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辻占い

私は、時間つぶしに街を散策することにしました。喧噪の中を通り抜け静かな場所を探します。ふと見ると、ティーカップが描かれた看板を出している出店があります。私は、そこでお茶のセットを頼むことにしました。


洒落たティーポットに入ってお茶が運ばれてきました。そして、季節の果物が添えられた、焼き菓子でしょうか? 香ばしい香りが漂います。さすがトゥルクですね、このようなお菓子は初めてです。


お茶は、少し酸味のある華やかな香り、お菓子の甘さによく合います。寛いで辺りを見回します。先程の喧騒から少し離れているので、人通りも少なく落ち着いています。


ゆっくりした時間を過ごし、店を出てさらに歩を進めると人通りが消えました。そろそろ戻ろうかしら、と思った矢先に辻占いの看板と一人若い女性の姿が見えます。


(そういえば私、自分自身を占ったことがないのよね・・・)

時間もあるので占ってもらおうと決め、お願いします、と声を掛けてみました・・・。



「ではお姉さん、この中から石を一つ選んでください」

若い占い師さんに言われ、色とりどりの石を示されます。私は、少し迷って緑色の石を選びました。


「では、占っていきます」

占い師さんは、その石を白い布の上に置き手をかざし始めました・・・。


「お姉さんは、お仕事でこの街に来ました。かなり大きな縁に引き寄せられています・・・」

(トゥルクは仕事で来る人も多いから、この辺りは無難な言い方よね)

私も占いを日常的に行う仕事柄、つい上から目線になってしまいます・・・。


「お姉さんが、そのお仕事をすることで・・・、あら・・・?」

(何? 気になる言い方しないで!)


「ごめんなさい、わからないの。先が全く読めない。こんなこと初めてだわ・・・」

「・・・」

(つい最近も、似たような展開が・・・)


「ごめんなさい、占い師失格ですね。お代は要りません!」

そう言われて、いやいいです、とお代をお互い押し付けあう二人・・・。占い師さん、では、別の方面を見てみましょう、と言ってくださいます。しばらく私をぼんやり見たかと思うと、急にこう言いました。


「お姉さんのご両親についてはいかがですか?」

私はその言葉を聞くと、ドクン、と胸の奥が激しく動きます。


「は、はい、お願いします」

辛うじて言葉にできたものの、何故か(かす)れ声になります。

その言葉を聞いた占い師さん、目の前の緑の石に、パラパラと砂をかけてそれを見つめます・・・。


「お姉さんのご両親は、遠い所にいらっしゃいます。もうずっとお会いできていないですね」

「・・・」


「何か大切な使命をお持ちです。そのために人と異なる旅というのかしら? をされていらっしゃいます。お姉さんが、このまま正しい道を歩んで行けば、この先ご両親に会えるかどうかは別として、ご両親の足跡に辿り着くことは間違いないです・・・」


私は、その言葉を聞きながら、ただ涙するしかありませんでした。実は物心ついた時から祖母に育てられ、両親の記憶がないのです。大切なお役目があるから遠くにいるのよ、とだけ聞かされて育ちました。


私が育った村では、同じような境遇の子供達が多く、そのことに寂しさを感じることもありませんでした。でも、今初めて他人の口から両親のことを聞かされ、忘れていた涙が溢れ出します。


「大丈夫ですよ。ご両親の愛に匹敵する程、多くの方々からお姉さんは愛されます・・・」

私は、嗚咽を(こら)え占い師の方に礼を言いました。


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