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16話 隠し通路のクエスト

 受付嬢と他愛無(たあいな)い会話を行ってから隠し通路の情報を得たユタカは、アヤヒナや副会長や会長を待たせているギルドの1階フロアに移動する。


「お待たせ。隠し通路のクエストはレベル80のウルフを10体討伐することで完了になるらしい」

 クエストの詳細が書き記された用紙をテーブルの上に乗せたユタカは、アヤヒナの隣に腰を下ろす。

 

「ウルフの属性は炎や水や風と様々で、10体以上の群れで行動を行っているとの事だよ。難しいと感じた場合は後戻りすることも可能だから身の危険を感じたら撤退を告げるよ」

 穏やかな口調で言葉を続けるユタカは小刻みに肩を揺らしている。

 

「クエストの詳細が書いてある用紙ではなくて、なぜ私の顔を凝視しているなかな?」

 ユタカの指先はクエストの詳細が書き記されている用紙に向いている。

 しかし、クエストの詳細が書き記されている用紙に視線を移しているのはアヤヒナのみ。

 アヤネと副会長に顔をまじまじと見つめられて、照れたように眉尻を下げたユタカは首をかしげて問いかける。

 

「東の森の洞窟内から、どうやって生還することが出来たのか教えてほしいなって思って。会長に聞いたら意識を失っていたから分からないって言うし。ユタカお兄さんが会長を助けてくれたんだよね?」

 人懐っこい笑みを浮かべるアヤネの問いかけに対して、ユタカは口元に笑みを浮かべて呟いた。


「何が起こったのか、全般的に伝えることは出来ないんだ。ごめんね」

 穏やかな口調で言葉を続けたユタカは早々に崖の下に転落した時の話をすることは出来ないと伝える。

 飛行術を使うことの出来る人物は限られている。

 人間の中で飛行術を発動することが出来るのは片手で数えることが出来てしまうほど少ない。


「明るいうちに隠し通路のクエストを終えたいから、洞窟内に向かおう。洞窟内に足を踏み入れると隠し通路へ続く道しるべが見えるはずだから、道しるべに従って歩くんだよ」

 素早く会話の話題を変えたユタカは席について早々、休む間も無くゆっくりと腰を上げる。

 

 ほのぼのとした雰囲気の中で、ユタカに続いてギルド内から足を踏み出したアヤネは浮き足立っている。

 アヤネの後に続く副会長は普段通り表情に笑みを張り付けて、和やかな雰囲気を醸し出している。

 アヤヒナは少し距離をとってパーティメンバーの最後尾を歩く。

 ドワーフの討伐の時は皆の足を引っ張ってしまった。

 闇属性の矢を背中に受けた挙げ句、ユタカを巻き添えにして崖の下に転落してしまった。

 もしも、ユタカが飛行術を発動することが出来なければ今頃、ユタカともども崖の下に転落していただろう。

  

 隠し通路のクエストで仲間の足を引っ張りはしないかと不安になる会長は険しい顔をする。


「肩の力を抜きましょう」

 穏やかな口調で言葉を続けた副会長は会長の肩を叩く。

 東の森の洞窟内に足を踏み入れたアヤヒナは、副会長と肩を並べて青白く光る道しるべにそって足を進める。

 複数の矢印が隠し通路の場所へと導いてくれる。

 

 表情には表してはいないものの、ユイトもアヤヒナと同じように隠し通路のクエストと高難易度のクエストを前にして緊張しているのだろう。

 ぎこちない歩き方を見せるユイトは、隠し通路内に足を踏み入れる前からしっかりと武器を構えている。

 小刻みに振るえる剣の先端がユイトの心境を物語っている。


 アヤネに関しては緊張感と激しい恐怖心に苛まれているため、ユタカの背後に身を隠している。

 ウルフが現れたらユタカを盾にする気満々である。


 青白く光る矢印に従って隠し通路の中に足を踏み入れたアヤヒナの視線の先にウルフの群が入り込む。

 ウルフのレベルは10レベルから80レベルと様々で、その数はパッと見た感じ100体以上。

 

「ウルフの群は10体程度って聞いているんだけどな」

 100体を越えるウルフを目の前にして、可笑しいなと言葉を続けたユタカに対してアヤネは素早く考えを口にする。


「撤退……撤退、撤退をしましょう」

 大事なことだから同じ言葉を繰り返したのだろうか。

 撤退と3度繰り返したアヤネが、足をじたばたさせる。

 アヤネは今すぐに隠し通路の出入り口で身を翻して逃げ出したい気持ちではあるものの、ユタカは一歩前進する。

 パーティのリーダーの指示に従わなければならない状況の中で、何故か前進するユタカは前に進む気満々である。


「大丈夫? 相手は100体以上だよ?」

 落ち着かないアヤネはユタカの身に纏っている衣服を指先でつまんでいる。


「殆どが10レベルから30レベルのウルフだからね。60レベルから80レベルのウルフは30体程。そのうち80レベルのウルフは10体程度だからクエストを一気に完了するには適した状況だよ」

 穏やかな口調で言葉を続けたユタカは冷静だった。

 ウルフの数よりも、そのレベルを確認していたユタカが背負っている刃先の折れた剣を手に取った。

 群をなすウルフに向かって構えを取る。

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