平穏な日々
「続・命を継ぐ者 (ラシル) の旅」 第10部~11部頃、シュマさん入学後のお話です。
俺は、元護衛隊長。今は、訓練校の警備員兼闘術教師をしている。元々巡礼一行の護衛隊を率いていたが、ひょんなことから龍巫女さんのいるトゥルクの訓練校で働くことになった。しかし、闘術とはいっても、子供に教えるにはまだ早い。どちらかと言えば基礎訓練が主だ。
剣を取ったら、俺も若いものに負けない自信はあるが、相手はなんせ子供だ。まあ、うるさいことこの上ない。やれ疲れただの、足が痛いのだの、まったく! 俺達の若い頃は・・・おっと、これは禁句だ。
だが、そんな中にも逸材はいる。まず、ミサトと言ったかな・・・? 基礎がすっかり出来上がって、さらに鍛えれば強くなること間違いなしだが、いかんせん女の子だ。
ユミルでは、かなり昔に伝説の女将軍がいたらしいが、今の軍に女の活躍する場があるのか?まあ、俺には関係ないな。戦いからは足を洗ったし、全く平穏な日々そのものだ。
「よ~し、行進終わり。次は、剣の練習だぞ!」
今は、授業中。生徒達は、広場を3周行進して、これから模擬剣を使って戦い方の基礎訓練だ。
皆、まだまだ剣を持つ手がおぼつかない。
「次は、順番に剣を打ち込んで来い・・」
自分が、受けになって生徒に打たせていく・・・。
・・・・・・・・・
基礎訓練が終わると、少し上級者向けの訓練も必要だ。
「ミサトとタマキ、前に来て剣舞をしなさい。他の生徒は見ているように」
二人は、おもむろに模擬刀を使って剣舞を始めた。ミサトは、打ち込みが鋭く、狙いが的確だ。
しかし、さらに驚いたのはタマキの動きだ。ことごと先読みして相手の上をいく動きを見せる。ふだんからは想像もできない動きだ。ああ、この二人のうち、せめてどちらかでも男の子だったら・・・。
「よし、止め!二人ともいい動きだった。じゃあ、次はシュマ、前へ!」
そして、本命のお出ましだ。剣を構えただけで、俺でさえ身が引き締まる。剣舞に至っては滑らかな動き、そしてこの余裕は何処から来る? この子は一体何者だ? 皆、唖然として剣舞を眺めている・・・。
「よし、シュマ、良かったぞ! では、二人組になって皆も剣舞の練習開始!」
その言葉に、おっかなびっくり打ち合う者、カツン、と剣が当たった途端取り落とすもの、皆様々だ・・・。
「剣はしっかり握れよ、握り方はこうだ。そうしないと危ないからな・・・」
(あと2年で、こいつら全員に組打ちまで教えられるかな・・・?)
今日も、平穏な時間が過ぎていきました・・・。