修行道場2
修行道場1の続きです・・・。
気が付くとそこは暗闇の中、遠くに僅かな明かりが見えます。そちらへ歩いて行くと、館から賑やかな声。私は、中に入る順番待ちをします。
そしていよいよ私の番。すると館の案内人、呼び鈴を取り出し鳴らします。
「こちらへどうぞ!」
館の中から現れた白い少女、静かに私の手を引いて館とは反対の方角へ進みます。やがて、広場の奥に岩肌を削った円形の建物が見えてきます。
「どうぞお入りください」
中に入ると、窓からこの世界を一望できます。突然周囲が明るくなり、座るように示されたのはどこかで見た巨石の上。座面のように滑らかに削られた窪みが2つあり、私は左側に座ります。
すると、目の前に映像が流れます。何処から来たのか、猿族が東へ旅をしています。それに、今度は鳥族が加わりました。二つの種族は、協力しながら旅を進めます。
しかし、ある時、何かあったのでしょか? お互いに争いが始まります。猿族は、東へ逃れますが、追いかける鳥族。
やがて、神々が仲裁に入り、一旦戦いは終わります。しかし、暫くすると再び争いが始まりました。今度は、猿族も引かず大規模な戦いに発展、神々の仲裁さえ聞き入れようとはしません。
その時、進み出た一人の鳥族と猿族。祭祀を行い、金龍を呼び寄せます。金龍は、種族間の争いを力で治めると、こう言います。
「次は、鳳凰に仲裁を頼め」
そう言って、再び地中へと消えて行きます。
(これは、昔の出来事なの?)
「これから貴方に、永遠の命か生まれ変わる命、どちらかを選んでいただきます」
「え?」
突然声がかかり、辺りの風景がゆがみ始めます。まるでこの世界が終わってしまうみたい、
「待って、私まだ選べない!」
その言葉が終わる間もなく、私、龍になって地の底から地上へ駆け登っています。と同時に、龍の自分に懐かしい感情が沸き起こります。ああ、逢えて良かった。
(でも、これだけなの? まるで、それ以外は不要と言わんばかりの純粋な思い、胸に広がります)
私の困惑をよそに、龍の私は、修行道場の洞窟を飛び出し、ザムの険しい山々を超えます。目指す場所は、何故か知っています。
そう、ザムに建てられた最初の神殿、猿族と鳥族が祀りあった場所。
空の彼方に、白く輝く山を横目に、むき出しの山肌が見える荒れ地を超えます。そして、川を渡り、海を越え水の都ラーヴィへ。
私は、龍のまま、ザブン、と音をたて、大きな川に吸い込まれるように飛び込んでいきました・・・。