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通知

 それから何日か過ぎてポストを覗くと封筒が入っていた。送り主は死後総合事務本部だった。

 ぼくはゴクッとつばを飲み込んだ。


 「ついに来たな……」


 急いで部屋に戻り、恐る恐る封を開けた。手紙には簡潔な時候の挨拶文と【臨時採用】の文字があった。そして所属は【刑罰部 仏教課】

 まさか。刑罰部という事はつまり地獄である。ぼくにそんな仕事が務まるはずがない。もしかして、面接やスカウトを受けていないから適切なところに配属されなかったのではないだろうか。はたまた戸籍を急に作ったためか。街へ出かけたとき、森さんから採用通知を受け取ったら普通は嬉しいのだと聞いた。しかしぼくは絶望の淵にいた。文字通り地獄のどん底に突き落とされたのである。


 絶望で重くなった足取りで森さんの部屋に向かった。


 ぼくが部屋の呼び鈴を鳴らすとヌッと森さんが出てきた。さっきまで寝ていたらしく、ぼさぼさ髪の彼はどうしたー?と不思議そうにしている。ぼくは黙って手紙を渡した。彼はそのまま玄関先で書面にサッと目を通した。そして


 「刑罰部の仏教課?おお!俺もだよ。一緒だなぁ。」 


 などと呑気に喜んでいる。ぼくはまくし立てるように吠えた。


 「いやいや……喜んでる場合じゃ無いですよ!ぼくが刑罰部だなんて何かの間違いでは?ぼくみたいな奴が体力的にも精神的にも務まる訳がないです。森さんはガタイも良いし、強そうだから良いですけど……地獄って事はそれなりの人がいるんですよね?ぼくじゃ刑罰どころか逆に殺られますよ!」


 興奮して息が上がったぼくとは対照的に森さんは静かに言った。


 「……じゃあ辞めるか?何も始まって無いけどな。『ぼくには出来ないし向いてないのでやりません』っって逃げるのか?」


 「そっ!れは…」


 「あのなぁ。おめぇも色々あって大変なのは分かるがよ。それとこれは違ぇと思うんだわ。仕事はきっちりやろうぜ。やった上であれこれ工夫すんのは良いけどよ。まだ何をやるかも分かんねぇのに、やる前から文句たらたら言ってケチ付けて。筋が通らねぇと思わねぇの?しかも、途中から入ってきた奴がさ。普通の状況ならお前は無視されて終わりだぞ。体力が無けりゃ鍛えろ。さもなきゃ技術でカバーすれば良いだろ。精神面も。俺と一緒のところだから何かありゃ協力するし、本当に辛くなりゃ部署変えてもらうなり手はあるだろ。経験も無ぇのに挑戦する前からやらねぇのはどうなんだろうな。……ま、俺の意見だがな。」


 「…………すみません。」 


 ぼくは何も答えられなかった。彼の正論はぼくの身にグサグサと刺さった。さっきまで上がっていた熱が一気に冷め、この感情をどうすれば良いのか分からず、ただ俯いた。


 「まぁ。良いわ。もちろん、明らかに違法だとかは論外だがな。特にここは他の世界と勝手がちげぇんだ。手ぇつける前に何だかんだと文句つけるのは良くねぇと思う。やってみようぜ。やらねぇと始まんねぇよ。」


 「はい…」


 「俺も同じところだから何かあったら助けるからな。」


 ぼくは頷いた。


 「はっはっ。んなこと言って意外とつばさの方が向いてたりしてな!」

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