僕は僕の偽物。
この作品は「なろうラジオ大賞2」の参加作品です。
千文字と超短いのはルールなのですごめんなさい(><)ノ
ちょっと残酷シーン有ります。苦手な方はご注意ください。
「実は俺、俺の偽物だった」
僕(伊藤ハジメ)と、友人2人(鈴木カノンと山田サトル)のいつもの3人組でリモート飲み会をしていると、山田が妙な事を言いだした。
「ナイスジョーク」と僕。
「そっか。で、宇宙人? それとも異世界人?」こちらはカノン。
僕とカノンは冗談と受け取り、笑い飛ばす。
しかし、山田は声を抑えたまま話を続ける。
「昨日思い出したんだ。俺は『山田サトル』という人間を殺して入れ替わった別人だって」
何の告白だ。
そもそも、山田という男はあまり冗談をいう人物ではない。
珍しく、作り話で僕達を楽しませるというのか。
それとも。
僕とカノンは、無言で山田に次を促す。
「お前らも俺と同じだけどな」
「……どういうこと?」
カノンの美しい眉がひそめられた。
「ていうか、山田がどうか知らないけど、アタシは自分が『鈴木カノン』だという記憶があるし、あんたたち2人が『山田サトル』と『伊藤ハジメ』だって記憶もしっかりあるんだけど」
カノンが冷静に反論する。
僕も同意の意を示す。
山田は「俺にもあったけど、」と続ける。
「今日、リモート飲み会をしようと言い出したのは俺なんだけど、素面でこの話をする勇気がなかったからなんだ。今やっと勇気が出たから。2人に、」
喉がつっかえたのか、山田は缶ハイボールをグビッと飲み込んだ。
「2人に話す。まず1番。俺達の記憶は偽の記憶に置き換わっている。2番、俺達3人は元々、犯罪者仲間だ。3番、俺も全てを思い出した訳ではないが『キーワード』は思い出した。これを聞けば、お前ら2人も真実を思い出す『夢』を視るはずだ」
やはり、ジョークだろう。
ナイスジョーク、山田。
「ふ、ふーん。なら、そのキーワードとやらを教えなさいよ」
「キーワードは『山小屋』だ。よし、ここまで。今日はありがとう」
また突然に、山田が接続を切った。
残された2人。
「今日の山田は一体、何だったのかしらね」
「うーん、何かドッキリを仕掛けようとしてるのかも」
しばらく無言でいたが、今日の飲み会はここでお開きとなった。
その夜、僕は夢を見た。
僕らは3人で、白い山小屋にいた。
目の前には目隠しと後ろ手にされた、こちらも男女3人。
僕らは、この3人の戸籍を奪う計画を相談している。
僕と山田は深く穴を掘った。
次にスコップで散々殴りつける。
白い壁に赤い飛沫が飛ぶ。
穴に放り込み土を被せた。
そして、互いに暗示を掛け合う。
自分が『伊藤ハジメ』だと。
僕は僕の偽物だった。
最後までお読みくださりありがとうございます。
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