文様を施した戦士
「続・命を継ぐ者の旅」第21部、大岩、の後にあったお話です・・・。
自分は鳥族、名をルウという。昨年秋、ユミル国境偵察隊の連絡係として雇われ、敵の侵攻を伝えるべく飛び立ったところ、矢で撃ち落とされた。木の上に墜落して衝撃で気を失っていたが、轟音とまぶしい光で意識が戻った。
今、その時の様子を知りたがっている若い女に誘われ、酒をご馳走になっている・・・。
「作戦上の秘密はしゃべれないぜ」
「それでいいわ、戦い事体には興味がないのよ」
女にそう言われ、俺は話を始めた・・・。
「目を覚ますと、白い少女と巨大戦士の姿が見えた。そいつが大きな腕を一振り、二振りすると、それだけで敵が崩れていく。その後、敵兵が巨大戦士を砲撃した」
それで? と女は先を急がせる。
「爆発の煙で暫く何も見えなかったが、煙の中から無傷の少女と巨大戦士が現れ、また大きな腕を振り続けた。今度は背後からも影が伸びて、山の中や街道脇の茂みに伸びていった。おそらく斥候か何かいたのだろうと思う」
自分は、見た光景を思い出しながら、話をつづけた。
「後は、その戦士が逃げる敵を追いかけ、敵兵が崩れる、の繰り返しだった。何人かは国境向こうに逃げたかもしれない。でもあっという間に決着がついて、数百人の敵兵は動かなくなった・・・」
女は、沈黙を続けたままだ。
「しばらくすると、敵兵は静かに起き上がった。そして、元来た道を全員引き返していった。青白い、生気が抜けた様な顔だった・・・」
そこで、酒をあおると一息ついて言葉を続ける。
「戦士と少女はいつの間にか消えていた。自分は、その後、急ぎ村に降りて救援を呼んだ。そういえばあいつ、体には奇妙な文様が描かれているようだった。装束の隙間からしか見てないが、幾何学模様といったらいいのか? 雰囲気は、戦士というより術師に近かった・・・」
女はその言葉を聞いて、俺にある絵を見せた。
「ねえ、その戦士の文様は、こんな形じゃなかったかしら・・・?」
・・・・・・・・・
こちらは、商都バーキルのとある好事家の屋敷。伝手を使って、若い女性が、その好事家に見せてもらったものは・・・、
「これは、トゥルクで龍の骨が発見された時、周りを囲むようにこれと同じものが四体埋められていたそうだ。本物は、もちろん宮殿の宝物殿だ。これは、その複製だよ・・・」
それは、体中に不思議な文様を施され膝を抱えて座る戦士の土偶だった。
間違いないわ、あの屋敷には龍が眠っている!
若い女は、それを見て笑みを浮かべながら呟いた・・・。