テニスコートはどこにある…
《キーンコーンカーンコーン》
やっと授業が終わったか~、よし、揚羽のとこに行くか!!
俺は揚羽のいる2組の前まで行った。
「お~い揚羽ー!」
俺が声をかけると、揚羽は恥ずかしそうにこっちにきた。
「ち、ちょっと声大きい。恥ずかしいよ…」
「今日は18:00からテニスコート借りてるから、テニスしにいこーぜ!」
「借りるって…学校のコートじゃダメなの?」
「学校のコートには決して近づかないほうがいい!あそこは魔女の巣窟だ。生半可な気持ちで行くと、逆に喰われるぞ!」
「ひぃぃ、僕たちこの前のテニスの授業で入ってたけど大丈夫なの?」
「あれは先生のおかげって、冗談だよ!ほんとは男子ソフトテニス部がないから、あのコートは女子専用のコートになってるんだ」
「えーー!!男子ソフトテニス部はないの??じゃぁどうやって活動していくのさ!!」
「それを今考えてんだよ……で、今日は仕方なくテニスコートを借りました!!」
「夏ノ希くん、テニスコート借りるのもお金かかるんじゃ…」
「まぁ、かかるっちゃかかるけど、そんなお金は心配すんなよ!俺、週2でゴルフ場の球拾いのバイトしてんだ。だから、高校生にしては金持ってるほうだと思うぜ」
「そんな、僕、助けてもらってばっかりだよ」
「気にすんなって!テニスコートまでちょっと遠いから早くいくぞ!」
「う、うん」
俺は揚羽を連れて借りているテニスコートへと向かった。
「ねぇ、結構値段してない?」
「まぁな。ここは定期券外だし、値段もまあまあするしな。毎回借りれるわけじゃない。だから俺らのホームとなるコートを作ろう!」
「夏ノ希くんって、無茶なことばっかりいうね!」
なんだか揚羽がうれしそうに笑っていた。揚羽もよく笑うようになったな…
「無茶でもないぞ!良い情報を耳に入れたんだ!この話はまた後でしてやるよ!さっそくテニスしよーぜ!」
俺は揚羽と共にテニスコートに入った。俺はこの日のためにラケットを2本持ってきていた。
「はい、ラケット一本かしてやるよ!」
「ありがとう。次からは僕もラケット持ってくるよ」
「そうか!記憶無くなる前はソフトテニスしてたんだったな!」
「うん、でも握り方わかんないや!」
「おいおい、俺のサーブをリターンしただろ!?」
「あれは体が勝手に反応して…」
「体が反応って、すげぇな揚羽!」
それから俺は揚羽にラケットの握り方やボールの打ち方などを教えた。
記憶が無くなる前にソフトテニスをしてただけあって、呑み込みがおそろしく早かった。
すげぇ…もぉ俺とラリーすることができてる。揚羽がこんなにうまいなんて思いもしなかった。それに、毎日練習したら高大商業だって、土蜘蛛だって夢じゃない。勝てる…勝てる!!
「揚羽!おまえすごいよ!正直、俺なんかよりずっと上手いよ。久しぶりにテニスしたんだろ!?それでこんなに打てたら充分すごいよ」
「そ、そんなに褒められたら照れるよ…お世辞もほどほどにしてよね…」
「いや、本気で思ってるよ!ちょっと嫉妬もしてるぐらいだ…」
「あ、ありがとう…」
夕日のせいか、揚羽の頬は赤く染まっていた。
それから俺たちは時間を忘れてボールを打ち続けた。
気がつくと、空はすっかり暗くなっていた。
たくさん動いて疲れているはずなのに、揚羽は嬉しそうだった。
「揚羽うれしそうだな。楽しかったか!?」
「うん、本当に楽しかった」
「こんなんじゃ、記憶とかは戻らないか…?」
「わかんない。何も思い出せないし…」
「そうか…まぁいつか記憶が戻ればいいな!」
「ありがとう。でも、どうするのこれから先…毎日こんな遠くまできてちゃ、お金も大変だよ」
「ふっふっふっ、実はだな、さっき言ってた良い情報というのは、学校から30分ほど歩いたところにナイター設備がついているテニスコートがあるとネット検索ででてきたんだ!!」
「へ?じゃあ今日そっちに行けばよかったじゃん!」
俺は揚羽に図星を突かれ、恥ずかしくなった。
「今日見つけたの!!この情報は!!このマップを見る限り穴場だぜ。この周辺は住んでる人も少ないらしいからな。もしかしたら貸切かもしれない。明日、学校おわったらいこーぜ」
「ふふ、夏ノ希くんってテニス馬鹿だね」
「おい!馬鹿にしてんのか!?」
「してないよ」
揚羽は俺をみてニコニコしていた。
「でも、夏ノ希くん…まずは顧問を見つけなきゃだね!そうしないと大会にも出られないよ…」
「そーだよなぁ」
俺はあれから、いろんな先生に頼んではいるものの断られ続けている。どうしたらいいんだ…
「揚羽も、いけそうな先生がいたら声かけてくれよ!とりあえず今日はありがとな!帰ったらしっかり疲れとれよ!明日もあるんだからな!」
「うん!ありがと夏ノ希くん!」
テニスコートと顧問…
まだまだしなきゃいけないことだらけだ…