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第10111話 世界の守護者イミテーション

カタッカタッカタッカタッ

 真っ暗の中で、次第に足音が近づいてきているのが聞こえる。

「壊されちまったな……」

 と、ラウンドの声。

「頑張って守っていたのに……」

 と、ランスの声。

「もう、やり直せないんだぜ」

 と、ブライトの声。

「あなたを天才だと思ってました」

 と、レアンの声。

「でも、あなたは裏切った……」

 と、ファングの声。

「俺たちの努力を全て不意にした」

 と、バレットの声。

「あなたが望んだ日々を全て壊して」

 と、レフシィの声。

「俺たちの望みを全て壊して」

 と、バルドスの声。

「もう、一緒になれないんだよ」

 と、クリスの声。

「もう、一緒に暮らせないんだよ」

 と、カレンの声。

「君が何もかも壊してしまったから」

 と、ブリッツの声。

「あなたを笑顔にしたかったのに……」

 と、シミターの声。

「お前は全てを無駄にした」

 と、ウォーデンの声。

 空間が再び白くなる。

 俺の周りにラウンドたちがいた。

 ラウンドたちの姿をした別の存在がいた。

 奴らこそが、この空間を守護していた者達“イミテーション”。

 俺の記憶から作られたラウンドたちの偽物。

「よくも俺を騙してくれたな? イミテーション共……」

 俺は目の前に来たラウンドの姿をしたイミテーションを睨んだ。

「騙すも何もこれが俺たちの使命だからな」

「特にお前を騙したからと言って罪悪感は湧かないな」

「それに、君はよく言うだろう? 騙された方が悪いってね」

 イミテーションたちは口々に喋り出す。

 勝手なことを言ってくれるな……

「君がループに気付いたことが分かった時はヒヤッとさせられたよ」

「戸惑っているフリをしなくちゃならなかったしね」

「おかげで私たちは、本来喋らないはずの台詞も考えなきゃならなかったよ」

「これでも君に尽くすために頑張ったんだよ?」

 尽くすね……

 ならば、俺の意志も少しは呑んでほしかったな。

「私たちは特に大変だったね」

「死ぬタイミングを考えないと、君にこの空間を破壊されてしまうからね」

 シミターとブリッツの姿をしたイミテーションは、お互いを見てニヤついている。

「多少無理をして破壊されるまでの時間を稼いでいたけど……」

「ギサルムは私たちが助けてほしいなんて思っていると勘違いして……」

「本当は助けてほしくなんかちっともなかったもんねー」

「むしろ、迷惑だったな……」

 この空間の中での俺の行動を罵倒されている。

 考えていたことも筒抜けか……

「お前を引き留めようとしたのに、お前がまさか励まされていると感じるとは思わなかった」

 ウォーデンの姿をしたイミテーションが頭に手を当てて言った。

「まあ、あれは滑稽で」

「面白くて」

「楽しかったから、まあいいか」

「ハハハハハハハハハハハハ!!」

「プッククククク!!」

 まさか、ラウンドたちの姿をした奴らに俺がここまで罵倒されるとは思わなかった。

 やはり、こいつらは偽物だ……。

 こいつらが、人の皮を被った全く別の存在だと実感した。

 結局、誰も俺の味方じゃなかったと感じる。

 流石は俺を閉じ込めるための空間だ。

 俺が考える以上の拷問を仕掛けてくる……

「だいぶお前らには馬鹿にされているみたいだな?」

 試しに質問を飛ばしてみる。

「そんなことはないよ。僕たちは君に最高の人生を送ってほしいだけだ」

「殺戮者に堕ちない最高の人生をな!」

 人の最高を勝手に決められている。

 ラウンドたちの姿をしている分、俺の怒りの溜まりは早くなる。

「言い訳はしなくていい。何しろ『創造主』の意志だからな」

「『創造主』の意志は他の何物よりも優先される」

 くっ……

 それを言われると、何も言い返せない……

「ギサルム。今からでも遅くはない。俺たちに任せてはくれないか?」

「お前が壊した空間をやり直すことはできないが、新しく作ることならできる」

「さあ、私たちに身を委ねて!」

「さあ!」

 イミテーションたちが俺に手を差し伸べる。

 もしも、俺の精神がボロボロで、殺戮者になりそうもない男だったならば、その手を掴んでいただろう。

 だが……

「ふっ」

 俺は差し伸べられた手を全て叩く。

 イミテーションたちは、この行動が予測できなかったようで、驚いた顔をしている。

「作られた世界で他人に身を委ねるだと? 笑わせるな! 自分の最高の人生は自分で作る! 例えそれがどんな結末を迎えようとな!!」

「それじゃあ、お前は永遠に平穏な日常を送れないぞ!」

「別に俺は平穏な日常は望んじゃいない。ましてや、他人が操作する平穏は求めていない! 全ては自分が決める!!」

 残念ながら、何かに従ったりするのは好きじゃない。

「でも……」

「ほう。まだやり合うのか? 俺はさっき他人の言葉には応じないと言ったはずだが?」

 先程の台詞を具体的にする。

「くっ……」

 イミテーションたちが歯を噛みしめて残念がる。

 どうやら、効いたみたいだ。

「ギサルム」

「ギサルム……」

「ギサルム!」

「ギサルム」

「ギサルム……」

「ギサルム」

「ギサルム……」

「ギサルム!」

「ギサルム……」

「ギサルム……」

「ギサルム」

「……ギサルム」

「ギサルム」

 イミテーションたちが俺の名前を連呼した。

「どうした? 偽物が俺に勝てるわけがないということが分かったか?」

 挑発してみる。

 だが、イミテーションたちは無反応だ。

 その代わり、イミテーションたちは口々に呟く。

「ない」

「ない……」

「ない!」

「ない」

「ない……」

「ない」

「ない……」

「ない!」

「ない……」

「ない……」

「ない」

「ない……」

「ない」

 何を言っているんだ?

 イミテーションたちは表情を無くし、こちらに向かってくる。

「まずい!!」

 空間一帯にアシッグの声が響く。

 瞬間、俺の周囲に隔壁ができ、俺とイミテーションとを分けた。

「どうした?」

「奴らが暴走を始めた……」

「お前が何とかできないのか?」

「僕が何もしなければ何とかなったんだけど……」

 何もしなければ何とかなった?

「何をしたんだ?」

「僕は君に平穏な日常を送ってほしかった。できる限り違和感のないように……」

「まさか……」

「だから、イミテーションに生命を与えた。自由な行動ができるようにね」

「あいつらだけループ中でも違う行動がとれたのはそういうことか……」

 生命を与える……

 即ち、明確な意志を持たせる。

「まあいい。俺の記憶から作られたならば、俺に還元すればいい」

 俺はアシッグに言い放つ。

「何をするつもり?」

「どうせ、この空間には俺とお前とイミテーションしかいないんだろ?」

「そうだよ」

「ならば、俺が全力で奴らを『殺す』」

 アシッグが少しの間、沈黙する。

「分かったよ。バトルフィールドを用意するからしばらく待っててね」

 良い返事が戻ってきた。

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