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人形少女は魔王様依存症  作者: やまね みぎたこ


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人形少女と後悔の涙

 それからもレイの話は続いた。

こっちの世界に来てからのたくさんの事を話してくれた。


なんというか…呪われてるんじゃないかというくらい内容の詰まった人生だったようで…。

人の赤ちゃんとして生まれ変わったのに早速捨てられたとか…神様に拾われただとか、そんでもってしまいには実験の材料にされて洗脳され、最後には解剖?されたとか…もう何と言えばいいか分からない。

レイの話が始まってから何も言えてない気がする。


「これで全部。私の二度目の人生はさ…結局そういう結末」

「うん…頑張ったんだね」


「頑張った…頑張ったのかな私。なんかよくわかんない」

「頑張ったよ。レイは頑張った。この私がレイは頑張ったんだぞ~って太鼓判圧しちゃう」


「あはは、やった~」


力無く笑うその横顔は少しだけ悲しげだった。


「ここにいる私は幽霊みたいなもの。いつ消えるか分からないし、そもそも本当に「私」なのかも断言できない。それでもこうしてまた友達と会えたのは…いい事だよね」

「もちろんだよ。私はさ、すっごく楽しかったよ」


「そっかそっか。いきなり連れてきちゃったからちょっとだけ悪いことしたかなって思ってたんだ。私もあなたを見つけてちょっと変なテンションになっちゃってさ」

「まぁそうだよねぇ~。こんな世界でまた出会える可能性なんてどんなもんよって感じだし。」


「うんうん。私たちさ、運命の赤い糸が繋がっているのかもね」

「それはない」


否定出来るところは否定していくスタイル。

残念ながら私の運命の赤い糸はすでにつながっている人がいるのだ。


「え~…つれないなぁ。もしかしていい人でもいるの?」

「子供までいますぅ~」


「嘘でしょ!?そんな不気味な人形の身体なのに…あ、人形同士って子供出来るの?」

「おい、ぶち殺されたいのかこらぁ~」


「いやだってさぁ…ん~じゃあほらリリちゃんも話してよ、こっちに来てからの事。私聞きたいな」

「いいよ」


ということで私もこっちに来てからの事を全部話した。

最初から全部だ。


人形として転生して召喚されてしまった事から操られて暴れまわっていたこと。

勇者くんのおかげで自由になったこと、少しして大切な人に出会った事…子供ができた事。

若干のろけ話も入ってしまったかもしれない。


「それでね」

「いや、もういいよ!落ち着こうリリちゃん」


「え?落ち着いてるつもりだけど」

「いやいや…あまりにのろけられすぎて胸焼けしてきたよ…砂糖を大量に胃にブチ込まれてる感覚だよ」


「え~?でもまだマオちゃんの話は2割もしてないよ?娘たちの事もしかり」

「なら10割されたら死んでしまうわ。もう死んでるけど」


納得いかないけど、ストップがかけられてしまったので話が終わってしまった。

もう少し語りたかったのに残念だ。


「まぁでも…リリちゃんも大変だったんだね。ごめんね、その身体の事いろいろ言っちゃって。リリちゃんの気持ちを考えられてなかった」

「大げさだなぁ。今はもう割り切れてるからいいよ」


「そっかそっかぁ~いい出会いがあったんだね」

「うん」


「私もね…いい出会いがあったんだよ。こっちに転生してきて…私を育ててくれたお母さん」

「うん」


レイがその「お母さん」を心から慕っていたのは話をきいていればわかる。

本当に大好きだったのだろうなという事が伝わってきた。

前世での母親に対する執着ではなく、ちゃんと愛されて、愛していたんだなとわかるから。


「なのになんでこうなっちゃったのかな」

「レイ…」


「あのさ、本当に意味のない馬鹿な話だけど」

「うん、いいよ話して」


「もしさ、前世で私が馬鹿な意地を張るのを止めて…前のお母さんの元を離れたとしたらさ色々変わっていたかな」


レイが始めた話は確かに意味のない馬鹿な話だった。

いまさら言ってもどうしようもない…もしかしての話。


「あの家を飛び出して…行く当てのない私をリリちゃんならどうした…?」

「無駄に家が広かったから月3万で部屋を貸してあげたよ」


「金取るのかよ~…でもそうだよね、リリちゃんなら口でぶつくさ言いながら私を拾ってくれるよね。きっと楽しかっただろうな~全然片づけないリリちゃんを怒りながら家の掃除をしてあげたり…ご飯作ってあげたりして…一緒に勉強したり、たまにはリリちゃんに文句言われながらゲーム触ってみたりさ」

「…それは楽しいかもね」


「でしょ?そしてリリちゃんが暴漢に刺されたって日は私がいたおかげで助かるの。二人で暴漢をとっ捕まえて…もしかしたら表彰されたりしたかも!」

「危ないよ…」


レイの話は妄想だ。

実際はもっと苦労もあるだろうし、うまく行かない事だって無数にあるはずだ。

だけど…それでもきっと…その話の通りになっていたのなら…私もきっと楽しかったのだろうな。

そう思うと少しだけ…胸が苦しくなった。


「もう私の人生そんな後悔ばっかだ。こっちにきても馬鹿みたいな意地張っちゃってさ…正直に嫌な事は嫌だって…お母さんとただずっと一緒にいたいって伝えられれば…こんなことにならなかったかもしれないのに…」


レイの声はだんだんと震えていき、ついには嗚咽交じりに涙を流し出した。


「もう…何もできない…私…どれだけ後悔しても…もう何もできなくなっちゃったんだよ…!なんで…ただ私は…」


こぼれる涙を拭ってあげたところで止められるわけじゃない。

なにか言葉をかけてあげたところで慰めになるはずもない。


だから私は黙ってレイの震える身体をなるべく優しく抱きしめた。

もしかしたら硬くて居心地が悪いかもしれないけど…何もしないよりはましだと思ったから。

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