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第10000話 楽しさの裏にあったもの

「すげえな。お前ら!」

 ラウンドが騒いでいる。

 この日常か……

 一番、壊すのが辛いな……

「何で、そんな点数取れんだ?」

 ラウンドが小テスト用紙を見比べながら言った。

 やったことがあるから……と言おうとしたが、やめておいた。

「ラウンドは、頭悪いから……」

 ブリッツがきつい一言を呟いた。

 シミターもニヤニヤしている。

「お前らぁぁぁ」

 ラウンドが泣きそうになっている。

 ラウンドの点数を見てみると、案の定0点だ。

「まあ、ラウンドは考えるより動くことの方が得意だからな」

 バレットがやってきた。

「おお!! バレットぉぉぉぉ!!」

「うおおお!?」

 ラウンドがバレットに抱き着いていった。

 バレットは華麗に避けている。

「お前は、そんなに点数良くないよな? 良くないよな?」

 正気を失ったラウンドはバレットのテストを見た。

 ブリッツもシミターもついでに見た。

 俺は見たことがあるため、見なかった。

 バレットのテストを見たラウンドは、

「この裏切り者ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 と言って、バレットに襲い掛かった。

「落ち着け! 落ち着け!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 ラウンドの攻撃と、バレットの回避の応酬が始まった。

 俺たち3人はそれをケラケラ笑った。

 こういうのは、いくら繰り返されても面白い。

 が、最初に感じた時よりはそれほどでもない。

スッ……

 不意に嫌な気配を感じる。

 球体関節人形が近づいてきていた。

「待て、止まれ」

 いつの間にか、バレットはラウンドの頭を掴み抑えていた。

 そして、鋭い眼光で球体関節人形を睨んだ。

――チッ

 球体関節人形は軽い舌打ちの様な音を出して、そのまま去っていった。

 それが俺にはたまらなく面白かった。

 前に経験したことであろうともだ。

「クククククククククク……」

 笑いを抑えようとしても、零れてしまい変な笑い方になってしまった。

「ギサルム、どうしたの?」

 シミターがそれに気づいて訊いてきた。

「いや、何でも……クククク……」

 止めようとしたものの、そのまま笑ってしまう。

「変なの」

 シミターは、そう言って去ってしまった。

 ああ。

 そろそろか……


パッ!!

 場面転換。

 だいぶ慣れてしまったが、自分の日常がこれほどまでに煩雑な物だったかと思うと、嫌になる。

キーンコーンカーンコーン……

「さて、帰るか」

「うん……」

 俺とブリッツはリュックサックを背負った。

「待ってよ、2人とも」

 シミターも急いでリュックサックに荷物を詰めて、俺たちについてきた。

「ラウンドとバレットは?」

 ブリッツが俺に訊いてきた。

 ああ……

「いないな。まあ、昇降口でランスたちが待っているだろうから、行くぞ」

「そうだね」

 俺たちは教室を出た。

 その直後、やはりあの光景が目に入ってきた。

 ラウンドとバレット、それからバルドスが、球体関節人形たちと喋っていた。

 何を話しているのかは分からないが、バレットは真剣な目で、ラウンドとバルドスは笑いながら喋っているようだ。

「ねえ……何で、ラウンドたちはあいつらと?」

「大方、クラス行事か何かの打ち合わせとかじゃないか?」

 後少しで学校行事があることを2人に伝えた。

 もっとも、その学校行事など永遠に来ないのだろうが……

「そう……なのかな?」

 シミターが不安そうな顔をしている。

「ひょっとして……私たちを虐めることを……話して」

「それはない」

 俺はシミターの発言を遮った。

「ラウンドたちは、俺たちが昔から虐められているにも関わらず接してくれているんだ。それは有り得ない」

「でも……ラウンドとバルドスは笑っているよ」

 今度はブリッツが発言した。

「それは、楽しい話をしているからだろ」

「僕たちのことを笑っているんじゃなくて?」

 シミターは黙ってしまったが、ブリッツは引かない。

「被害妄想だ。あいつらは友達だ。安心しろ」

「できないよ。だって、怖い……」

「い……くっ!!」

 一瞬、いつも通りの台詞を言いかけたが、これでは今まで通りだ。

 ここを壊さなくては……

 もっと2人の不安を取り除く行動を取らなくては……

「ちょっと、訊いてくる」

 俺は、今までとは違いラウンドとバレット、バルドスのいるところに向かった。

「3人とも、何の話をしているんだ?」

 3人に質問した。

「ギサルムか。これから行われる学校行事についてだ」

「俺たちが実行委員任されちゃってな」

 バレットとバルドスが答えてくれた。

 やはりな……

 これで、ブリッツとシミターを安心させられる。

――こいつらはどういう神経をしているんだ?

――こいつらは何で“化け物”と喋れるんだ?

――俺たちの方がラウンドたちと仲良いのに……!!

 だが、去ろうとしたところで球体関節人形たちの陰口が聞こえた。

――ラウンドたちは俺たちの仲間なんだよ。“化け物”はさっさと消えろ。

 確かにラウンドとバレット、バルドスは俺たちに関して何も言ってなかった。

 だが、球体関節人形共はその3人と話すことに優越感を覚えていた。

 俺たちから見えるところで喋っていたのはわざとかもしれない。

 俺、ブリッツ、シミターに見せびらかせて、俺たちを悲しませようとしたのかもしれない。

 予想しか生まれないが、ここまで疑念が羅列されれば、やむを得ない。

バコッッ!!!!

「なっ!?」

 バルドスが驚いている。

 無理もない。

 俺が突然、球体関節人形に向かってストレートパンチを放ったのだから……

 勢いよく吹っ飛び、球体関節人形はバラバラになる。

 そして、残りの球体関節人形も破壊する。

 球体関節人形は、本来このままラウンドたちと喋っていたのだろう。

 声が聞こえてくるが、この状況でそれはただの雑音にしかならない。

「ギサルム……。何でこんなことを……」

 ラウンドが訊いてきた。

 そうか、こいつらにはさっきの陰口が聞こえてなかったのか……

「知らないんだったら、それでいい。じゃあな」

 おそらく、3人はキョトンとしているだろうが、陰口を教えても信じないだろう。

 俺はその場を後にし、昇降口に向かった。


「あ、ギサルムさん!」

 昇降口に行くとレアンがいた。

「どうした?」

「それが、ファングが物を無くして……」

 レアンの他に、ブライト、ファング、カレンがいた。

 ああ、そうか。

 いつもと違ってこの日常はこういうのがあったな。

「ランス、レフシィ、クリスは?」

「先に帰ってもらいました」

「そうか。で、何処で無くしたのか心当たりはあるか?」

 レアンは首を横に振った。

「今から見つけるの厳しくないか。もう、夕方……」

 言いかけたところで、ファングを見ると今にも泣きだしそうだった。

「無くしたものって何なんだ?」

「ウォーデンさんがファングにあげたお守り……」

 ああ、やっぱり。

「俺たち、一生懸命探したけど、見つからなかった! ギサルム先輩、探してくれ!」

「ギサルムさん……」

 ブライトがいつも通り胸を張って言っている。

 カレンはおどおどしている。

「分かった。探すから落ち着け」

 途端にファングの顔がパァッと明るくなった。

「見つかるかは知らんけどな」

 そして、再び泣き出しそうになった。

「ファング!? ギサルムさん、からかわないでください!」

 レアンが慌てて叫んだ。

「でも、何処で落としたのかの目星をつけないと、時間的に厳しいぞ」

「それが、全く分からないんです。少なくとも授業中はずっとありましたし」

「ん? 無くしたのはついさっきってことか?」

「はい。ファングが突然慌てて探し出したのにブライト兄さんが気付いて……」

 一応、辻褄合わせに質問をする。

「そのお守りって何色だったっけ?」

「確か、黒……」

 カレンが答えてくれた。

「ファング。リュックを貸してくれ」

 ファングはキョトンとした顔をした。

 構わず俺はファングのリュックサックを漁る。

 リュックサックを漁っていると……

 黒いお守りが出てきた。

「わぁぁぁぁぁ」

 小学生たちの歓声が上がった。

「すげええよ、ギサルム先輩!!」

「まさか、リュックサックの陰にあったとは……」

「すごーい……」

 答えは単純、リュックサックの陰に隠れて見えなかった。

 ファングは、お守りを見て目を輝かせている。

「さて、やることも済んだし帰るか」

 俺は帰路に着こうとした。

「あれ? そういえば、ブリッツさんとシミターさんは?」

 カレンが訊いてきた。

「あ……」

 いけね……

 置いてきてしまった……

「すまん、一旦戻るわ」

 俺はブリッツとシミターが元いた場所に向かった。

 ブリッツとシミターはそのまま待っていた。

 ラウンドとバレット、バルドスも一緒だ……

 全員が心配そうな顔をしていた。

 俺が歩みを進めようとすると、壁が溶けていった。

 白い閃光が辺りを包み込んで、俺は気絶した。

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