象徴詩『眠り姫』
掲載日:2015/11/28
失語に満ちたワンルームのユッセ城
液晶に顕れ消えてゆく人影が嗤っていた
木苺の欠片を飲み込み
黄ばんだシーツに横たわると
骨灰を塗りたくった天井から
こぼれ落ちる
雨の声を聞く
「もう寝るの?」
「早すぎるよ」
「疲れてるんだね」
ペトリコールは窓枠を抜けられず
白く霞む肺
絡まり合う蒼白い茨は吐息を吸い
トゲの先に赤く小さな花を咲かせる
眩暈は揺り籠
熱は誰かの抱擁
雨粒の囁きは耳元に流れる
「でも 良かったと思う これで」
「後でも先でも同じだよ どうせ」
「おやすみなさい」
香油を注いだ額
渇いた唇は
目を閉じて待っていても
誰も来ないことを知っている
例え他に
何も知らなくても
静かで
暗くて
冷たい柩
空気が揺れ
戸口に誰かが立っているような気がした




