残り100日 切り裂き舞姫
腰まで届く黒髪をなびかせて、私を睨み付けるその視線は紛れもなく幼なじみの黒咲舞姫だった。
頭が働かない。
え?よくわかってはいないけどね私も。
でもなんで私を何度も殺したロボットの中に舞姫が座ってるの?
しかもいつものゴスロリ格好ではない。
幾何学的な模様が鈍色に光るボディスーツのようなものを着ていて、異様に良いスタイルを際立てていた。
「あ、あなた、誰なの?」
「いいでしょう。わたしの『ペットくん』を倒した暁に答えてあげましょうか」
この壊滅的なネーミングセンス。間違いなく舞姫だ。向こうは気付いていないようだけれど。
そりゃあ、そうだよね私今女の子だし。
「わたしは『切り裂き舞姫と呼ばれています。我が親愛なる魔王に仕える参謀であり従者であり、この『ペットくん』を作ったものでもある」
切り裂き舞姫!?更に確定入った!!
それ、舞姫がゲームのアバターでよく使ってる名前だよね!?
「貴女、名前を聞いておきましょうか」
「えっと、アンリ。なんだっけ」
「アンリと言うのですね?」
「いや、違うよえっ「アンリ!!貴女はわたしを怒らせた。覚悟して、いつか魔王と共に貴女を地獄に叩き落としてあげますから!!」
魔法陣というか、天から降ってきた紫のベールに包まれて舞姫は消えてしまった。
……『ペットくん』持ち帰ってくれよ!!
佇むペットくんが何故だか物悲しく見えてきた。
私は今起きたことを理解するために変身を解こうとすると、アンリが私を止める。
『知っているようですね。あの女を』
「うん、えっと。幼なじみだ」
『……何という、偶然。いや運命ですかね』
「へ?」
『彼女は私が最初に魔法少女にした、人なのです』
もう、これちょっと色々ぶち込み過ぎてませんか?
だっていきなり魔法少女になって死に物狂いで戦って勝ったら敵は幼なじみでしかも元魔法少女っていう事でしょう?
「ははは。もう、わかんないやぁ」
溜め息をついて、私は『シャイニー☆マジカル』としての初陣を終えて。
魔王サイドに敵だと認識されたのだった。