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第1110話 崩壊への引鉄は無情にも引かれる

「お、今日はちゃんと来たな!」

 ラウンドが俺の方を見ながら大声で言った。

 今日はこの日常か……。

 ならば、壊すべくは……

「まあな。そう何回も遅刻してたまるか」

 辻褄合わせの返答を返す。

「ずる休みはよくしてたけどな」

 バルドスがからかってきた。

「しかたないだろ……。家庭科で持っていく物分からなかったんだから……」

「やーい、ずる休み~」

「何をー」

 バルドスが煽ってきたので、俺はそれに乗ったフリをした。

「やめんか!」

 バレットが俺とバルドスの間に入ってきた。

「何だよ。冗談だって」

「お前らだと何が起きるか分からないからな」

 バルドスは笑っているが、バレットは真剣だ。

「ギサルム、大丈夫か?」

 深刻な顔をして、バレットが近づいてきた。

 俺は頷いて、肯定の意を示した。

「兄さん、かっこいいー」

 レフシィがバレットを褒めている。

「ん……うーむ、照れるなぁ~」

 ちなみにバレットは兄馬鹿である。

「ギサルム、おはよう……」

「おはよう、ギサルム」

 ブリッツとシミターも来た。

「ラウンド。お前の弟たちはどうした?」

「あれ?」

 レアンが走ってきた。

「やあ、レアン」

「あ、ギサルムさん、おはようございます。あの、ちょっと手伝ってくれませんか?」

「何を?」

「えーとですね。ランス兄さんが女子から告白されて、それを見たブライト兄さんは暴れだそうとするし、ファングは世界の終わりだとうわ言のように繰り返しているのを、僕とクリスさんとカレンさんで解決しようとしたのですけれど、無理でした……ので助けて下さい」

「何だと……ランスが告白された……だと?」

 ラウンドが物凄い形相でこちらに向かってきた。

「ムッコロす」

ヒュッ、ドーーーーーーーーーン!

 人間とは思えないスピードで、レアンが来た方向に向かって行った。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 直後、断末魔が聞こえてきた。

「うおおおおおおおおお!! 兄貴、落ち着け!!」

「兄さん! 落ち着いて!」

 ブライトとファングの絶叫が聞こえてきた。

「ランス、大丈夫なのかな……?」

 ブリッツが俺に訊いてきた。

「大丈夫じゃないだろ……ちょっと行ってみるか」

 もちろん、そこにはランスの無残な姿があった。

「ラウンド落ち着いて!」

「そうだよ! ラウンドが好きな人だって……いるはず……だもん……」

 クリスとカレンは、オロオロしている。

 まあ、いい。

 さっさと放課後になってもらおう……。


パッ!!

 唐突に時間が変わり、場所が移動した。

 前回より鮮明におかしくなっている。

 そもそも俺は、一日を全うしていなかったのか……。

「あれ? 今日はお前たちだけか……」

「うん……。ラウンドたちは用事があるから、帰れないって……」

「今日は、私たちだけで帰ろう?」

 下校時の集合場所にいたのは、ブリッツとシミターだけだった。

「そうだな……」

 俺たちは歩き出した。

「久々だな。お前たちと一緒に帰るのも」

「そうだね……」

「ギサルム。何か面白い話してよ」

「面白い話なぁ……」

 だが、何分か歩いたところでいつも通りの展開を迎えた。

――わぁ、あの2人。ギサルムと一緒に歩いてる……

――何であんなキモい奴と一緒にいられるんだろうね?

 後ろから球体関節人形の集団が近づいてきた。

 さて……始めるか……

「ギサルム……」

「無視しろ。何を言われても知らん顔するんだ」

 ブリッツが不安そうな顔をこちらに向けてきた。

――ねぇねぇ。シミターだけでも助けようよ

――あ、それいいね

ダッダッダッダッダッ!!

 後ろから走り出す音が聴こえた。

 後、もう少し……

グァッス!!!!!

「あっ!?」

 シミターが、いつもこの展開になると発する声を出した。

 だが、それは今までとは意味が違った。

 俺が球体関節人形の頭部にパンチを食らわせたことに対する驚きの声だった。

 球体関節人形はそのまま吹っ飛び、頭部が取れた。

 更に残りの球体関節人形にも攻撃する。

 どうやら脆いようで、俺の貧弱パンチでも簡単に倒せた。

 だが、それでも球体関節人形の身体は日常の行動を繰り返そうとする。

「何するんだだって」

「まじ受けるわ~」

 女子連中を演じている球体関節人形は喋る方向が合っていないにも関わらず、日常を再現しようとする。

「あたしたちは、嫌々あんたらと一緒にいるシミターを離してやったんだよ!」

 頭部だけの球体関節人形は、顔の映った部分を辛うじてこちらに向けて言い放った。

「えっ……えっと……え?」

 ブリッツに目の前の状況がどう映っているのかは分からない。

 ただ、俺が女子を突如として殴り、女子たちが訳の分からないことを言っているという事実は分かっているはずだ。

「あのね……あたしたちとこいつはあんたらより仲がいいの。ね? シミターァ?」

 球体関節人形は、尚も続ける。

「ね? あたしたち仲がいいよね?」

「ブリッツ、シミター、行くぞ?」

「仲がいいでしょう? 私たち?」

「え? でも、この人たち……」

「お前らに危害を加えようとしたから、こうなった。あいつらが可哀そうだとか思うなよ?」

「でも、こんなことしたら、ギサルムが生徒指導喰らっちゃう……」

 ああ、喰らうものなら喰らいたい。

 もう、例え友達がいても、不気味な世界で同じ日常が繰り返されるのはうんざりだ!

「仲いいよね?」

――ちゃんと答えないとどういうことになるか分かっているよね?

 本来ならば、シミターに言っているはずの言葉が聞こえた。

「行くぞ……」

「うん……」

「分かった……」

 こうして、その場から離れることにした。

「えぇ~? よく聞こえないなぁぁ?」

 倒れている球体関節人形が、何か言っている。

「よく言えたね~シミター。さあ、一緒に帰ろう!」

 倒れている球体関節人形は、人間の肩を組むような姿勢を取ったが、倒れたままではただ滑稽な姿をとっているだけだ。

「シミター。気にしなくていいの。あいつら、ただのゴミだから」

 もはや、ただのゴミとなった存在が、俺たちをゴミ扱いしている。

「ハッハッハッハッハッハ!! 新たな日常だ!!」

 何故か自嘲気味に叫ぶ。

 少し無理をしすぎたかな……

 後ろを見ると、ブリッツとシミターが不安そうな目でこちらを見ていた。

「お前ら、安心し……」

 2人を安心させようと言葉を出そうとした時、閃光が2人を飲み込み、次いで俺の視界も飲み込んだ。

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