シュマさん(龍への憧れ)
私、ユミル王国グラナート家の長女ユルシュマーリと申します。通称シュマです。15歳になりました。小さい頃から虫が大好きで、虫を使った悪戯で弟を泣かせたこともあります。
10歳になって、商都バーキルの貴族子弟向け学校に入学しました。でも入学早々、ここに通う貴族の子弟とは考えが合わないことを肌で感じます。それと同時に、この人達の世界に合わせないと、私は貴族として生きていけない、と人生の虚しさを痛感しました。
その年の夏の休暇中の出来事でした。私は、屋敷近くの森の中で龍の牙らしきものを見つけます。その後、休みの度に森を発掘し、ついに龍の全身が揃った骨を発見します。
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「ねえ、見て! こ、これって・・・!」
「ええ、お嬢様。これは龍に間違いありません! やりましたね!」
泥だらけになって、森中を這いずり回り、掘り返すこと約三年。両親や兄弟はおろか、学校の先生や学友からも完全に変人扱いされました。それでもあきらめず龍の姿を追い求めた私に、神々はついに応えてくださった・・・。
お父様に誇らしげに報告すると、最初疑っていたお父様も実物を見て仰天! 宮殿に報告があがり、宰相様がわざわざ足を運んでくださいました。龍の骨は丁寧に運ばれ、今は宮殿の宝物庫に保管されているとか。宰相様が、私のことを大層褒めてくださったことが今でも自慢です。
それ以来、私は、龍のように何者にも縛られない存在に憧れるようになりました。
昨年の秋、私はお父様と一緒に宮殿に呼ばれました。お話は、とある国の貴族との婚約の打診です。私はただ、お任せします、とだけ答えました。
そして、今春、私は龍が出現したという学校の話を偶然耳にします。いてもたってもいられなくなり、数か月でもいいから通わせてくれと、お父様に懇願します。最初は渋っていたものの、私が婚約破棄をほのめかすと渋々宰相様に掛け合ってくださいました。
おかげで私は、新しい学校でラシル先生とアムル先生に出会い、気さくな友達に囲まれ今までになかった楽しい生活を送ることが出来ました。でも突然、婚約先からお呼び出しを受けます。
何でも、関係がぎくしゃくしていた国同士の婚約なので慎重を期すため顔合わせしたい、とのこと。私は、貴重な学生生活の時間が減らされて、泣く泣く先方へ出向いたのでした。
巫女衣装の進行具合を気にしつつ、パルバク王国に出かけるシュマさん。次回、シュマさん(縁結び)、です。