表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/22

修行道場1

「続・命を継ぐ者 (ラシル)の旅」、第61部、戦いの後、に続く私、ラシルの話です。

「龍巫女様、ここにいる巫女達で歓迎させていただきます」


私の前に(ひざまず)いた巫女、入り口に龍の浮彫が飾られてある洞窟の奥へと、私を案内します。交差した回廊をいくつか抜けると、そこに大きな部屋がありました。


周囲は、祭祀の様子など、壁画が描かれています。


そして放射上に敷き詰められた石の真ん中に立つ石柱、鳥や、猿の浮彫が施されています。その奥に、磨かれた黒い石棺らしきものがあります。その脇で、巫女は再び(ひざまず)きます。


「龍巫女様、龍神を昇天させ指輪を手にした貴女様は、三箇所の封印を越えられました。古の伝承に従い、神殿の代表者が、ユミル、アルシュ、パルバク、この3国を統べる者として貴女様を認定致します!」

「はい?」


私の困惑を他所(よそ)に、気が付けば、出迎えてくれた白いローブ姿の三人の男達、その言葉に無言で(うなず)きます。


(そういえば私、言われるまま考えなしに龍の浮彫に指輪を押し付けたけど? 三国を統べるものって何・・・?)


「これから、この石棺の中で宣託を受けていただきます」

いつの間にか焚火(たきび)が用意され、草が燃やされます。次第に部屋に煙が立ち込めてきます。


私は、ふわふわした意識の中、杯に入れた何かを飲まされます。次第に抵抗する気力も起こらず、自分で立てなくなった体を巫女達に抱えられます。そして、丁寧に石棺の中に寝かされました。


「龍巫女様、貴方様がどのような選択を選ばれても、私達はそれを尊重いたします」


その言葉を聞き終わらないうち、巫女の一人が杯を地に投げつけます。

パリーン! と何かが割れた音が聞こえたと思ったら、私は石棺の中で動けなくなっていました・・・。


石棺の中、意識は朦朧としているのに、不思議と周りの光景が見えます。巫女と神官達は、一度石棺の中の私を(のぞ)き込み、頷きあって部屋を出ていきます。


口を必死に動かそうとします。でも、思い通りに動かないのです。


(こ、怖い・・・)


やがて、胸の奥から何かが漏れて行くのが分かります。それが進むにつれ、足元から何かが小さな声で叫んでいます。


(まだ死にたくない、まだ死にたくない!)

「え? 何・・・?」


なんと、自分の足先から(すね)の表面が大合唱をしています。私は、胸の奥から漏れていくものも、足元から聞こえる大合唱も、自分の力で止めることが出来ませんでした。


ごめんなさい。こんなにも自分の事に対して無力だったなんて・・・。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ