懲りないタマキ2
「ぐゎ~! ぐゎ~!」
慌てた様子の白いガチョウ。辺りに漂う臭いと煙、火事~? 慌てて”びよ~ん”を燻していた場所に戻ると、タマキちゃんの服が燃えています。
「や~!」
急いで服に水を掛けます。 “びよ~ん”が入ったタライ、炭の上でひっくり返り、無残な姿。そして、周囲もぶすぶすと一面に煙が立ち込めます。
「ちょっとタマキ、これどうしたの!」
「う~!」
様子がおかしいので戻ってきたミサトちゃん、すかさず命令します。
「早く、狼煙を!」
異変に気付いた村人や兵隊さん、急いで駆けつけます。幸いにも燃えた範囲は少なく、水場が近いこともあり、火は無事に消し止められました。
「火の元に注意しなって言ったでしょ!」
「全く人騒がせな!」
「うう~」
ミサトちゃんや村人に怒られるタマキちゃん。何も悪い事してないのに!
いつの間にか戻ってきたマリーちゃん、ミサトちゃんの陰に隠れています。
「まあ、大事にならず良かったわい!」
騒ぎを聞きつけ、様子を見に来た聖仙様です。天の助けが来た!
「ジィジ!」
タマキちゃん、その場から逃れるため、聖仙様を石の台座の傍、水場から引き揚げた丸い物の所へ引っ張っていきます。
「これ、龍の卵~?」
「くゎくゎくゎ! こりゃまたどうして・・・」
一部始終を聞いた聖仙様、その丸い物を数年ぶりに台座に戻します。
「これは、封印の石碑じゃ。無くなったので、探しておったのじゃよ」
ケガの功名じゃと笑いながらタマキちゃんを褒め、あまり叱らないよう皆に頼みます。これで、あの呪いも大人しくなるはずじゃ、と呟く聖仙様でした。
「えっへん!」
名誉回復となったタマキちゃん、”びよ~ん”を燻していた場所に戻りますが、無残な黒焦げになった物を見てしょんぼり。
「うう~」
「タマキ止めなさい、汚いでしょ!」
焦げた焼け残り、恨めしそうに摘まみ上げるタマキちゃん。聖仙様、不思議そうに見つめます。
「一体、ここで何をしておったのじゃ?」
「”びよ~ん”を強くするの!」
話を聞いた聖仙人様、何じゃ、そんな事か、と何やらタマキちゃんに耳打ちします。
「本当に?」
「ああ、やってみるがええ!」
樹液から、再度試作にとりかかります。今度は、強度か上がったものの、柔らかくありません。
「後は、兼ね合いじゃ。くゎくゎくゎ!」
そう言って去っていく聖仙様。かくして、三人で試作を重ね、ついに満足いく物が出来上がります。
訓練校に戻り、成果を話すとリムさん大喜びでした・・・。
さらに改良加えられた試作品、その年の秋、荷車改良版が街道を試験走行。結果は上々。さらに手を加えた十台、実務を兼ね街道の往復を始めることになりました。