない身体で震える友達と同じところに転生していたのなら…彼女を救えたのだろうか。


考えても意味のない話だし、過去に戻れたとしても私は今を捨てることは出来ない。

だから身勝手で自分勝手な願いだけど…この子が笑える世界があってもいいじゃないかと思わずにはいられない。


「ねえリリちゃん」

「なぁに」


「ずっとここに居てよ。私と一緒にここで遊んでいようよ。喧嘩したっていい…私の事嫌いになってもいい。だからここに居てよ、お願いだから」

「…出来ないよ。そのお願いだけは聞けないよ」


私が一人だったのなら、それでもよかった。

不安定でいつ消えるかもわからないような世界だけど、それでも今の私たちなら最後のその時まで楽しく過ごせるだろう。


もしも私が自我を取り戻したばかりの時に誘いを受けたのなら…二つ返事で了承したかもしれない。


だけど今はもう…私一人じゃないから。

マオちゃんにリフィルにアマリリスを置いていくわけにはいかないから。


だからダメ。

それがたとえ、縋るように私にしがみつきながら涙を流す、大切な友達の願いだとしてもだ。


「…そうだよね、うん。そう言ってくれてよかった」


レイはゆっくりと顔をあげると、涙でぐしゃぐしゃになった顔で微笑んだ。

果たして私はそんな彼女に笑みを返せていたのだろうか。


「ごめんね」

「ううん、いいの。言ったでしょう?よかったって」


涙を拭って私から離れたレイは、そのまま私に向き直ると真面目な顔で私の手を取る。


「レイ?」

「私がここにリリちゃんを呼んだ理由…それはね一つだけお願いを聞いてほしいからなの」


それは先ほどのお願いとは違うのだろう。

さっきまでの泣き虫な少女の姿はそこにはなく、覚悟を決めたように前を見つめていた。


「私にできる事なら」


だから私もレイの瞳をまっすぐと見つめ返してそう言った。

何でも言って!って言えたらいいのだろうけど…出来ないことはできないし安請け合いは逆に失礼だ。


「お母さんを止めて」

「え…?」


レイのお母さん。

そう言われる自分物は二人ほどいるはずだが前世の母親の事を今持ち出すはずは無い。


死んでるしね。

ならばレイの言うお母さんとは…。


「こっちで育ててくれたって人だよね?」

「うん。私をちゃんと愛してくれた…大切なお母さん」


「止めるって?」

「お母さんはずっと「私」を集めてる。私の欠片を集めれば私が生き返るって信じてるの」


アルギナさんに渡された不思議な石を思い出す。

あれは砕け散ったレイ自身の欠片らしいけど…だがしかし、そういうことなら集めれば復活するんじゃ?と私も思わなくもない。


「無理だよ。あれはただの身体だもん。「私」はここに残っている分以外はとっくに消えちゃってる。死んでるんだよ?私」

「…そっか」


「出来上がった身体にはすでに新しい命が宿ってる。だから仮に私の魂がまだ残っていたって私として生き返るなんて絶対ない」


そうだ、私はすでにその子を知っている。

レイちゃん。

今は勇者くんと一緒にいたあの子は…もしかしたらそういう事なのかもしれない。


「でもさ…私も子供がいるからわかるけど…同じ状況なら私だって欠片を集めるよ。もしかしたら生き返るかもしれないって可能性があるのなら行動せずにはいられないよ。ただ石を集めることくらい好きにさせてあげたっていいんじゃ?」

「だめ…ダメなの」


止まっていたはずの涙が、再びレイの瞳に滲みだす。


「お母さんは…馬鹿な私のせいで今も苦しんでる。本当なら背負わなくていいはずの悲しみを背負って…好きな物も嫌いになって…もう一歩だって歩けないくらいボロボロなのに…止まってくれないの…!何度もうやめてって呼びかけても私の声はお母さんに届かない…全部私が悪いのに…お母さんは何も悪くないのに…あんな姿のお母さん…見てられないの…」

「レイ…」


レイはついにこらえきれなくなり、大粒の涙をこぼす。

大好きな母親がそんな事になっているのは自分のせいだと自らを責めながら。


でも私はレイのお母さんの事も理解できてしまう。

大切な娘がひどい目にあったのなら、何をしても娘を助けようとするのが親ではないだろうか。


私も…もちろんマオちゃんだって同じことをすると思う。

たとえそれが報われないものだとしても、私はそれを否定できない。


「それにお母さんは…私が生き返らないって分かったらきっと世界を終わらせちゃう」

「…え?」


「私のせいでお母さんは自分の世界の事が嫌いになってしまった。お母さんの持ってる私からずっと伝わってくるの…憎いって…こんな世界今すぐぐちゃぐちゃにしてやりたいって」


レイの母親は話に聞く限りそうとう強いみたいだけど…だとしても世界を終わらせるなんてことが可能なのだろうか?

そこまでの力を持った存在…?


「レイのお母さんって何者なの…?」

「私のお母さんは…この世界で最初の神様。この世界そのもの」


「まさか…原初の神…?」

「うん」


なんてこった。

まさかここに繋がってくるとは思わなかった。


ということは…今まで原初の神様関連であれこれ起きてたのは全部…レイのための行動だったって事…?

私はその人と直接会ったことは無いけど、コウちゃんやクチナシ、マオちゃんから話を聞く限りはなかなかの事をやっている。


それが全て…たった一人の娘のためなのだとすれば、それはもうとんでもない事だ。

それだけ…原初の神様はレイの事を愛していたんだ。

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