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ラシル昔話(蜘蛛の恩返し)

昔話の二次創作となります。「続・命を継ぐ(ラシル)の旅」第13部の背景です・・・。

昔々、ある所におじいさんとおばあさんが住んでいました。

二人は、近くの村から蚕の(まゆ)を取り寄せ、おじいさんが糸を作り、おばあさんは、その糸を使って機織りをして暮らしていました。


二人共、糸を扱う仕事をしているので、同じく糸を出す蜘蛛をとても大事にしています。家の中に迷い込んだ蜘蛛を見つけると、「お外はあちら、お外はあちら」と言いながら、優しく蜘蛛を家の外に出してあげます。


すると、蜘蛛は、まるでお礼を言うかのように、ぴょんぴょん跳ねながら外へ出ていくのが常でした。


ある日のことです。婚礼用の衣装に使うから糸と織物を急いで作って欲しい、と村から頼まれました。二人は、「ああ、めでたいことじゃ!」 と言い喜んでその頼みを引き受けます。


次の日から、二人は、朝早くから夜遅くまで仕事を続けます。

おじいさんは、楽しそうに唄いながら糸を引き()り、糸車を回します。

おばあさんは、パッタン、トントン、と小気味よく機を織っていきます。


ところがある朝、二人が目を覚ますと、昨日より多くの糸が出来、機織りが(はかど)っています。


「おじいいさんや、あんた機織りを手伝ってくださったか?」

「いやいや、おばあさんこそ糸作りを手伝ってくれたか?」

二人は、お互い手伝ってもおらぬのに不思議なことじゃ、と顔を見合わせます。


次の日も、その次の日も、朝になると、同じように昨日より多く仕上がっています。そこで二人は相談をし、夜中寝たふりをして仕事場を(のぞ)くことにしました。


そして真夜中、二人は目を閉じたまま仕事場の様子に耳を傾けます。

すると、楽しそうな笑い声と、カランカラン、パッタントントン、という音が聞こえてきます。二人は、そっと起き上がろうとしますが、体がどうしても動きません。


「お、おじいさん、体が動かなくて起きられぬ。代わりに見に行って下さらんか?」

「お、おばあさん、わしも縛られておるようで動けぬ。困ったことじゃ・・・」

二人は動くことが出来ず、ついそのまま眠ってしまいました。


翌朝、二人が目を覚ますと、今度は無事起き上がれます。その時、はらりはらり、と二人の体から蜘蛛の糸が()がれます。急いで仕事場に入ると、糸と織物はすっかり出来上がっていました。


二人は辺りを見回します。すると、ちょうど部屋から沢山の蜘蛛が出ていくところです。


「やれ、お外はあちら、お外はあちら!」


二人は、顔見合わせ楽しそうに笑い、蜘蛛が出ていくのをいつまでも見送りました。



今回、二人が作った婚礼衣装用の糸と織物は、美しい風合いと光沢を帯び、さらにとても丈夫だったとか。おかげで、村人から大層喜ばれたということです・・・。 (終わり)



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