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ファイナルゲーム  作者: とつにき
3/7

ものすごく強いやつがいる…

昨日はせっかくの入学式だったのに最悪だったなぁ…特にソフトテニス部がなかった件については最悪だよ…


でも、俺は諦めたわけじゃない。部員を集めて、顧問を見つけて、ソフトテニス部を作ってやる!!そんでもって土蜘蛛を…


そのために、まずは友達作りからだ!!


俺は新たな高校生活に胸を躍らせながら教室に入っていった。


「きゃー変態!!」


なんだか聞き覚えのあるセリフが聞こえる。俺は恐る恐る教室を見渡すと、1人の女の子が俺に指を差していた。


女の子の声とともに、クラスのみんなの視線は俺の方に向いていた。俺はこの時、背中に一滴の汗が流れるのを感じた。


「ごめん!誤解だ。俺はなにもしてない。本当だ!許してくれ!」


俺は、とりあえず、謝らなければいけないと思い、謝ってしまった。


すると、指を差していた女の子がクスクスと笑い、こちらに近づいてきた。


「ねぇ、女子ソフトテニス部の部室覗いたんでしょ。美柑(みかん)くん♡」


「な、なんで俺の名前を!!?」


(あおい)先輩に聞いちゃった♡いろいろと♡」


「あのおんなぁぁ。。」


「落ちてた下着見て、勃起してたって聞いたよ♡」


こいつ何言ってやがんだ。俺は女の発言に顔を赤らめてしまった。


「あ、あの女が言ってたのか!!」


「あの女って言っちゃダメ!!葵先輩って呼びなさい!」


「そんなことはどうでもいい!!あいつがそんな変なこと言ってたのか!?一応言うけど、俺は勃起なんかしてないからなあぁぁぁ!!!」


俺はつい大きい声が出てしまった。


クラスのみんなは俺の方を見ていたのだが、関わりを持ちたくないのか目を逸らし始めた。


はぁ…おれの高校生活、出会って5秒で終わったんだ…あぁ…異世界転生したいよ。グスンッ


「くすっ、全部冗談に決まってんじゃん♡葵先輩はそんなこと言ってないよ!全部あたしの冗談!!」


・・・・・・・


「なんだとぉ!お前、俺をはめやがったなぁ!!」


「ごめんごめん!だって、からかいやすかったんだもん」


「このガキが!許せん!!」


「もぉ〜ごめんって言ってるでしょ(笑)女の嘘を許すのが男の子でしょ??」


「こんな時に限って女ってのは女の特権を主張するから嫌なんだよなぁ」


「その女って呼ぶのやめてよね。瑠衣(るい)!!今日から同じクラスになる早乙女瑠衣(さおとめるい)だよ!葵先輩って言ってるから気づいたと思うけど、女子ソフトテニス部なんだ!よろしくね美柑くん」


こうして俺の高校生活は最悪なスタートを迎えた。


クラスメイトの俺への誤解は早乙女が解いてくれたが、次の日から、クラスメイトは俺の事を「エロ美柑」と呼び始めた。


あの女のおかげでクラスには馴染めたが、酷いあだ名がつけられた。まあ女子ソフトテニス部にはロクな奴がいないことはわかったよ。




それから数日が経った。



俺は職員室の前まで来ていた。


職員室の前には、西園寺高校の部活動が残してきたトロフィーなどが並べられていた。


俺はその中で1番でかいトロフィーに目が止まった。


そこには【男子ソフトテニス インターハイ予選  優勝  柏木(かしわぎ) 美月(みづき)  霊山寺(れいざんじ) 把瑠都(はると)】と記されていた。


すげぇ。5年前の先輩たちだ。5年前でも高大商業の1強って言われてたのに、そんな高大商業を抑えるなんて…すごいな。柏木さんに霊山寺さん、いつか会ってみたいな。


俺は5年前の先輩の成績に感心していた。


あ、そうだ、こんな事をしてる場合じゃない。俺は顧問になってくれそうな先生を探しにきたんだ。


俺は職員室のドアを少し開け、ドアの隙間から顧問になってくれそうな先生を探した。


しばらくコソコソ覗いていると、後ろから俺の方に向かってくる足音が聞こえた。


「ワッ!!」


「うわ!なんだよ。早乙女(さおとめ)かよ。びっくりさせんなよ」


「そりゃ怪しいことしてたら、びっくりさせたくなるでしょ!なんたって覗き魔だしね〜」


早乙女はニヤニヤしながら俺の方を見た。


早乙女も葵先輩も顔はかわいいのになんでこんな可愛げがないんだ。


あ、そうだ!女子ソフトテニス部のこいつに聞くのもアリか。


「なぁ、男子ソフトテニス部の顧問になってくれそう先生をさがしてるだが、心当たりはないか?」


「ん〜わからないけど、5年前は男子ソフトテニス部はあったんだから、その時、顧問してた先生とかはいないのかなぁ!?」


「おお!早乙女にしてはいい考えじゃないか!」


「ん?早乙女にしては!?まだ出会って数日しか経ってないのに、私への評価低くない?」


俺はそんな早乙女の言葉は無視して、廊下で先生にすれ違うたびに「ソフトテニスとか好きじゃないですか!?」と軽い質問をし始めた。


先生も顧問してくださいなんて言われたら、めんどくさくて断るだろうから、まずは軽い雰囲気でソフトテニスを好きか聞き、そこから顧問になってくれそうな先生を探そう。あわよくば、5年前に顧問をしてた先生を見つけ、その先生に顧問をしてもらおう。



先生の周りでは、ソフトテニスを好きかどうか聞いてくる生徒がいると話題になり、知らぬ間に俺はテニスボーイと先生たちに呼ばれるようになっていた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



はぁ…ソフトテニス好きそうな先生がいねぇ…

どうしたらいいんだ。もし見つけたところで、部員1人のソフトテニス部なんてできるわけがない。やばい!こんなことしてたら、おれの高校生活すぐおわっちまう。




《キーンコーンカーンコーン》



あ、やべぇ次の授業に遅れる。そういうや次は体育か…

俺は体操服に着替えて体育館に向かった。





体育館に着くと、3年生が体育館を使用していた。



『あ、ごめんごめん。これは、先生のミスだわ。今日、体育館3年生が使うの忘れてたわ。どーしよ。ん〜、そーだ!いまからテニスコートにいってソフトテニスをしよう!』


っておいおい、そんなのありかよ。あそこのコート男子禁制って書いてあるの知らないのかよ。まぁいいか。先生が言うんだし。


先生のミスで急遽ソフトテニスの授業になってしまったが、俺は内心嬉しかった。


西園寺高校の体育の授業は男子と女子が分かれて授業を受けるため、授業の効率化を図り、体育の授業は2つのクラスが合同になって受けることになっていた。


先生は体育倉庫からボロいラケットとボールを持ってきた。


『先生はソフトテニスやったことかいんだよな〜、この中にソフトテニスしてた奴とかはいるか〜』


先生が発言すると、クラスメイトの1人がコソコソと俺に方に寄ってきて、「エロ美柑!いけよ!いいとこ見せてくれよ」と耳元で囁いてきた。


まぁ人前に立つのはそれほど嫌じゃないので、俺は手を上げ、先生の前まで行った。


『おぉ、テニスボーイじゃないか!じゃぁこのテニスボーイにいまからサーブの手本を見せてもらうので、もう1人レシーブを打ってもらおうか』


おいおい、テニスボーイってあだ名はいつの間についたんだ!?てか、初心者に俺のサーブは打ち返せねーぞ。まぁ軽く打ってやるか…


『1組からはテニスボーイこと夏ノ希くんがサーブを打ってもらうから、2組から1人レシーブをしてもらおうか。そーだなぁ、じゃぁ、(なつのき)ノ希くんと同じナ行からはじまる長崎揚羽(ながさきあげは)!』


『えっ、先生、僕ですか!?ソフトテニスなんてした事ないですよ!!」


『まあまぁ、立ってるだけでいいから、あのテニスボーイのサーブを手本としてみんなに見せるためだけでいいから♪」


「わかりました」


なんかいかにも初心者っぽい奴がきたな。大人しそうな奴だし軽く打ってやるか。


「先生、もぉ打っていいんですか!?」


『いいぞ!!お手本だから、手加減なんていらないぞ!』


先生が言うんなら…1発本気で打ってみんなを驚かしてやろうかな。あいつら全員[美柑さま]と崇めるようないいサーブを打ってやろうか…なんか考えただけでもニヤケが止まらなくなってきたぜ。


俺はボールを上にあげ、大きく腕を振りかざし、長崎(ながさき)がいるコートに向かってボールを打った。


どーせ初心者には返せないだろうと思い、打った瞬間から後ろを向き、ラケットを上に向けてカッコつけていた。


すると、俺の打撃音以外にも「パァン」と別の打撃音が聞こえた。


気がつくと、ボールは俺のコートを一直線に駆け抜けていった。


「えっ、はっ、え?」


俺は後ろを向いていたせいでなにが起きていたか分からなかった。ただ、リターンエースを決められたという事実だけは理解できた。


「はっはっはっ!!美柑ダサッ!!」


クラスメイトの笑い声が飛び交っていた。


「ちょっとまてぇぇぇ、長崎…おまえ、初心じゃないのか!?」


「え?初心者だよ。でも、ボールがきたから打ち返しただけだけど」


もぉ俺には長崎の声が煽りにしか聞こえなかった。


「先生、もぉ一本いいですか!?本気でやるんで」


『いいぞ!じゃぁもう一本頼むわ!長崎』


「はい!」


「おい美柑!ほんとは本気だったんだろ!?恥かく前にやめとけって」


クラスメイトの野次が飛んできた。


はいはい。そうですよ。本気でしたよ。皆さんの仰る通り本気でしたよ。でもね、こいつのまぐれも暴かねえと気がすまねぇんですわ。今度はあいつから目を離さねぇ。


「おいお前ら!次、こいつからサービスエースとったら美柑さまと呼べよ」


「うわ…初心者にやられてムキになってるよ。美柑くん恥し…」


「うるせぇ、見てろよ!」


俺は自分の持てる力を振り絞ってもう一度サーブを打った。


すると、長崎は明らかにソフトテニスを経験したことがあるような動きで、俺のサーブをコートの際どい所に打ち返した。


俺はそのリターンを返すことはできなかった。


気がつけば、クラスメイトの笑い声が飛び交っていた。


そして、その日から俺には、新しく[ダサ美柑]というあだ名がついた。


「おいおまえら、このことは早乙女には絶対言うなよ!!!」


クラスメイトのみんなはニヤニヤしながら口を揃えて答えた。


「どーしよっかなぁーーーー」


「許してください。なんでもしますから」


「ん?今、なんでもするって言ったよね?」



・・・・・・・・・・・・・・


クラスメイトとの楽しい会話も終わり、体育の授業が終わった。


着替えて教室に戻ると、早乙女(さおとめ)がニヤニヤしながら俺の方まで近づいてきて、「ダサ美柑くん」と耳元で囁いた。


「お前ら!!1時間もたってねぇのにすぐバラしやがったな!!」


「ばらさねぇーわけねぇーじゃん」


「許せん!!」


今日の体育での出来事は、俺の恥ずかしい記憶となった。そして、その出来事は、教室の中を笑い声で包んでいった。





こんな青春を送りたかった。





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