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「死後総合事務本部」

 ぼくの助け舟かも知れないその建物は古い区役所風の立派なものだった。味も素っ気も無く、それだけがぽつんと建っており冷たく寂しい雰囲気が漂う。

 少し入りづらいが他に当てもないので、勇気を出して入口と思われる所から入ってみることにした。勝手に入って良いものだろうか……鍵でも掛かってはいないか。と恐る恐る扉を引くとカチャッと何の抵抗もなく扉が開かれた。

 中はたくさん窓口のようなカウンターがあり、その前には長椅子が並べられていた。書類を書くスペースや整理券を出すあの機械もある。上は吹き抜けになっており、外観からは想像も出来ないほど高い天窓からは柔らかな光が射し込んでいた。区役所というより総合病院の様な雰囲気が感じられた。


 「すみません…どなたかいらっしゃいませんか…?」


 誰かに問いかける……というよりは孤独を確認するように呼びかけた。自分の声だけが反響する部屋でひとり、椅子に座った。こんなに大きな病院がある街はそれなりに大きい街であるはずだ。それなら自分にも心当たりがあると思うのだが、全く記憶の針に引っ掛からない。それだけ、遠くまで来てしまったという事か。

 そんな事を考えながらふと、カウンターの上に設置された時計を見上げると既に16時半を廻っている。あぁ……もうそんな時間かと独り言を呟いた自分の声で異変に気づいた。16時半ってこんなに明るかったか。4月とはいえ、まだ日の入りにはやや早い時間帯である。正確に何時に日没であるかは知らないが夏休みを境に夏は17時、冬は16時半に公園のチャイムが鳴る。チャイムとその時期の日没は殆ど同じだと思う。つまるところ4月のこの時間はもう夕方だ。もう少し暗いはずだ。だが昼間の様に明るい。異様な違和感を覚え、立ち尽くしていると背中の方から声が聞こえた。声のする方に目をやるときちんとした身なりをした女性がいた。彼女は幽霊でも見た様な顔をしながら


 「ちょっと!そんなところで何してるの?もう新人研修始まるわよ。」


 と、言った。ぼくは動揺したものの、話が出来そうな人間が現れた事にほっとした。


 「新人研修?いや、ぼく道を…」


 訪ねたいのですが。と言い切る前に彼女はぼくの言葉を遮りながら言った。


 「迷子?ほらほら。案内するから早く早く!研修始まったら入りづらい雰囲気になっちゃうよ!」


 手招きしながら1階の奥へ消える彼女の勢いに押され、別の意味で話ができないなと思いながらぼくは後を追った。小走りで長い廊下を通り、あるひとつの扉をそっと開ける。

 そして、


 「あ、みんな来てるみたいだけどまだ始まってないみたいね。セーフセーフ。」


 と、笑った。ぼくは今更、後にも引けずそのままお礼を言って中に入った。

書き溜めていた分です。

寝る前に書いているので誤字や脱字、表記ゆれなどありましたらお知らせください。


完結させられるか不安です…

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