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第1101話 無味無臭の中で湧いた希望

“1”


 6時30分起床。

 アシッグに電話をしてみたが、反応がない。

 どうやら、作業中のようだ。

 朝飯食べて、学校へ行くか……。

 今日はどんな日常やら……


「すげえな。お前ら!」

 ラウンドが騒いでいる。

 何故かと言うと、前の時間に小テストがあり、そこでブリッツとシミターが高得点を出したからだ。

 ちなみに俺は、もちろん満点だ。

 何せ、一回やっているから……

「何で、そんな点数取れんだ?」

 ラウンドが小テスト用紙を見比べながら言った。

 一回やったことがあるから……と言おうとしたが、やめておいた。

「ラウンドは、頭悪いから……」

 ブリッツがきつい一言を呟いた。

 シミターもニヤニヤしている。

「お前らぁぁぁ」

 ラウンドが泣きそうになっている。

 ラウンドの点数を見てみると、案の定0点だ。

「まあ、ラウンドは考えるより動くことの方が得意だからな」

 バレットがやってきた。

「おお!! バレットぉぉぉぉ!!」

「うおおお!?」

 ラウンドがバレットに抱き着いていった。

 バレットは華麗に避けているが。

「お前は、そんなに点数良くないよな? 良くないよな?」

 正気を失ったラウンドはバレットのテストを見た。

 ブリッツもシミターもついでに見た。

 俺は見たことがあるため、見なかった。

 バレットのテストを見たラウンドは、

「この裏切り者ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 と言って、バレットに襲い掛かった。

「落ち着け! 落ち着け!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 ラウンドの攻撃と、バレットの回避の応酬が始まった。

 俺たち3人はそれをケラケラ笑った。

 こういうのは、いくら繰り返されても面白い。

 が、最初に感じた時よりはそれほどでもない。

スッ……

 不意に嫌な気配を感じる。

 球体関節人形が近づいてきていた。

「待て、止まれ」

 いつの間にか、バレットはラウンドの頭を掴み抑えていた。

 そして、鋭い眼光で球体関節人形を睨んだ。

――チッ

 球体関節人形は軽い舌打ちの様な音を出して、そのまま去っていった。

 それが俺にはたまらなく面白かった。

 前に経験したことであろうともだ。

「クククククククククク……」

 笑いを抑えようとしても、零れてしまい変な笑い方になってしまった。

「ギサルム、どうしたの?」

 シミターがそれに気づいて訊いてきた。

「いや、何でも……クククク……」

 止めようとしたものの、そのまま笑ってしまう。

「変なの」

 シミターは、そう言って去ってしまった。

 やはり、そのままの日常が繰り返されている。

 新たな日常が欲しい……


キーンコーンカーンコーン……

「さて、帰るか」

「うん……」

 俺とブリッツはリュックサックを背負った。

「待ってよ、2人とも」

 シミターも急いでリュックサックに荷物を詰めて、俺たちについてきた。

「ラウンドとバレットは?」

 ブリッツが俺に訊いてきた。

 そういえば、いない。

 ……まあ、何処にいるかは知っているが。

「いないな。まあ、昇降口でランスたちが待っているだろうから、行くぞ」

「そうだね」

 俺たちは教室を出た。

 その直後、やはりあの光景が目に入ってきた。

 ラウンドとバレット、それからバルドスが、球体関節人形たちと喋っていた。

 何を話しているのかは分からないが、バレットは真剣な目で、ラウンドとバルドスは笑いながら喋っているようだ。

「ねえ……何で、ラウンドたちはあいつらと?」

「大方、クラス行事か何かの打ち合わせとかじゃないか?」

 後少しで学校行事があることを思い出し、それを答えた。

「そう……なのかな?」

 シミターが不安そうな顔をしている。

「ひょっとして……私たちを虐めることを……話して」

「それはない」

 俺はシミターの発言を遮った。

「ラウンドたちは、俺たちが昔から虐められているにも関わらず接してくれているんだ。それは有り得ない」

 まるで、台本を読むかのようにスラスラと……

「でも……ラウンドとバルドスは笑っているよ」

 今度はブリッツが発言した。

「それは、楽しい話をしているからだろ」

「僕たちのことを笑っているんじゃなくて?」

 シミターは黙ってしまったが、ブリッツは引かない。

「被害妄想だ。あいつらは友達だ。安心しろ」

「できないよ。だって、怖い……」

「いいか! 妄想だけで話を進めるな! お前たちはそんなに腐ったのか!?」

 俺は我慢できなくなり、声を荒げた。

 どんな状況でも、許されることと許されないことがある。

 幸いラウンドたちの方までは聞こえていないようだった。

 2人とも声を荒げた俺に驚いていた。

「帰るぞ……」

 俺は先に進んだ。

 そのまま進んだ。

 後ろを見れば、2人が「行かないで」と訴えているだろうが、それはしない。

 既に知ってしまっているから……

 だが、もしこの状況を起こせないようにしたら、どうなるのだろうか?

 繰り返される日常を書き換えたら……?


「あ、ギサルムさん!」

 昇降口に行くとレアンがいた。

「どうした?」

「それが、ファングが物を無くして……」

 レアンの他に、ブライト、ファング、カレンがいた。

「ランス、レフシィ、クリスは?」

「先に帰ってもらいました」

「そうか。で、何処で無くしたのか心当たりはあるか?」

 レアンは首を横に振った。

「今から見つけるの厳しくないか。もう、夕方……」

 言いかけたところで、ファングを見ると今にも泣きだしそうだった。

「無くしたものって何なんだ?」

「ウォーデンさんがファングにあげたお守り……」

 ああ、やっぱり。

「俺たち、一生懸命探したけど、見つからなかった! ギサルム先輩、探してくれ!」

「ギサルムさん……」

 ブライトがいつも通り胸を張って言っている。

 カレンはおどおどしている。

「分かった。探すから落ち着け」

 途端にファングの顔がパァッと明るくなった。

「見つかるかは知らんけどな」

 そして、再び泣き出しそうになった。

「ファング!? ギサルムさん、からかわないでください!」

 レアンが慌てて叫んだ。

「でも、何処で落としたのかの目星をつけないと、時間的に厳しいぞ」

「それが、全く分からないんです。少なくとも授業中はずっとありましたし」

「ん? 無くしたのはついさっきってことか?」

「はい。ファングが突然慌てて探し出したのにブライト兄さんが気付いて……」

 一応、辻褄合わせに質問をする。

「そのお守りって何色だったっけ?」

「確か、黒……」

 カレンが答えてくれた。

「ファング。リュックを貸してくれ」

 ファングはキョトンとした顔をした。

 構わず俺はファングのリュックサックを漁る。

 リュックサックを漁っていると……

 黒いお守りが出てきた。

「わぁぁぁぁぁ」

 小学生たちの歓声が上がった。

「すげええよ、ギサルム先輩!!」

「まさか、リュックサックの陰にあったとは……」

「すごーい……」

 答えは単純、リュックサックの陰に隠れて見えなかった。

 ファングは、お守りを見て目を輝かせている。

「さて、やることも済んだし帰るか」

 俺は帰路に着こうとした。

「あれ? そういえば、ブリッツさんとシミターさんは?」

 カレンが訊いてきた。

「用事があるから、先に帰ってて欲しいということだ」

 そのまま、俺は、小学生たちと帰った。


“1”


 午後の6時30分。

 アシッグから電話があった。

「やっぱり、何も起こってないよ」

 報告はある意味、予想できた内容だった。

「あまりいいたくはないけど、君がおかしくなったとしか……」

 やはり、そうなるのか……

「そうか。済まなかったアシッグ」

 そう言って、俺は電話を切った。

 アシッグに頼れない以上、もはや自分で行動するしかない。

 今日一日悩んで、あることを思いついた。

 この日常は、俺の行動の多少の差異はあれ、同じ出来事を繰り返している。

 人形たちは同じ行動しかできず、友達は俺が干渉しない限り言動を変えることはない。

 ならば、自分で新たな日常を作り出せばいいのではないだろうか。

 明日もまた同じ日常が繰り返されるのだろう。

 人形たちに囲まれ、友達といつ終わるとも知れない永遠の日常に囚われたままなのだろう。

 だが、その日常を強引に捻じ曲げ、メチャクチャに壊せば、新たな日常を作り出すことができるかもしれない。

 明日からだ。

 明日から、俺は新たな日常を手に入れるために、日常を破壊する!!

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