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地下牢の子供1

「続・命を継ぐ者 (ラシル)の旅」第41部で、ラシルさんが二人の子供に手を引かれて入った崖の向う側、数人がやっと入れる兵士の詰め所があります・・・。

コンコン・・・。


厳重にカギを掛けられた牢の荷入れ口を、内側から叩く音がします。蓋を開けるとまず女の子が顔を見せます。


兵士の顔を確認して安心すると、えい、と掛け声をかけ這い出してきます。それに男の子が続きます・・・・。


「ぷふぁ~!」

二人は大きく息を吸い込むと、服についた土をぱたぱたと払います。


「おじさん、買い物に行ってくるね!」

「ああ、気を付けろよ。夕方には、戻ってこい!」

うん! と元気よく駆け出す二人を見送る兵士でした。


・・・・・・・


あれは、半年前の事。その兵士が配属されたのは、重罪人を閉じ込めている地下牢の見張りでした。入り口は封鎖され、僅かばかりの食事や日用品を荷入れ口から地下牢に下す、そんな仕事でした。ところがある日のことです・・・。


同僚が見回りに行き、自分一人になった昼間、扉を小さくたたく音がします。驚いて思わず、なんだ、と声が出てしまいます。


「お願いします、病気の人がいるの・・・」

カギを開け、扉を少し開けると、中に女の子の顔が見えます・・・。


「おい、どうやって・・・」

「お願いします、熱があって困っている人がいます。薬草を買いに行かせてください!」


俺は、正直迷った・・・。本当だろうか? 逃げるのでは?


だが、次第にこんな子供が地下牢に閉じ込められていいのか? と怒りも感じる。

逆に、ここから逃がしてやれないか、とも・・・。


俺は、扉を大きく開け、穴から少女を引っ張り上げた。すると、もう一人、今度は男の子が顔を出す。ちょっと待て・・・。この子たちを閉じ込めた奴は、いかれてやがる・・・。


俺は、男の子も引っ張り上げると、もういないよな? と二人に念を押すと、頷く顔を見て安心した。


「金は持っているのか?」

尋ねると小さな手に銅貨を握りしめている。ああ、それじゃ足りねえ・・・。

俺は、飯代や飲み代の有り金を子供達に握らせ、行ってきな! と送り出す・・・。


(できれば、遠いところへ二人で逃げろ・・・)

そんな願いを込めて・・・。


ところが、数刻後、子供達は薬草を手に戻ってきやがった!

おい、一体どういうことだ・・・。


「だって早くしないと、もう一人が戻ってくるでしょ!」

何故それを知っている? いや、そうじゃなくて・・・。


子供達に急かされ、俺は荷入れ口の蓋を開けた。すると二人は、あっという間に下へと消えっていった。その後、(しばら)くは、扉が叩かれる事もなかった・・・。



次回、地下牢の子供2、です。

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