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佐藤君は無能力  作者: 三鷹 功
6/10

逃げるは恥だがたまには役に立つ。

こんばんわ!先ずはお読み頂き有難うございます。

ここからは邪魔せずに短く挨拶だけにして置きます。

では!

「無理無理無理!あんなの倒せっこ無いって!」


佐藤は城の中で逃げ回っていた。


「なんか黒いオーラブワァってなったし!目の色変わってたしぃ!」


逃げて逃げて逃げて、誰にも追いつかれない所まで。

自慢の逃げ足は誰よりも早く、誰も追いつける筈が無いと思っていた。


だけど一人だけ、いや一匹だけ佐藤の逃げ足に追いつける奴がいた。



「兄貴!どこ行くってんですか!」


「・・・犬」


佐藤の後ろから声を掛けてきたのは、同じ様に追いかけてきた犬だった。


「兄貴!早く戻らねぇと!清の兄貴死んじまいますよ!何してんですか!」


「犬!お前こそ何してんだよ!なんで俺を追ってきた!あいつ今一人じゃねーか!」


「・・・行かせてくれたんですよ」


「はぁ?」


「清の兄貴、きっと一人じゃ城を脱出できないだろうって、兄貴のこと頼むって言ってくれたんですよ!」


「・・・」



なんだよそれ・・・ふざけんなよ!


「犬!お前は清の所に戻れぇ!早くしねぇと!あいつが!」


「いい加減にしてくだせぇ!」


そう言うと犬はあろう事か主人の顔を殴った。


「・・・・・・」


「兄貴、どうしちまったんですか?らしく無いですよ、兄貴は俺に言ったじゃ無いですか?真っ直ぐ進むのが漢だって」


「・・・」


「兄貴はどんな時でもいつでも真っ直ぐに突き進む漢じゃ無いんですか!どうなんですか!」


「・・・やめろ」


「俺の知ってる兄貴はこんな所で逃げる漢じゃねぇでしょう!」


「・・・やめろって」


「兄貴!なんか答えてください!兄貴は俺の目指す目標なんです!」


「止めろって言ってんだろ!」


「・・・兄貴」


「俺はな!そんな人間じゃねぇんだよ!見損なったか?そうだろうよ!俺は臆病で弱虫で逃げることしか考えないクズなんだよ!」



そうだ、俺は本当にクズだ。

一人だけスキルが無くてその事に絶望して、その現実から逃げたくて。


城を飛び出した。


「全く笑っちまうよな?根性のかけらもねぇよ、嫌なことがあったらすぐ逃げ出す卑怯者なんだよ俺はぁ!!」


さっさと行っちまえよ、清がお前の本当の飼い主なんだからよ。

あいつは正義感が強くて、真っ直ぐで俺なんかと違ってカッコイイ奴なんだよ。

精々勝ってるところって言えばこの逃げ足の速さくらいさ。


・・・格好悪りぃ、格好悪りぃな俺。


くだらねぇよ、こんなに弱い自分がさ。

情けねぇよ・・・



「兄貴が卑怯者?兄貴が卑怯者だって言うんならどうして?」






ーどうしてそんなに泣いているんです?ー





「これは、これはただ目にゴミが入っただけだ!」


「嘘つかないでくだせぇ、そんな見え透いた嘘ついちゃあ漢の名が廃りやす」


「・・・どうしようもないだろ・・・あんな奴どうやって勝つんだよ!」


「俺は長い間この地獄に落ちてくる奴をずっと見てきました・・・」


「それがどうしたってんだよ!」


「落ちてくるやつは様々ですが、皆それぞれ光り輝くもんを持ってます」


「・・・」


「それがスキルちゅうもんだと知ったのは随分後になってからでした」


「なんの話だよ?おちょくってんのか?」


「兄貴、俺がなんで兄貴について行こうと思ったかわかりやすか?」


「わかんねぇよ!なんなんだよ!」


「輝いてたからです」


「輝いてた?」


「そうです、兄貴は見たこともねぇくらい輝いてたんすよ!」


「見間違いだろ、清と間違えたんだよ」


「間違いじゃありません!今でも目の前に燦然と輝いてるんです!」


「輝いてたら良い事でもあんのか?俺は無能力だぞ?」


「俺はその輝きって奴が分かりませんでした、でも今はちげぇ!やっと分かりやした!」



眩いくらいに輝いてる兄貴は、心がスゲェ強いんじゃないかって、そう分かったんです。



「兄貴、普通は無能力で魔王なんて倒そうと思いませんよ?」


馬鹿みたいに真っ直ぐで、仲間思いで。


清の兄貴が教えてくれたんすよ、何で兄貴はあんなに無茶してるんだって。


囚われてるんでしょう?ダチが一人。


花音ちゃん?笑わせないでくだせぇ、本当に助けたかったのは。



「沙耶の姉貴だったんでしょう?」


「・・・」


「あんなにおちゃらけて、城を飛び出して清の兄貴がきたときにホッとしたんでしょう?無事だったって」


「・・・」


「それで力もないのに、助けようとしたんでしょう?兄貴、そうゆうのは弱虫のする事じゃねぇですよ」


「・・・」


「本当は一番強いんですよ兄貴は!だから!そんな兄貴に俺は惚れたんです!」



「だったらどうしろってんだよ!」


佐藤はこれまで見せたことの無いような泣き腫らした顔で地面を強く叩いた



「救いてぇよ!助けてぇよ!でも俺にはその力が無い!どうすれば良い?ここまで勢いでこれた!でも魔王は別格だ!」


「本当に足が竦んだんだよ!助けてぇのに!足が前に行かなかった!」


「なんでだよ!何で俺は無能力なんだ!」


「何で!何で!俺は無能力なんだああああ!!!!!!!!!!」



諦めきれねぇよ!こんなところでゲームオーバーなんてあるはずがねぇ!

ぜってぇ諦めねぇ!諦めてやらねぇ!城のどこかに魔法道具はねぇのか?武器は銃は?

俺が城を出たのだっておかしいと思ったからだ、召喚することができる奴が弱いはずがねぇ。

初めて会った時からあいつには嫌な雰囲気を感じたんだ。何で感じる事が出来たのか分からねぇ。

わからねぇけどヤベェ感じがしたんだ。


どうしろってんだよ!俺に何が出来るんだ!

諦めたくねぇ!諦め切れねぇよ!


自分のことを自責していくうちに、佐藤は自分の感情と感覚、記憶に僅かな齟齬に気が付いた。

その違和感に気づいた。


おかしい?・・・俺はあのジジイに会った時、何ですぐにあいつを殺そうとしたんだ?なぜ今ヤベェ感じがしたと思った?


最初に出てきたもう一人の僕なんて存在、あんなにハッキリと自分の声が聞こえたのは何でだ?


・・・何かがおかしい、どこかネジが外れているみたいだ。


・・・あれ?何で?何で感じたんだっけ?


おかしい、絶対におかしい・・・


何だこの違和感は?なぜ俺は。



俺は・・・






あいつに恐怖してるんだ?





ーー


ー  ー



ーやっと気づいたー



ーこの時を待っていましたー



何だ?誰だ!


ー貴方は私を忘れてしまったの?ー


知らない、君を知らない。


ー悲しいわ、泣いてしまうかもー



心の奥で何かが湧き上がる力を感じた。


誰かの優しそうな笑顔、それを俺は知っているはずだった。


でも思い出せない、きっと大切でとても大事な事だったのに。


忘れている、俺は何か重大なことを忘れている。















ー貴方は自分に封印をかけたー


ー自分のスキルで自らのスキルに鍵をかけたー


ーもう解ける時間じゃ無いかしら?ー



時間?封印?・・・何だろう俺はその言葉を知っている。


朧げながら、記憶のピースが集まっていく。


それは氷が解けるように、まさに封印が解かれるように。



ーあともう一歩、思い出して、貴方は私に言ったー



ー君は女神なのか?・・・とー





あぁ・・・思い出してきた。


俺は自分自身にスキルを封印したんだった。


最初に魔王と戦って無様に負けて、死の狭間で君に出会った。


その姿があまりにも神々しくて、超絶で完璧で。


神様なんじゃないかと思ったんだ。


思い出したよ。




超絶で完璧で神に感謝しても良いくらい可愛いから、そんな姿に俺は一目惚れしたんだ。



何で忘れてたんだろう、こんなに大事なことをなぜ忘れたんだろう。



ねぇ、全部思い出したよ。















花音ちゃん。




ーふふ、やっと思い出したのねー


「思い出したよ、俺は一回奴に負けたんだ」


ーそう、だからもう一度巡っているー


ー時の旅をー


「負けた時、君と約束したのを覚えているよ」


ーええ、約束したわー


「俺が勝ったら結婚してくれるんだろ?」


ーええ!そんな約束して無いです!ー


「ははは、恥ずかしがっている君も素敵だ」


ーからかわないで下さい!ー


「からかってなんかいないさ、新たに約束してほしい」


ーそれは約束を守ってからです!ー


「そうか、それなら俺は頑張れる気がするよ」


ー本当に頑張って下さいね?ー


「約束だからな、俺は花音ちゃんとの約束は絶対に守る!」


ーでは見届けていますよ、私との約束ー


「あぁ見といてくれ特等席でな!」



女神との約束が提示されました。


《魔王を倒す》


これが約束の達成条件です。




次に佐藤次元の時間制限が終了しました。







封印が解かれます。



貴方は次元の壁を超えました。



ようこそ、そしておめでとう。



貴方は再び能力が解放されました。





獲得:「次元魔法」



貴方は1次元の住人となりました。


以下の能力が使えます。



1次元


瞬間移動




「全て思い出した、おい犬!さっさと行くぞ!」


「うえぇ!いきなりどうしたんですか?兄貴どこに行くんです?」


「どこに行くって?決まってんだろ!」





ー魔王を倒しに行くのさー



 



能力紹介


 名称:佐藤 次元(さとうじげん)

 種族:人間

 称号:壁を超えたもの、神の恩寵を受けしもの

    諦めの悪い漢

スキル:次元魔法(1次元)

 能力:瞬間移動

毎日8時と20時更新していきます。

ではまた明日。

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