手紙
「続・命を継ぐ者 (ラシル)の旅」第64部、代償、の数日後のお話です・・・。
学期試験が終わり、双子達はアルマー村に戻ってきました。
この休みを利用して、猿王に “びよ~ん” の作り方を教えてもらう約束をしています
「猿王早く来ないかな?」
タマキちゃん、”びよ~ん” の作り方を習うのが待ち遠しくてたまりません・・・。
そんなある日、珍しく手紙が双子達に届きました。ユミル国内で質の良い紙は作られておらず、連絡のやり取りは言伝で行うのが普通です。
「タマキが読む~。字もたくさん覚えた~!」
珍しい手紙に、双子達は興奮気味です。
「え~っと、拝啓、ミサト殿、タマキ殿、お元気ですか?」
「うん、元気~!」
タマキちゃん、文面にいちいち返事します。
「ちょっと、タマキ、いいから早く読んでよ!」
「は~い! え~っと、この冬、お嬢達に “びよ~ん” の作り方を教える約束をしていましたが、遠国への用事でそちらに戻れなくなること、お詫びいたします・・・」
え~? 猿王来られないの・・・?
「ぶ~」
タマキちゃん、思わず文句が出ます。
「しょうがないでしょ、猿王たぶん仕事だもん・・・」
タマキちゃんを慰めるミサトちゃんです。
「もう! ・・・つきましては、手紙にて作り方を記しておきますので、そちらをご覧ください」
“びょ~ん” の作り方、あった! 数枚に作り方がまとめられています。
タマキちゃん、そちらに夢中で、残りの手紙を読むことはすっかり忘れています。
「もう、タマキ! 残りの手紙は?」
タマキちゃん、作り方を書いたものを手元に残すと、2枚だけミサトちゃんに渡します。しょうがないわね、と続きを読むミサトちゃん・・・。
「・・・?」
「ミサト、どうしたの?」
傍で聞いていたお母様、読めない字でもあったのか、と訝ります。
「ううん、・・・訓練校に通うこと許して下さった母君に感謝を忘れず、しっかり学びを修めていただければ、猿王この上ない喜びです。旅先では、直接お嬢達の風よけや、分かれ道の道標になれないのが残念です。しかし、お二人ならば、もう自ら道を切り開いて進めると信じております。今後のご活躍楽しみにしておりますぞ。返信不要にて、 猿王」
う~ん、何か変なのよね、この手紙から受ける感覚なのかな・・・?
ミサトちゃん、何となくもやもやします。
「返事書く~!」
「もう、返信不要、って書いているでしょ! 旅先なのよ」
でも、旅から帰ったら読める~。そう言って母様から紙をもらい、お礼の返事を書くタマキちゃん。ミサトちゃんも礼状を書きます。
二人の返事は、ルグシャ外れの猿族の街に届けられます。そして、療養中の猿王の元へ無事届けられました・・・。