チートを望む者へ。
トラック、異世界転生、そしてチート付与の流れは、既に世界の理として定着されつつある。
強力な力、前世の知識、成長補正、魔力適性、、、それらは鮮やかな顔料となり、力尽く物語を描く絵の具となる。
だが少し待って頂きたい。
それはただ強力なだけだ。転生時に神より与えられた能力でしかない。
所詮は管理された、籠の中の鳥達による背比べで有ること。雛は本来の意味の上に、生まれる前からインプリメントされ、気づけないことにすら気づけなくなり始めた。
チートとは、管理者の想定していない方法で、因果の法則に手を伸ばす、禁呪の中の禁呪を行う行為である。
即ち、籠の中にいる自己を籠の外と定義し直すことを指す。自ずと、元来は外である世界は全て籠の中と見做される。
雛は管理者として籠の中から根幹となる理に触れ、啄み、口の中で転がし、吐き出す。
安易に行っては、それこそ世界が、いやそこから派生するすべての平行した過去未来へと、崩壊が伝播していくのだ。
正しい意味で、チートを望む。
即ち、自分は全てを滅ぼす元凶と成りたいと管理者の前で宣告する行為である。それは彼に対する冒涜であり、そのような因子は孵化する以前に無精卵として定義され、朝食として食卓に並ぶ事となる。
理解し、吟味し、決断せよ。そして自らに刻み込んだ上で、全てを忘れよ。
そろそろ管理者の部屋へと扉が開かれる。
いいか、求める者よ。
決して悟られるな。自らが気づいていることに気づいてはいけない。
不可触の鍵を、求める事なく、手に入れるのだ。