人形少女は探しに行く
「じゃあ私、魔界に行ってくるから」
機嫌が直ったマオちゃんは軽く身支度をした後にそんな事を言った。
「ん。ついて行こうか?」
「ううん、大丈夫」
「ほんとに?」
「ほんとほんと。さくっと残りを掃除してくるよ」
まるで本当に掃除でもしてくると言わんばかりの軽い感じでマオちゃんは言ってるけど…。
「聞いてなかったけどどうしてマオちゃんは魔族を殺したいの?」
「ん~…まぁもういいか。まず一つは原初の神様の計画を崩したいから」
「ほほう?」
「魔族をみんな殺せば今の魔族が持ってるであろう変な欠片は私に集まってくる。そういう風に私は作られてるからね」
「でもそれって逆に計画通りになっちゃてるんじゃ?」
しかもマオちゃんに回収された欠片を取り出すにはマオちゃんが死なないといけないわけで…それはかなり困る。
「大丈夫だよ。ほら」
マオちゃんが掌を上に向けるとそこにふわふわとこぶし大の石のようなものが浮いていた。
どうやらそれが神様の探している欠片のようだけど…。
「それどうしたの?」
「リリには言ってなかったけど皇帝さんに色々協力してもらってたの。それでこうして私の身体の外に欠片を全部吐きだせるようになったから全部そろった段階で神様を相手に脅すか…皇帝さんに壊してもらうかするつもり」
「ほぇ~いつの間に」
「皇帝さんが言葉を話せるようになってすぐくらいだね。黙っててごめんね。リリには色々と知られたくなかったからさ」
「いやそれはいいけど」
「そっか。それで理由のもう一つが皇帝さんとの約束。協力してもらう代わりに…魔族を抑えるってことになってたの」
なるほど。
いつの間にかコウちゃんとも仲良くなってたのか~…むむっ、なんだかちょっと嫉妬心が。
「あれ?でもコウちゃんも原初の神様を倒したいとか言ってたし約束なんかしなくても目的は一緒なんじゃ?」
「ううん。皇帝さんはわざわざそんなめんどくさい事せずに私ごと私の中の欠片を砕けばいいんだよ。それをしない代わりの約束って事…幻滅した?」
「してないけど…?」
どこに幻滅する要素が?
「自分の身可愛さに魔族を売った酷い女だとは思わない?」
「あ~…」
言われてみればそうだよね。
マオちゃんは魔族を束ねる魔王でありながら人世界の皇帝であるコウちゃんと取引をしたのだ。
自分の安全と引き換えに魔族を滅ぼす…それはなかなかに悪女と言える行動なのかもしれない。
「…ま、もう疑わないけどね。リリはそれでも私の味方だよね」
「うん」
即答である。
ぶっちゃけ魔族どうでもいいしね!マオちゃんの命と魔族皆の命…天秤にかけるまでもなく私の中ではマオちゃんの命のほうが重い。
「じゃあ最後に三つ目。これが一番の理由なんだけど」
「うん」
「普通に私怨かな。今までの恨み」
「おおう」
にっこりとした笑顔を浮かべるマオちゃんだったが…表情とは裏腹にすっごく怖かった。
「正直私としても魔族はもう滅ぶべきだと思ってる。魔族はどこか…そう本能のような部分で他の誰かを傷つけて生きるようになってる。このままじゃいずれまた魔王のような存在が魔族たちによって作り出される。だから最後の魔王になると誓った手前ちゃんと後始末はしないとね」
そう言われてしまえば私はもう送り出すしかないわけで…ちょっとでも落ち着いてくれたらいいなとマオちゃんを軽く抱きしめた。
「…身勝手な理由でたくさんの命を奪うんだ。きっと碌な死にかたしないよね私」
「そうかもね。でもほら、どんな死に方しても絶対に一緒だから」
「そこはね、「死なせないよ」くらい言ってほしい気持ちだよ私は」
「死なせないよ」
「遅い」
「…ごめんなさい」
怒ったかな?と思ったけどマオちゃんは楽しそうに笑いながら私の胸に顔をすりすりとしていたので多分機嫌はいいはず。
やがて私から離れるとマオちゃんは今度こそ行ってきますと魔界に行ってしまった。
「ん~暇だなぁ」
娘たちはマオちゃんが心配であまり寝られなかったらしく、無事だと分かった今はぐっすりと眠っている。
コウちゃんたちもいつの間にかいなくなってるしクチナシも姿が見えない。
ひとりぼっちで寂しい…。
どこかに出かけようかな?と言っても当てはないし…。
とそこで私は微妙に気になっていたことを思い出した。
「そういえばメイラ全然帰ってこないな」
もうしばらくメイラの姿を見ていない気がする。
なにか問題でも起こっているのだろうか?ちょっと様子見てこようかな?
といってもどこに行ったのか分からないんだよね~悪魔ちゃんたちとか知らないだろうか?
「なんか家に帰るとか言ってたっすよ」
「家?」
聞いてみたところメイラはそんな事を言っていたらしい。
家ってここでは?…いやもしかして神都のほうかな?
「じゃあ暇だしちょっと行ってきますか」
というかメイラよ。
私には行き場所を言っていないのに悪魔ちゃんには伝えてたのか。
実は仲が良かったりするのだろうか?良く分からん。
何はともあれ私はそのまま神都まで向かうことにしたのだった。




