残り100日 始まりはいつも諦めから
魔法少女というものを聞いた時。
誰しもが考えるだろう。
どこにでもいるような普通の女の子が現れる悪の手先を倒すために人知れず変身し、誰にも話せない苦悩や現れる強敵とのバトル。
そんな、普通の女の子からはかけ離れた事をしている。
いわば正義の『ヒロイン』だ。
だが、それを前提としてだ。
ここにいる俺、空巡四季。
名前こそギリギリ女の子だけれど。
身長176cm体重60kg。少し癖っ毛で真っ黒な髪。
運動神経は可もなく不可もなく、勉強においても平々凡々。
どこにでもいそうな普通で平凡なアニメ好きの高校2年生。
そんな俺に、突然現れた推定3m強はあろう四足歩行型のロボットが、こっちを睨んでこようとも。
立ち向かい戦うことなんて本来は出来るはずもない。
だって、そうだろう?
俺は普通の男だったんだ。
人生に目標も特に無い。明日のアニメが気になって仕方がないようなしがないオタク野郎だ。
そう、オタク野郎だったんだ。
「やるしか、ないのかよ」
『何度言えばわかるんですか。貴方が戦うことは。
未来で決まっているのです。さぁ。戦って下さい。
『シャイニー☆マジカル』!!!!』
目の前で浮く、桃色の星が先端についた可愛らしいステッキを手に取って、大きく深く溜め息を吐く。
「俺は、絶対後で今日の俺を殺したくなる日が来ると思う。絶対に、だ!!」
ステッキをバトンのように回して。
右手でピースをウインクした右目に、左手を高く掲げて大きくジャンプする。
ってこれやんなきゃ本当に変身出来ないのかよ!!
「『キラっとマジカルっ!!シャイニーハート♡!!正義の魔法で悪をもハピネスっ!!
変身っ!!シャイニー☆マジカル』っ!!!!」
誰か今すぐ俺を殺してくれっ!!!!
『わー本当にやったよ』
「お前を先に殺してやるっ!!!!」
光に包まれ、温かい何かが身体に纏って行く。
あぁ。どこで、こんなことになった。
……あの時か。振り返ってみよう……。
俺が、これからのたった100日を大いに狂わす事になるターニングポイントを。